好きって何?
「好きって何?何が好きなワケ?」
「え!? … や、だから … えっと、何 って、急に言われても
「はい、時間切れ~♪」
「… !!」
冷酷に宣言された女子高生は其の場に茫然と固まった。
男はさっさと踵を返して歩き去って行く。
影から見守っていた友人達が飛び出して来て 「だから言ったのに」と言う慰めの言葉から始まり 射馬爽をなじる言葉で失恋を発散させてやろうとしていた。
何時もの事だ。
「いやー、見事な冷血っぷりで」
爽の横に並んだ友人が茶化して来る。
「何で?理由聞いただけだし」
「だろうな」
小学生からの古い付き合いでもある友人には、其の突っ慳貪な言葉の中に在る爽の心が分かっていた。
顔が良いと性格は悪い を体現しているが、幼少時からそう言う風に仕向けられたのだ。其れでも 果敢に向かって来る女子が後を絶たないのには驚かされる。
まあ、当たるも八卦当たらぬも八卦かも知れないが。
「俺、今日バイトだから
歩き去ろうとして足を止めた。自分で無下にしておきながら傷ついている そんな厄介な友人を置いて行かないのも親友の努めだ。
「つか寄ってく?」
友人が珍しく奢ると言うのでガッツリ食べてしまった。
公園のベンチまで到達すると、体を投げ出す。流石に三人前の肉はキツい。
ごろりと転がって仰向けになり 夜空を見上げた。青白い満月が 爽を見返す。
月はあんなに綺麗なのに 自分の心は ―
「あの、すみません」
直ぐ近くから聞こえて来た声は 紛れもなく「自分」に向けられていた。
「え
上半身を起こすと ベンチの前に一人の少年が立っている。
黒髪に黒目がちの大きな眸、ほっそりと華奢で 肌は月の光程も白い。
「… 何?」
不機嫌に応じたのは 少年の笑みが眩しくて居心地が悪くなった所為だ。
爽の素っ気ない返事に少年はますます笑みを耀かせた。
「はい!あの、貴方にお聞きしたい事がありまして」
「急に?」
不意に現われて、唐突に質問があると言う。
「そうなんです」
まるで他人事だ。
「… 良いけど。何?」
純心そうな顔立ちに絆されて、何となく了承してしまった。中学生位だろうか ―
「好きって何ですか?」