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ラッキーナンバー

≪≦1aecd13c9221f60c2782a3c339912634.png|C≧≫


(イラスト作成*ChatGPT)


   3 5 9 11  … 


流石に上段のロッカーは人気がある。空きは残り少ない。


   えーっと、今日のラッキナンバーは確か


スマホで見た星座占いの内容を思い浮かべながら ロッカーに差し込まれた鍵の数字と睨み合う。


   13 … あった!


「痛!」


「あ、わりぃ」

と言いつつも 悪びれた様子はない。

「眼鏡クン、元気?」

地味眼鏡の早藤月彦さとうつきひこを小馬鹿にして、バスケ部仲間と盛り上がるのが此の男の日課だ。

長身で引き締まった体に、威風堂々とした面構え 宮原怜勇みやはられおと「自分」はサバンナの肉食獣と草食獣と言った趣き。

別に僻む気もないが 何故、何時も直ぐ隣のロッカーを使うのだ。

教室の後に在るロッカーは鍵付で、生徒が私物を持ち込まない様 毎回違う場所 ― 空いている場所を使うのだが 此の時間なら、空きはまだ幾らもある。

唯でさえデカい図体が邪魔だと言うのに 登校時間まで合わさって、毎朝嫌がらせの鞄をぶつけられては敵わない。


「おはっス~!ヒコ」

クラスの男勝りな女子、戸川結とがわゆいが元気よく声を掛けて来た。

「やめろ、其の呼び方」

「え~、月彦とか呼びにくいじゃん」

「姓で呼べば良いだろ」

「ヤーダね~」

古風な名前を恥ずかしく思っている事を知っていて、結は態と下の名前で呼ぶ。

「…」

異様に膨らんだ手提げ鞄をロッカーに押し込んだ結は、不意に其の姿勢で止まった。

「何?どうかした?」

「良いよね~。ヒコは」

「何が?」

「毎朝スキンシップはかっちゃってさ~」

「… 眼鏡でもかければ?」

二つの意味で必要だろう。陰気な眼鏡キャラを弄るのが好きな級友の悪行を、はっきりと見て貰いたいものだ。

「アホ。そう言う事じゃないでしょーが」

卑屈になっている結に、月彦の皮肉は通じない。

既に宮原怜勇と其の級友の周りは、派手やかな別世界になっている。取り巻きの女子連中は、一切の侵入を許さない鉄壁の防御を築いていた。

結は羨望と嘲りの入り交じった溜息を吐いて、切り揃えられた前髪を吹き上げた。




其の日は 朝からの炎天下で、体力を余分に消耗し 軟弱な肉体が時間に追い付かなかった。予鈴と共に息を切らして滑り込み、汗だくのロッカー攻防戦もなく平和裏に終わったが ロッカーの空きは下段のみで、選択の余地もないと言う敗北感を味わわさせられた。



午後の体育の授業を終え、しゃがみ込んで下段のロッカーに体操服を詰める。

   下の奥って見えにくいんだよな

「痛!」

「悪い」

と思っている顔ではない、明らかに。唯

   ええ?何で?

何故 此の巨人、宮原怜勇が下段のロッカーなど使うのだ。其れも直ぐ隣の ―

「あー?!おい、怜勇!何、人のロッカー勝手に開けてんだよ!!

「俺が先に使ってたんだぞ」

「鍵かけてねーじゃん」

「いやいや、意味分かんねー。つか 出すな!」

宮原怜勇はロッカーの中身を放り出し、自分の荷物とすげ替えるのに勤しんでいる。


「だって此処、俺のラッキーナンバーだから」


   え


向けられた笑みを理解するまで時間を要し 「自分」がナンバーを気にしている事を馬鹿にされたのか ― そうじゃないなら 何なんだ




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