血の繋がり
「ねぇカイ兄、僕たちってさ、親は違うけど家族かな?」
エリオの問いに、カイは少しだけ眉を上げた。
「家族って、別に血が繋がってる必要ないだろ。」
エリオの不安げな表情が少し明るくなったのは、その場の全員が分かった。
「そういえば今日、無血教の信者達が集会を開いててさ、やたらお互いを『同志』とか『家族』とか強調してるのが聞こえて寒かったな。」
空気を読めないロウが半笑いで報告してきた。
得体の知れない集団に結び付けられた事に、カイは少し苛立ちを感じた。ただ、広げたい会話でもないので、ロウの発言は無視することにした。
カイは静かに立ち上がり、火のそばに一歩近づいた。
油がはじけ、ランプの火が一瞬だけ揺れる。
「死なねぇために、一緒に必死で生きてんだ。それは家族だって俺は思ってるよ。」
その背中を、ゼニスが見つめていた。
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この国で血液型を持たぬ者は、血を持たぬ者と呼ばれ、ただの影に過ぎない存在として扱われる。
けれどこの部屋では、誰一人として影ではなかった。
ここにいたのは、選ばれなかった子どもたちの、小さな火。
夜を灯す、ささやかな命。
しかし世界の不条理は、その小さな火が燃え続ける事を許してはくれなかった。