Episode19x:紫少女、危機一髪
「大原雅史」が帰国して翌月に起きた舞踊会(樋串武学園事件)を終結して20日、帰宅部の集合住宅「杏璃」の号室に「バサカ」はいなかった。この前の事件が終わった時には既に、ということは「杏璃」たちが体育館内で眠っている間ということになる。部屋で荒らされた形跡はあり、「バサカ」直筆の置き手紙を見る限り、「探さないでください。」...たったこれだけで、彼の身に何かが起きたに違いない。ただならぬ事情ができたようだ。「杏璃」は「バサカ」の追跡を検討するも、昨月のこともあり、そんな余力が残ってないので断念。不本意だが「清子」に頭下げてまでお願いした結果、「アレグロ雪郎」絡みを理由に承諾してくれたようだ。
10月20日(水)21時 E.G.本部 会議室
「アレグロ雪郎」の祖父「エネルジコ」は今後のスケジュールのために、E.G.所属者を召集した。円卓会議にE.G.メンツが揃っていて、「エネルジコ」や「アレグロ雪郎」、そして部下2人こと「ハルミ」や「ミュゼット」のほか、情報部の長官「エルエー」、情報部員「ラファエル」、超官「エドガー」、「レオン・バイパー/Leon Viper」、「クリス・トゥルーズデール/Chris Truesdale」が参加するそうだ。9人着席したところで会議を開始する。
「(エネルジコ:)こうして集まってもらったのは他でもない。現状はわかっているだろう。悪行を繰り返しているのは奴だけではない。奴に狂わされた者がいるということであろう。」
「(エルエー:)狂わされた者といえば、バサカです。その証拠に、奴の悪行を探れば探るほど自分の運命を狂わせるものであるといわれています。」
「(エネルジコ:)...では雪郎。早急に身近の人員を集めて、バサカを追跡せよ。よいな。」
「(アレグロ雪郎:)あっ、はい、祖父!直ちに!!」
「(エネルジコ:)次いでに、私の孫娘にも連絡をとれ。半年間、何の沙汰もなく音信不通なのだが。」
「(エルエー:)あなたの孫娘への連絡は全てこの私を通してください。いかなる場合もです。」
彼の発言に一同は疑いを抱く。「エルエー」は...。
「(エルエー:)あ......。もちろん。これは安全のためです。」
「(アレグロ雪郎:)...なにか隠してないか?愛美の居どころはあんたなら知っているんだろ?」
「(エルエー:)ちょっと雪郎。何を言ってるんですか。愛美なら私が責任をもって保護していますよ。」
「(アレグロ雪郎:)...ならいいが。それにしても、妙に引っ掛かるな。取り調べをすると言えど、バサカを緊急逮捕して連行するようなマネはしないだろうが。もしかしたら、俺たちの中に諜報員がいるとしたら...。」
「(エルエー:)知らん!!それから愛美のことはすべて私を通すようにお願いしますね。絶対事項です!!」
「(エネルジコ:)すまなかったなエルエー。もう少しで君を疑うところだった。揉め事で信頼を失うわけにはいかないからな。」
「(エルエー:)は、はあ......。」
会議が終わり、メンツは解散。「アレグロ雪郎」とその部下2人は日本支部に戻り、「エネルジコ」はFBIの仕事に戻った。「エルエー」は引き続き、「アレグロ雪郎」のサポートを担い、持ち場に戻った「アレグロ雪郎」は、「エルエー」に対する不信感を抱くようになるのであった。
「(ラファエル:)超官、エルエーをどう思う?」
「(エドガー:)どう思うも何も、彼が潜入諜報員であるという噂が絶えないほどです。コンブリオさんの友人が行方不明になっていますし、彼の動向を注視しておきましょう。」
「(ラファエル:)あ、ああ。そうだな。今回の会議で堂々とミュゼットの顔が見れてホッとしたのに対して、コンブリオの友、ジローラモは今どこで何をしているのか...。」
その時、「レベッカ」と「アレグロ雪郎」はガジュのいる場所へ向かった。他のメンバーはこの場で待機するのだが、「雅史」の携帯電話(P-01A/グロファイトブラック)に「清子」のメールが届いており、内容は「ミンナニハナイショでお願いしますわ。」とのことで密かに抜け出すのであるが。
「(マイケル:)どこ行くのかい?」
「(雅史:)あ、うん。ちょっとね。外せない用事ができたんで。」
「(マイケル:)僕でよければ、同行しようか?保護者同伴のつもりでね。」
「(雅史:)おじさんと一緒なら心強いよ。一緒にいこうよ。」
「(ロバート:)君たち、どこ行くのかね?」
「(マイケル:)ただの用事さ。」
「雅史」と「マイケル」はこの場所を抜け出し、「清子」の元へと向かった。
「(清子:)ごきげんよう雅史さん。それに...あの時のオトナさん。」
「(雅史:)8月下旬以来だね、清子。それで用件は何かな?」
「(清子:)雅史さんにお願いがありまして、泥棒児童を確保してほしいですわ。杏璃さんからの要請でして。」
「(雅史:)杏璃...。彼女の願いとあれば、引き受けようかな。」
「(清子:)雅史さんならやってくれると思いましたわ。早速ですが、まずは雪郎先生を追跡してみましょう。」
「(雅史:)合点。」
2人は「清子」の言う通りに行動を始める。行き先は「アレグロ雪郎」が向かって行く「木枯らし荘」、どうやら同じ目的のようである。
「(清子:)さて、わたくしらは木の陰に隠れましょうかね。」
「(雅史:)うん。...それにしても、この荘初めて見るね。」
「雅史」にとって初めて目にする「木枯らし荘」は、翌年のテレビでお目にかかることになる。1時間後、「バサカ」がやってきた。
「(清子:)来ましたわね、泥棒児童。確保して、杏璃さんの元へ届けないとですね。」
「(雅史:)あの人が泥棒児童...ね。何しに来たのだろう...。」
この荘に入り、何しに来たかというと「ガジュ」を探しているとのこと。「清子」は「木枯らし荘」内3人の会話内容を傍聴する。
「(アレグロ雪郎:)あいにくガジュは今、買い物に出掛けている。なかなか帰ってこないと思うぜ。」
返答もせずに出ていこうとする「バサカ」だが、「アレグロ雪郎」と同行していた「レベッカ」に呼び止められる。
「(レベッカ:)待って。エルエーについて知っていることを話してよ。」
それに対して「バサカ」は聞く耳を持たず、返答しない。
「(レベッカ:)あー、話が通じない。どうしよう。」
「(アレグロ雪郎:)狙いはガジュだけだろ?俺が会わせてやるよ。管理人つきだがな。」
「アレグロ雪郎」は「バサカ」を連れて「木枯らし荘」を後にする。その様子を見た「清子」は...。
「(清子:)出てきましたわね。雅史さん、オトナさん、わたくしに続きましょう!!」
行き先はグロサリーストア。到着したちょうど管理人らしきの女や「ガジュ」とすれ違っていてお互い遭遇していない。「清子」は駐車場の外から様子を伺うのだが...。
「(雅史:)そういえば、おじさんはどこいったんだろう...。」
「(清子:)オトナさん...?あら、いつの間にかいませんの。いったいどこにいるのかしら?」
「(雅史:)そういえば、いつも持ち歩いているスナイパーライフルバッグ...ま、いいか。」
「(清子:)...雅史さん、今なんて言いましたの?」
「(雅史:)おじさんがいつも持ち歩いているものはスナイパーライフルかなって。」
「(清子:)...それは一大事ですわ!!あんな物騒なものを持ち歩いては銃刀法に抵触しかねません。スナイパーライフルを使う場所といえば高層タワー。つまり、泥棒児童を撃つのにちょうどいいタワーにオトナさんがいるはずです。早急に向かいましょう!!」
「(雅史:)おじさんはそんな人物じゃないけど...よし、急ごう。」
「マイケル」のいる高層タワーへ向かい、駆け出す2人。残された時間はあとわずか、そして「レベッカ」が「ガジュ」と接触したおかげで、さらなるトラブルに発展する。
「(ガジュ:)あなたのことを誤解していた。不届き者でもなく、私たちのためだったんだよね。悪い噂が絶えなくて今も疑われている、あのエルエーがあなたを排除したんだよ。私たちを...ううん、私たちは利用されたんだ。わかる?」
「(バサカ:)......。」
「(アレグロ雪郎:)どうなんだ?バサカ。」
もう後戻りができないということを「バサカ」は思い詰めている。彼の脳裏をよぎる「ダークチップを使いなさい」よろしく悪魔の囁き...。
「(イレギュラー:)それができないなら、お前の命はないぞ。」
その声に彼を追い詰める。自分の命が危ういと思わせるほど「バサカ」の心を突き動かすかのように暴走し始め、手始めに隠し持っていたカッターナイフを「ガジュ」に突きつける。
「(バサカ:)みんなはバサカを嵌めたっぺ!!バサカはいい人だったっぺ!!」
「(レベッカ:)...やっぱし。何かあると思ったら、奴の差し金か。哀れな...。」
「(バサカ:)違う!!バサカは絶対消されない!!消されないっぺぇ!!」
「(アレグロ雪郎:)レベッカ、彼は哀れじゃないぜ。奴に脅されたに違いない。決定的な証拠だ。バサカ、あんたはこんな馬鹿な真似をする男じゃないはずだ。落ち着け。...落ち着けって!!」
「(バサカ:)少しでも動いてみろっぺ!!ガジュはオシマイだっぺ!?」
ガジュの首に血が少々垂れて...。
「(アレグロ雪郎:)くっ...。手出しできん。管理人、すまん。」
そんな窮地に立たされる中、高層タワーの屋上にいる「マイケル」がスナイパーライフルで「バサカ」の足元に狙いを定め、狙撃する。「バサカ」は一瞬で怯み、その隙に「レベッカ」は彼を確保した。
「(レベッカ:)はい、捕まえた。物騒な刃物は没収ね。」
「バサカ」の抵抗は伊達じゃなく、取り逃してしまう。解放された「ガジュ」は首の切創以外に損傷はなく、無事である。
「(レベッカ:)礼なら、あの狙撃手にね。今は見当たらないけど。」
「(アレグロ雪郎:)バサカは逃げられてしまった。それと、奴の差し金のキーワードでずっと引っ掛かっていたエルエーの黒い噂が本当だというなら、愛美はとらわれの身、つまり敵の手中にあるということじゃないか!!よし、本部で確認してくる。レベッカ、あんたはガジュの保護よろしくな。」
「アレグロ雪郎」はその真偽を確かめるべく、E.G.本部に戻っていく。「清子」と「雅史」が駆けつけた時には既に終わっていて高層タワーを降りる「マイケル」。
「(雅史:)...遅かったね。」
「(清子:)オトナさん、スナイパーライフルを使って、泥棒児童を仕留めまして?」
「(マイケル:)まさか、足元を狙っただけだよ。あの少女を解放するためにね。」
「(清子:)こんな物騒なものを持ち歩いていたら、当局にマークされてしまいますので、以後お気をつけくださいまし。...それにしても取り逃がされましたわね。杏璃さんになんて言えばいいのかしら...。」
大事なことなので言う。「バサカ」は以後、「杏璃」の号室に戻ることはない。
「(清子:)あの泥棒児童を釣るための二重重ねお弁当、大豆の唐揚げだけのおかずを作っておいたのですが逃げられてしまいましたので3人で食べましょう。」
「(雅史:)清子が作った二重重ね弁当...大豆の唐揚げだけのおかずとは......蓋を開けてみると眩しすぎるかも。」
「(清子:)それでは、お召し上がりくださいまし。」
「二重重ね弁当、大豆の唐揚げだけのおかず」は「バサカ」を釣るための餌のはずが3人の夜食となってしまった。以後、「バサカ」が弁当の臭いを嗅ぎつけて来ることはない。
気がつけば22時30分。その頃大急ぎで戻ってきた「アレグロ雪郎」はE.G.本部に戻るためのワープゾーンを使おうにもなぜか封鎖されていて行けそうにない。
「(アレグロ雪郎:)どうなってんだ!?」
「(ロバート:)どうしたの?Signor雪郎。」
「(アレグロ雪郎:)本部に戻ろうにも封鎖されてんだ。このままじゃ祖父が危ないってのに!!」
「(ロバート:)まあ落ち着いて。僕の友の情報によれば、エネルジコがまだ存命している限り封鎖し続けるって。」
「(アレグロ雪郎:)何言ってるかわからん!!そんなこと言ってる暇があるなら、解除するよう連絡しろ!!」
「(ロバート:)そんなこと言われてもね...今の僕じゃどうしようもないよ。Signor雪郎、今の君は冷静じゃない。頭を冷やせ。」
「(アレグロ雪郎:)...メリーランド本部へ直行できない、ならばカリフォルニア支部はどうだ。だが、カリフォルニア支部経由でも封鎖されていることは変わらない。...エドガー曰く最も素早いインキュバスの力が必要になる。よし。」
「(ロバート:)...Signor雪郎?」
「アレグロ雪郎」は商店街グラウンドに設置してあるワープゾーンへ向かった。iPhone4を手に、「ラファエル」に連絡する。まずは「ラファエル」から。
「(アレグロ雪郎:)ラファエル、聞こえるか?祖父の様子はどうなっている?」
「(ラファエル:)コンブリオか、グランファザーの姿は見当たらんがどうしたのだ?何用で連絡を?」
「(アレグロ雪郎:)メリーランド本部が封鎖されていて移動できないんだ。そこでだ、一番スプリンターであるインキュバスを借りてカリフォルニア支部から一気に飛ばすかなって。」
「(ラファエル:)急ぎの用か、ならば早急に手配する。わが妹ダイアナに連絡してみる。」
「(アレグロ雪郎:)それには及ばん。既に事情を話し、インキュバスは俺のそばにいる。」
「(ラファエル:)なっ?それはまことか!?」
「(ハイペリオン:)俺は雪郎先生のそばにいますよ御主人様。」
実は他のワープゾーンに向かうついでに「グッドウィン号室」に寄り、「ダイアナ」にお願いして「ハイペリオン」を借りたのだ。
「(ハイペリオン:)聞いてくださいよ御主人様。先生ったら無茶をするんですよ。カリフォルニアからメリーランドまで飛ばすなんて、着くのにざっと丸一日ですよ。」
「(ラファエル:)...コンブリオ、E.G.メリーランド本部は今、君の知っての通り封鎖されている。唯一の出入口であるカリフォルニアを出発点となると、相当厳しい道のりになる。せめてテキサスに例の転送装置があれば楽になるのだが...。」
「(アレグロ雪郎:)テキサス...ドデカい女の出身地か。現時点では封鎖されていないことが操作パネルを調べてわかった。試してみる価値はありそうだ。出発点はダラスでいく。ラファエルは祖父を注視してくれ。」
「(ラファエル:)承知した。だが、無理はしないよう心がけよ。」
2人はワープゾーンをくぐり、テキサス州ダラスに移動。「ハイペリオン」最大速度でメリーランドに移動した。到着するに4時間を費やし...。
10月20日(水)13時18分 / 東京21日(木)2時18分 メリーランド E.G.本部
「エネルジコ」は...死んだ。「エネルジコ」と「エルエー」の間に何が起きたのか、それを知る者はいない。ただ、「エネルジコ」の口から真犯人の名前をはっきり言ったのは確かのようである。
「(三つ編みメガネの子:)私はエルエーを尋問しに探し回ったところ、責任者の部屋のドアが開いてまして、既に倒れていたの。誰にやられたというと、コチウニって。」
「アレグロ雪郎」は膝をつき慟哭する。真犯人の名前が判明したものの、祖父のダイイングメッセージに疑問を抱き納得しない「ラファエル」であった。封鎖されていたワープゾーンが利用可能となっており、「ハイペリオン」は正しいルートに戻るべく商店街グラウンドに向けて転送装置をくぐり、持ち場に戻っていく。
祖父「エネルジコ」の殉職については「ダイアナ」には話さなかった...。




