Episode17x:奈落の総帥
夏休み前日に、樋串武学園は生徒会書記「シャドウ・デイモン」の手に落ち、今や「杉本杏璃」率いるレジスタンス「立ち向かエーヨ部(Through Team)」は目前の巨悪に抵抗する一方、現在18歳の女子大生は「音無涼香」と「大神徹子」の組織「シャドウオーガニゼーション」に推薦され、高層タワーへ向かうこととなった。
7月16日(金)13時 終業式後
背丈164cmくらいかつドラ鈴の片方耳飾り、タレ目が特徴の「安広浅香」は推薦状を手に持ち、高層タワーことシャドウオーガニゼーション本部のところへ向かっていた。
「(浅香:)ここね。」
それは、彼女は組織のもとで己を磨くためでもある。入口前に佇んでいるのは、後ろ姿の「音無涼香」。不思議そうに思った「浅香」は彼女に近づいてみる。
「(浅香:)あなたは何してるの?」
「(涼香:)アタシは『何してるの』さんではない。」
「(浅香:)そうじゃなくて...。」
「(涼香:)『そうじゃなくて』さんでもない。」
「(浅香:)不思議な子...。」
「浅香」は「涼香」が自分と同じく新入りであることに気づく。
「(浅香:)もしかしてあなたも新入りなの?」
「(涼香:)いいや、アタシはこのタワーの経営者だよ。」
「(浅香:)そうなんだ。」
新入りなわけなく、「涼香」はハナっから組織のトップである。
「(浅香:)それで、どうしてこんなところに立ってるの?中に入らないで。」
「(涼香:)どうも自動ドアがイカれちまって開かないんだよ。」
「(浅香:)?」
「(涼香:)普通ならここに立つと自動的に開くんだけど。」
「(浅香:)...もしかしたら、入口の位置間違ってない?」
「(涼香:)入口はそっち...アタシとしたことが...。」
「涼香」はトップのくせに天然かましている。たいしたことないように見えるがそれは違う。
自動ドアが開き、タワーに入る2人。エントランスの中央に「大神徹子」が待ち構えていた。
「(徹子:)お待ちしておりました、アビス様。遅かったですね。」
「(涼香=アビス:)この人に会わなかったらもっと遅くなってたところだった。」
今の「音無涼香」の名は「アビス・オーバーロード」。彼女の名に奈落主という意味が込められている。少々驚いたような顔をする「浅香」。
「(徹子:)安広浅香だな?」
「(浅香:)あ、はい。あの...その人は?」
「(徹子:)音無涼香...アビス様。私らシャドウオーガニゼーションの総帥。親玉だ。」
「(浅香:)親玉!?」
「アビス」が組織の親玉であることがこの場で判明したのち、「浅香」の実力を測るべく、トレーニングルームに移動する。
「(徹子:)まずは実力を見せてやろうか、安広浅香。」
「(浅香:)相手はゴツいあなた?」
「(徹子:)いや、今日組織に入った志願者がもう一人いる。まずは新入り同士でやってもらおう。」
「(浅香:)なんだ、ヘッポコか。」
「(桑田:)今、ヘッポコって言ったろ?」
「(浅香:)どう見てもアホアホって言いたそうな顔だし。」
「(桑田:)文句言いたいのは俺の方だ、全世界から強い奴が集まるって言うから来てやったのに、いきなりタレ目女と競い合わされるんだがな。」
「(浅香:)タレ目女だからどうしたっていうのよ!?わたくしだって推薦されてきたんだから、アホアホになんか負けないわよ!!」
「(桑田:)言ったな?後で泣いたって知らないぞ。」
「(浅香:)そっちこそね!!」
この変哲のないトレーニングルームで新入り2人はお互いの特技でぶつけ合う。それを観戦する「徹子」と「アビス」。
「(徹子:)アビス様もなぜあのような素人をお呼びになったのです?」
「(アビス:)何のこと?」
「(徹子:)安広浅香です、あの者はまだ...。」
「(アビス:)けど、面白そうじゃんか。それにいい目をしてる。」
技と技でやりあった結果、「桑田キョウ」なる男の圧勝に終わる。
「(桑田:)たいしたことねえじゃないか。なんたって、野球選手に負けちまうんだからよ。なんでお前みたいなのが推薦されたんだろう。もしかすると、何かの間違いなんじゃねえの?ははっ、はっはっはっ...[笑い声]」
悔しい顔をする「浅香」だが...。
「(アビス:)アンタ、やるじゃん。」
拍手して、「浅香」のギャンブラーぶりを称賛する「アビス」。
「(アビス:)なんというか、まるでギャンブラーみたいなものじゃん。言うなれば『月光のギャンブラー』。その腕前、もう一度見てみたいな。」
「(徹子:)アビス様。」
「(アビス:)いいじゃんか。硬いこと言わなくても。」
自分を差し置いて「浅香」ばっかり注目する親玉にぽっかり口を開ける「桑田キョウ」。
「(アビス:)アンタ、面白いね。」
「(桑田:)こら、俺を無視すんな!!」
「(アビス:)ふーん、あっそう。野球選手のアンタはツマラナイ。」
「(桑田:)だぁ!?」
「(アビス:)野球選手としての腕はよくできている。つまり、完成されたゆえに...ツマラナイ。」
「(桑田:)このぉクソアマぁ!!」
暴言を吐く「桑田」だが「徹子」に制止される。
「(徹子:)『アビス様』とお呼びしろ。新入り。」
「(桑田:)ちぇ...。」
「(アビス:)最高だよ。」
「(浅香:)アビス様...。」
「(アビス:)思った通り面白いものだけど、そのままでは強敵に勝てない。」
「(浅香:)えっ?」
「(徹子:)お前の技術には改良すべき点があると言っておられるのだ。」
「(浅香:)改良?どこ?」
「(アビス:)それは自分で考えること。そしてそれが完成したとき、アンタは組織の幹部になるだろう。アペックスリミテッド、組織の幹部クラスによって構成される特権階級さ。」
「(浅香:)わたくしが特権階級に?」
「(徹子:)それ相応の力を見せたらの話だ。」
「(桑田:)ちょっ!!俺はのけ者か!?」
「(徹子:)いえ、組織の主要人物になることが確定しているのはアビス様のみ。残る3人は力量次第でチャンスがある。もっともそのうちの一人は私だろう。」
「(浅香:)じゃあ、あと2人...。」
「(徹子:)組織の幹部になりたくば、ここで行われるコロシアイを勝ち抜くことだ。」
「(アビス:)期待しているよ。」
「(桑田:)言われなくったってやってやる!!」
「(アビス:)アンタもね。妖艶なるギャンブラーさん。」
「(浅香:)あ、はい。」
その時から「浅香」は、「アビス」だけの同志となった。
それから「浅香」の持てる力のすべて、持てる以上の力を発揮して懸命に鍛錬した。少しでも上に、少しでも「アビス」に近づこうと、そしてついに...。
8月25日(水)16時 高層タワー・上層階
「(桑田:)ようやく幹部にまで上り詰めたってのに...まさかお前と一緒とはな。」
「(浅香:)それはこっちの台詞よ。あと忘れないで。組織内の序列ではわたくしが3位であなたは5位なんだから。(4位は暴走族の大和田アキラだけど。)」
「(桑田:)...今はな。」
「(浅香:)...いつかは抜けるっていうの?」
「(桑田:)当然俺は組織のナンバー2になる男なんだからな。」
「(浅香:)トップ?あなたまさかアビス様に勝てるとでも?」
「(桑田:)思ってるさ。あんなヤツ、そのうち追い落としてやる。そうしたらこの組織は俺のもんだ。」
「(浅香:)桑田!!」
「(桑田:)やめとけって。お前は随分とアビスに入れ込んでるみたいだけど、あいつはしょせんシチメンの影を売ってるだけの小物に過ぎないんだよ。」
「(浅香:)...シチメン?」
「(桑田:)なんだよ、知らないのか?」
「(浅香:)誰よそれ。」
「(桑田:)...気になるんだったら自分で調べるんだな。はははっ。」
その夜、情報処理室で「シチメン」について調べていた。
「(浅香:)この人がシチメン...。」
「徹子」が情報処理室に入ってくる。
「(徹子:)お前が知る必要はない。」
「(浅香:)教えて、あなたなら何か知ってるんでしょう?シチメンって何者?アビス様とどういう関係なのよ!!」
「(徹子:)世界でただ一人、アビス様に勝てるかもしれない女だ。」
「(浅香:)アビス様を?」
「(徹子:)それ以上でもそれ以下でもない。気が済んだか。」
「徹子」はこの部屋から退室する。
「(浅香:)シチメン...。」
「シチメン」がどういう人物かはわかったが、これ以上の詮索は無駄であると「徹子」に告げられたので、そのうち「浅香」は考えるのをやめた。




