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市場にて①



「わぁ、朝から賑わってますねぇ」


町で開かれている朝市に行くと、緑や黄色のテントの下で、野菜や果物が箱にたくさん入って売られている。


肉屋や魚屋も同じ通りにあり、煉瓦作りの小屋の中で売られていた。


朝から開いている居酒屋もあり、呑んだくれたちが騒いでいる声も聴こえてくる。


「朝から呑んでる人もいるんですね…」


「放っておけ。朝飯は卵とサラダみたいなのでいいだろ?」


「あっ、はい」


そのとき、近くのガラス細工を売っている雑貨屋の中から人が出てきた。

茶髪のあご髭を蓄えた、大柄な木こりのような年配の男性だ。


「おお、おはようルーシー。誰だ、そちらのお嬢さんは?」


「(ルーシー…?)」


ルシアーノを気さくな呼び方で呼ぶこの男は何者なのだろう、とティーナが思っていると


「ウード、こいつは俺のところの押し掛けだ」


とルシアーノが返事をした。


「え?!まさか、奥さん…?」


「な訳ないだろ!弟子入り志願だよ。名前はティーナだ」


「ルーシーが人と一緒にいるなんて嬉しいね。俺はウード。ルーシーの育ての親みたいなもんだ」


「人と一緒にいるのが嬉しいなんて大きなお世話だ…」


「えっ!お父さんなんですか?はじめまして、よろしくお願いします」


育ての親、という言葉にティーナがひっかかるものを感じる。


「あんまり、緊張しなくていいからね。朝飯を買いにきたんだろ?今日は、アンヘレスさんのところのレタスが朝どれで旨いってさ」


「そうか。それなら買いにいこう。行くぞ」


「あ、はいっ」


ルシアーノとティーナは、ウードのもとを後にして、テントの方へ向かった。



「はい、朝どれのレタスだよー!新鮮でぱりぱり!みずみずしくって一口噛んだらもう一口いきたくなっちゃう!美味しいわよ!」


ほっかむりをした年配の女性が、レタスの並んだ箱の前で、呼び込みをしている。


ルシアーノはひとつひとつレタスを手に取って吟味している。

そんなルシアーノの背後から、ティーナが声をかけた。


「あの、ルシアーノさん、育ての親ってどういうことですか?」


「どういうこともなにも、言った通りの意味だ。俺は10歳のころ、親元を離れて親父の知り合いのウードのところでガラス工芸の修行をしてた。学校にも途中から行かなかった」


ティーナは、何と返事をしたらよいかわからず、口ごもる。


「やっぱり、ガラス工芸がどうしてもやりたかったからですか?ルシアーノさんはそんな小さいころからやりたいことが決まっていたなんて、すごいですね」


わざと明るい口調でティーナがそう言うと、ルシアーノの瞳に暗い影が差した。


「そんなきれいなものじゃないさ」


ティーナはルシアーノの憂いの理由が分からず、ただ黙り込んでしまう。



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