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ルシアーノとの出会い③


ティーナが帰ろうと小屋の前を歩いていたとき、後ろから声をかけられた。


「ごめんなさいね、お嬢さん」


「ロゼッタ、追いかけてきてくれたの?」


ロゼッタは頷くと、ルシアーノの秘密をそっとティーナに教えてくれる。


「ルシアーノにも悪気はないのよ。ただ、彼は人嫌いだから」


「人嫌い…?」


「ルシアーノは、妖精のことを小さいころから見ることができた。だから人から差別されて、気味が悪いと言われていろいろ辛い目にあったの」


ロゼッタはそう言うと、少し哀しげな顔をする。

そして、ぱっと明るい顔になって続けた。


「でも、私が『見える』のは、ルシアーノ以外であなたが初めてよ!だから、あなたならルシアーノともうまくやれるかもしれない」


「そうなんだ…」


「あなたのこと、覚えておくわね。また会いたいわ、ティーナ」


ティーナはその言葉を聞くと、もう一度工房へ向かってみよう、という決意を固めた。

そして、工房を去って、明日また出直すため、ひとまず宿へと向かった。



次の日、ガラスを吹き寄せているルシアーノは背後に気配を感じた。


「こんにちは、ルシアーノさん」


ルシアーノはガラスに口で空気を送り、炉へとガラスを突っ込む。

ガラスは真っ赤な色をして発光し、柔らかく加工しやすい温度になっていく。

それをなんどか繰り返して、丸いグラスを膨らませていく。


ルシアーノは迷惑そうな口調で言った。


「…なんでまた来たんだ」


ルシアーノの周りを飛んでいたロゼッタが声を上げる。


「ティーナ!また会えたわね、嬉しいわあ」


「よかった、ロゼッタ。…私、ルシアーノさんの元で弟子入りさせてもらうまで、諦めません」


ティーナの真剣な声にルシアーノが面食らう。


「はぁ?ロゼもなんでこいつを歓迎するんだ。何か余計なことを言ったんじゃないだろうな?」


「しーらないっ」


とルシアーノに責められたロゼッタがそっぽを向く。


「今日が駄目なら明日、明日が駄目なら明後日も来ます。絶対、ここで働きたいんです」


ティーナが熱意を持ってルシアーノに詰め寄った。


「そんなことをされても同じことだ。迷惑だからもう来るな」


「いえ、明日も来ます。今日はこれで失礼します」


ティーナは頭を下げると、工房を後にした。


「あいつ…何を勝手なことを」  


仏頂面をさらに険しくさせたルシアーノに、ロゼッタが言う。


「いいじゃない、好きにさせてあげなさい。あなたみたいな偏屈なおじさんのところで働きたいなんて、稀有な子よ」


「偏屈なおじさんってなんだ、ロゼ」


ルシアーノは不機嫌そうにそう言うと、グラスをペンチで叩いて棒から取り外し始めた。



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