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終焉に終焉を。  作者: 終焉を迎えたTomato
第七章 友情ノ章

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92/93

EP92 友情。感情。愛情。

刀を構えて、魔物の位置を確認する。

前方にゴブリンらしき魔物が約20。

弱い、名もなき英雄らと戦っている。

龍はただこちらを見つめるのみ。


「......和人!」

「ミライ?」


駆けて来たのはユズでなくミライだった。

息切れをしている。少し落ち着いたあと、彼女は現状を話した。


「キアラ皇女が———」


慌てた様子は変わらず、まっすぐな瞳で告ぐ。


「———居なくなったの!」


静寂に包まれる。

皇女の失踪。国家の破綻。国民の暴走。

様々な考えが頭をよぎる。

風は強く暴れ回り、大地は大きく泣く。空は終焉を告げ、海は静かに見つめている。

赤く、次は青く、今度は紫と、色を変え続ける空。

もうその一瞬により、空の色を思い出せない。バカみたいだ。でも、本当なんだ。


「探すぞ。皇女なんだろ?」

「和人!ミライ!私とフィエールも行く!」


「ああ。もちろん。着いてこい!戦場とは逆なはずだ」


刀を片手に、崩れ堕ちた国を走る。

大通りを一直線。大聖堂の扉が"空いて"いる。

破壊された様だ。

見た感じ魔族か何かの。進化の過程で得た、自然の贈り物。遺伝子に刻み込まれた魔法だ。


前線が堕ちたのか、攻撃がこちらへもやってくる。

映画でしか見ない様な、爆発の真横を駆けている。

大地の色は何色だ。大空の色は何色だ。大海の色は何色だ。

この戦争が終わる頃には、きっと、雑草が花咲く。

誰も居ない都市に、誰にも見られず咲いて、右手も左手も空いて、いるでも抱きしめられる。そんな世界になっている。

いや、そうさせる。


「キアラ!いるか?!」


この国を救いたい。


「キアラ皇女ー?」

「キアラ様ー!!どこにいらっしゃるんですか?」


この街を救いたい。


「キアラ様!!!」


「魔力探知にも引っかからない......」


大聖堂に、四人の声が響く。


外でガラスの様なものが割れる音が聞こえる。

結界の崩壊だ。


もうどうしようにも、何もできない。


今度は外で重く、この世界では初めて聞く、聞き慣れた音が聞こえる。

墜落。

きっと飛行船だ。

ルールも、文明も、魔法も、物理も、世界までもが、消えていく。

空が白い。

白と黒だけで構成されている。


「和人!避けてぇ!!!」


ミライの荒げた叫び声が聞こえる。

慌てて振り向けば、半分皇女、半分知らない魔族の姿が映る。


その時点で俺は察した。

キアラ皇女は、最初からいなかった。と。


———俺は死ぬ。と。


手刀だろうか。

視界が真っ赤に染まり、意識が遠のいていく。





その一瞬で、和人は消滅した。

私は、怒りと悲しみ、情けなさの入り混じった感情で溢れた。

この感情に名前はない。

和人とログハウスで過ごした日、一緒に囲んだご飯。暖かい彼の大きな体で泣いて疲れて寝た日。

様々な記憶が。私の中に呼び起こされる。

君の居ない世界なんてどうでもいい。なんて綺麗事が、今だけは理解ができた。


この感情。

あのキアラとかいうゲス野郎にぶつけてやる。


【精霊の怒りよ。その精神を貫け】


青白く、いかにも危険なレーザーが、聖堂を貫く。

そのレーザーは雲を突き破り、青空を見せる。


———避けられた。


「死ねぇぇぇ!!!!」

和人から教わった魔法。その全ての教訓を、今発動した。


「ユズ!逃げるぞ!」


「やだ!逃げない!!あいつを殺すまでは!」


知らぬ間に、涙が溢れている。

好き。

その感情が、こんなものに使われるだなんて。


「……やるな。君———」


性別のわからない。"元"キアラ皇女が呟いた。

性別も年齢も、思考も動きも何も推測できない。


大聖堂が崩れるのが先だろう。

そして、崩れて仕舞えば私が死ぬだろう。

でも。

和人を殺したことを許せない。


———分かってる。分かってるよ。和人が不老不死なのは。どうせ復活してくるのも分かってる。


でも。

心臓がうるさい。

私の心臓が。それを許さない。絶対に。


だから。

だから殺すのだ。

あの魔族を。社会のゴミを。

生まれてくるべきではなかった。いらない存在を。



何度も何度も何度も何度も何度も繰り返して魔法を放っても、やつに当たることはない。

大聖堂が崩れていく。


「何で殺したの?何で?なんで???!」


声を荒げた。

世界中に、憎しみが響く。

攻撃をやめた。


ゴミが話し始める。


「彼、月乃原和人は。私の敵だ。殺さねばならなかった。そう細胞が言ったのだ。私はただ命令に従っただけ。名もなき、神を。信じただけ」


「信じられない。神?そんなの知らないわよ!」


瓦礫の上。

フィエールとミライは固まっている。


「信じろ。私を。運命を。神を———」


「我らが神聖教を」


「死ね!」


魔法が、全てを消し去る。


こんなに魔力を使っているのに、不思議と体が軽い。

今までとは違う何か。聖力ではない、確実に魔力なのに、別の感覚。


これは、噂に聞いていた。


"生命等級"の進化だろうか?


そう考えても。私が上がるのなら、愛する彼はどうなるの?


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