EP91 最果ての地より。
終末が訪れる。
邪悪なではないただの魔物と、終焉に創られ、侵された魔物。
双方、攻撃し合うことはなく、あくまで戦闘は人間達と行っている。
ふと、神聖教について思い出した。
神聖教は俺を神と崇め祭る宗教団体。
恐らく、親終焉団体だ。
もし、神聖教のような宗教団体、組織がこの世に存在するのなら、人間対人間。ただの世界大戦が始まるだろう。
飛行機の音が、次第に大きくなる。
見た目は本当に初期の戦闘機で、羽なども木製だろう。
雲を突き破り、不特定多数の飛行機が顔を出していく。
車がないのは、まだこの国に浸透していないだけかもしれない。
じゃあなぜスマホを?というのはさておき、今現在の状況はある程度理解した。
まず一つ。軍事力。
この戦う兵士達も、そのほとんどがただの冒険者。
一部空中浮遊が可能な程度で、本当に、見習いが大多数。
ラシュトール聖者決定戦。という名目ではあるものの、これはただの魔物と人、そして終焉の戦争に過ぎない。
正規の軍も、見えている範囲では十万もいないだろう。
北東の、最果ての地よりやってきた彼らも、きっと五万程度だ。
飛行艇、飛行船......技術力はピカイチのようだが、それは魔物に効くのか?
かの昔。俺が戦争へ赴いた頃の空軍へ派遣された記憶。
『地点Rに敵兵、歩兵戦闘車、戦闘用ヘリ6機。地対空ミサイル推定700発!』
「了解。魔物の数は?」
『ゼロだ。空爆を要請する』
「了解」
無線から聞こえる指令。
俺はただその言葉に従った。
お国の為と。引き金を引く。
戦闘機の操縦にも慣れた頃。
一機、また一機と堕ちて行く中国、ロシアの国境にいた。
と言っても、北朝鮮と観光は合併し、日本やアメリカの勢力が一点に集中している場所だ。北海道から出発し、空中給油を重ね、南東から攻めていくこの小隊は、一機の犠牲を出したものの、空中支援を完遂させた。
ただ、問題は、敵の殲滅後であった。
『警告!警告!周囲に危険度7。災害級の魔物が出現!手の空いた者は地点R、Kの警戒に当たれ』
「魔物かよ......!」
急旋回。ナイフエッジ。
魔物の状況を確認しながら、目的地へ向かう。
この時だった。
魔物には、ミサイル、マシンガン。すなわち、銃火器が効かないのだ。
まだ魔物の解明も進まず、突如として現れたその怪異に、俺らはただ怯えるしかなかった。
13、14だっただろうか。当時の年齢は。
魔物に効かない攻撃を続け、危うく民間人を射殺するところだった。
だから———
「.......対魔獣兵器?」
という考えが頭をよぎった。
というのも。魔物に銃火器が効かない理由。
それは、魔物の周囲に目に見えない魔力の膜がある為だ。魔力や刀等で攻撃した場合、その幕は自然に溶け込み、一部が消滅、もしくは弱体化する。
その為、その攻撃がしっかりと入り、ダメージを与えられる。
一方、銃火器の場合、なぜか弾薬が反射されてしまう。
爆発する物であれば、その膜の表面で爆発を起こし、攻撃は通らない。
魔学者達は、想いがあるかないか。ではないかと考えているそうだ。
『誰か!助けて!!息子が!娘が!!!』
その声の主。見たところ30代の若いお母さんだ。
少し汚れた服を着ていることから、裕福ではないことが伺える。
その目線の先は、火事が発生している。
恐らく家だったんだろう。そして、そこに息子、娘がいるのだろう。きっと小さなお子さんだ。
俺はそっと下へ降りた。
「大丈夫ですか?お子さんはここですか?」
『はい……私は大丈夫ですが……』
「……大丈夫です。今助けるので」
途端に泣き崩れる女性。
少しすると一人の男性が慌てて駆け寄った。
『ソフィ!大丈夫か?ルーラは?アルグレスは?』
『この......この中.......まだこの中なの......』
少し。声が聞こえる気がする。
魔力探知にはかからない。まあそうか、小さい子供ならば当然だろう。
大きく息を吸い込み、詠唱する。
丁寧に、慎重に、一つミスれば、ここら一帯が水に呑まれ、子供達は当然即死する。
即死だし。まだいいか。
【神ヨ静メタマへ邪智暴虐ヲ。ソナレバヤガテ灯火消エ行ク】
空間に、直径2、3cmの水の粒が浮かび、やがて炎を埋め尽くす。
消える直前に火に入れば、やがて小さな二つの体が見えた。
ルーラとアルグレス。であってるだろうか。
ひとまず二人を救出した。
前線はまだ耐えられる。
まだなんとかいける。
少し前だろうか。離れたところで、大きな音がする。
「とりあえず、この子達は見つけた……意識を失ってるようだ。中央道の辺りで、少女が治療をしているはずだ、そこへ向かってくれ」
『ありがとうございます!なんとお礼したら良いか!』
「そうだな。......生きろ。じゃあな」
手を振り、空を向く。
そう。彼らがやってきた。
支援に来たのだ。
これで勝てる。
俺は、中央道の、戦場と市街地を分けるように流れる川を目の前に、その龍を睨んだ。
抜刀。
刀身が少し青白く光る。
あの龍は、まだまだ警戒中だ。きっと攻撃できない。
ならば、やることは一つだろう。
戦うのみだ。




