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終焉に終焉を。  作者: 終焉を迎えたTomato
第七章 友情ノ章

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EP89 大地と陛下と災厄

「なあ和人。これはなんだ?」


「それは……えびだな。ただのえびだな。海の幸だ」


「えびさんだー。食べないの?フィエールさん」


「......少し怖い。海の生物なんて食ったことがない。そもそもそれを食うのは北の島々だけだ。私たちに馴染みはない」


少しフォークと手が震えているのが分かる。

意外と可愛いなこいつ。と思ったが。


「……」


ユズの視線が怖い。




なんとか昼食を終えた俺たちは、北セントラルエリアの受付に向かった。


ラシュトール聖者決定戦。と大きく書かれた布が2本の柱に支えられ風に靡いている。

近所の子供が書いたのか、少しぐらついた字に、謎の配色である。とってもカラフルだ。


遠くから聞こえる音楽のようなものは、開幕式まであと一時間を切った合図だ。

とても愉快な音楽で、人々の歓びが無意識に感じ取れる。


「こんにちは!どの試合に応募しますか?」


笑顔で接客する受付嬢。いかにも異世界らしい格好だ。ありがたい。


「えっと、このラシュトール聖者決定戦の団体戦と、俺とこの騎士は個人戦もお願いします」


「かしこまりました!ではここにお名前をお願いします」


フィエールもユズも、静かに見つめる。

ラシュトールの言語を習得する者は三人の中で俺だけだった。とはいえ魔法の共有により文字は書けないが読みと会話は可能である。

独自開発の魔法だが、とっても便利な魔法だ。


「.......はい。月乃原和人さん、神楽ユズさん、フィエール・ラ・アストリアさんですね!」


「はい。問題ないです」


「こちらが受付番号です。祭りの期間中、場内への出入りは自由です。特にマナーもありません。大会の前にルール説明がございます。あ、あと、祭りの期間中、どの街にいてもアナウンスによって呼び出します。呼び出された場合には、近くの転移門にお越しください」


「分かりました。ありがとうございます」


「「「ありがとうございました!!!」」」


全員一斉に感謝の言葉を向ける。

ちょっと耳が痛いが、悪くはない。




ざっくりと転移門の位置を確認し、開幕式の始まりを待つ。


前にクレリアとぶち込まれた大聖堂をそのまま数倍にしたような聖堂が中央へ佇み、その周りを同心円状に建物と道路が交互に存在する。

道路は黒い煉瓦、建物は木と煉瓦と石膏で固められ、

その間を木が割っている。バランスが取れており、文明もそれなりにある。

制服姿の若者や、小さな子供達。幸せそうな夫婦と、様々な人がいる。

中央都市であるためなのだろうか。東京と同じような賑わいを見せている。

しかし、車の姿はない。歩行者天国のようなものかと思ったが、そもそも車という概念そのものがないようだ。


ふと後ろを見ると、遠くに険しい雪山が見える。

白と赤の何かが飛んでいる。あれは龍だろうか。

この大地は、幸せと魔力に満ちている。

魔物が攻めてこないのがおかしい程に。


約一時間後、スピーカーのキーンという音と共に、それから声が聞こえる。

同時にあたりは静寂に包まれ、動きも止まった。

大聖堂の前に、何人かの人が見える。

おそらくお偉いさんだ。



「あ、和人、あの紫っぽいのミライちゃんじゃない?」


「そうっぽいな。かなり端っこだが」


「となると、中心の人物は皇女か何かだろう。和人」


「あれが……」


真ん中に見えたのは銀髪の少女、とその父親らしき者。あれが国王か何かだ。


『おい、あれ見ろ!』

『おお!キアラ陛下じゃないか!』

『美人だ!』


他の人間も、気付いたようだ。

いや美人かは分からないだろここじゃ。


『ご機嫌よう。国民、及び観光客の――』


放送が聞こえる。

まるで雪のように美しく魅せられる声。


『『ラシュトールは永遠に!』』

『ラシュトールは永遠に!』


彼女の後に続き、全ての人々が声を上げる。

その声は大地に響き、明日へと渡る。


『『野に開く雑草の様に』』

『野に開く雑草の様に』


この声が響く先、きっとこの終着点は、どこにもない平和なのだろう。


たとえ仮初であろうとも。

それが真実だと信じれば。

それは人々の中で生き続ける。


『『『ラシュトールよ、民よ、神よ、全てよ、永遠にあれ!』』』


『ここに、第五七九回、ラシュトール聖栄祭の開幕を宣言する!!!!』


『うぉぉぉぉぉぉ!!!!!!』

『よっしゃああああ!!』

『ついに始まるぞ!』


前夜祭じゃないのか......?

何はともあれ。祭りの間は平和であって欲しい。

祭りの間だけでいいから。




『おい!ラザニアの龍が攻めてきたぞ!!!』


たった一人、男の声。

その叫びが、喜びを撃ち裂いた。


『どうしてだぁ!!』

『嫌だ!死にたく、死にたくない!』

『早く聖栄騎士に伝えろ!!!じゃなきゃ死ぬぞ!』


後ろに人はいない。最後尾だ。


先程見えた龍が。こちらへ向かっている。


「第一、第二艦隊!構え!!」


どこからか、指揮官らしき人物の声が聞こえる。


「打て!」


直後、魔力に包まれた鉄球が高速で放たれる。

あの速さは軽く音速を超えている。


「和人、どうしよう……」


慌てた様子で、俺の体を揺するユズ。

大剣を構える。元勇者パーティのフィエール。


「ユズ、いつも通り。後衛は頼んだ!」


「わ、分かった!気をつけて!」


龍の吐く息が、建物を、人々を、自然を焼き尽くす。

突如として現れた龍に、キアラ陛下は高火力の魔法と、保護結界を張った。


上空300mを超えた俺は、龍の正面を目掛ける。

もう死者は一万を超えているだろう。


これ以上犠牲は出せない。


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