EP85 新たな世界と新たな仲間
「どこだここ」
「転移したのか?これは」
「なんかあまり驚かないね」
慣れすぎている。
おかしいだろ、まだお前ら一回だけだぞ、世界間転移は。
とはいえ、文明のある場所でよかった。
見た感じここは中世ヨーロッパ。
と言いたいところだが、和風建築が遠くに見えるので、日本でいう明治時代か、あれが日本町という説の二つ、周囲を眺めると和風建築はあそこだけ。つまり、あれは日本町的な何かだ。
「......どうしようか。位置も分からないぞ」
「とりま街の人に聞いてみよー!」
軽いな。
俺は無言で頷いた。
服装は様々だ、和服もいれば、洋服もいる。中華っぽい服もあり、なんなら現代チックな服装の奴もいる。
ますますこの文明が分からなくなっていく。
言語は違う。
まずあちら側に存在しない。(俺は読めるが)
「ここ、服屋か」
「なんで読めるの?!」
「ユズ。こいつは和人だ。読めても不思議じゃない」
俺フィエールにどんなやつと思われてんだ。
「助けて!誰か!」
服屋の奥、森の方から、声が聞こえる。
「ユズ、フィエール、救助要請だ。行くぞ」
「え?あ、うん」
建物の間を通り、森を駆け抜ける。
どうやら、この奥にも文明......というか集落か何かがある様だ。
数分間駆け抜けて、ようやく声の主らしきものが見えた。
若干開けた土地。小さな祠もある。
紫髪の少女。
背中から、触手の様なものが生えている。
たこ焼きにしたら美味そうだ。
目の前にはケロベロスかケルベロスか時々分からなくなるあいつが居た。今もどっちか忘れている。
その少女は少し傷を負っている。おそらくデカ犬に襲われたのだろう。たこ焼きにしようとしてんのか?
「ユズ、遠距離魔法撃って怯ませてくれ。死ななくてもいいぞ」
「了解!」
ユズは一気に速度を落とし、静かに魔法陣を召喚する。
その間に、俺とフィエールは距離を詰める。
フィエールは奴の気を引いて、俺は少女の救出、そして魔物の討伐だ。
ユズの攻撃の後、俺が仕留める。
本当は、一発で仕留めたいところだが、それは無理だろう。
フィエールは左から現れた。
俺はクロスする様に右から飛び出て、少女一直線。
ちょうど俺が少女を助ける頃、俺とフィエールは交わった。
これにより、こいつの単純な頭の中では一人が通ったという認識になる。
「ヤッホー!この子もらうわ!」
「ひゃあ!あんた誰?!」
「どもー、悪いが自己紹介はあとでな。ひとまずこいつ殺すわ」
「わ、わかった、ありがとう」
少女は困惑した様子で、かなり脱力している。
よほど緊張して居たのだろう。
「ユズ!いまだ!」
「分かった!!」
たった一本の光の筋。しかし、それはあのデカ犬の腹を貫通した。
最後の一撃。はかかと落とし。
「ほら、ご褒美だっ!」
ヘッドショット。
これはポイント高い。
地面にいくつかひびが入り、少し、四メートル程凹んだが祠は無事だ。
魔物は消滅していった。
チリチリという音と共に灰になる。
そして魔物を倒したから俺はハイになる。
というのは嘘だ。
「ユズー倒したぞー!」
「ういー」
「あ、あの......」
「あごめん。下すね」
「和人のえっち」
「なんで?!」
軽く罵られて、とりあえず少女を下ろした。
お姫様抱っこにした方がよかったのか......?
「......まあとりあえず、怪我はないか?」
「ないよ大丈夫。君たちはどこからきた誰なの?」
「ああー俺らはー」
少し迷った。異世界人とはっきりいうか、それとも極東の地から来た旅人とでも言うか......
「私たちはおそらく異世界からきた者だ。気づけばこの世界に転移して居た。私はフィエール。よろしく」
言っちゃうのね。
「私は神楽 ユズ!16歳のぴちぴちのJKだよ!」
ユズも後に続く。
仕方ないので、俺も自己紹介をした。
「んで俺は月乃原 和人。見ての通り一応18だ。歳は取らないがな。そして、ユズの彼氏でもある」
「ちょっと!まだ付き合ってないし!」
顔を赤らめて言うユズ。とてつもなく可愛い。生きててよかった。
「そ、そっか、二人はラブラブなんだね。私はミライ。あっちの村の村長で、次期アステルだよ」
「アステルとは?」
フィエールが質問した。
ミライは淡々と続ける。
「アステルっていうのは冒険者のこと。一応国家資格が必要でね。今は勉強してるんだ」
「ほう。いいな。頑張れよ」
「ありがと」
その後、とりあえず村へ向かった。
村長を助けたお礼。という名目で、俺らはご馳走をいただき、村の小さな子達からお守りももらった。
昼飯を抜かしていたのでちょうどよかった。
「......そ、村長村長」
「......そ、そうね。分かったわ」
食事中、村長ことミライは秘書的存在と話していた。
出されたステーキとスープ、サラダがあまりに美味しく、手を止められなかった。
「和人。あとで話があって......」
「了解した。飯食い終わったらな。にしてもこれうま過ぎねえか?」
「えへへ、ありがと。うちの村は、観光と自然が売りでさ。水も豊富だし、野菜もあるし、気候もちょうどいい。温泉もあるよ」
「温泉あるの?!」
ユズが食いついた。
というのも、ユズが聖天地入りしてからログハウスでの生活を経て、温泉にどハマりしたのだ。
「あとで紹介するね。そういえば、みんなはスマホある?ID交換できたらいいんだけど......って異世界人だから使えないか」
「そうだな。一応あとで見してやる。テレパシーなら使えるぞ」
フィエールは静かに目を丸くしている。
あとでフィエールにもスマホを与えてやろう。
そうして会食を経て、俺らは友好関係を気づいた。
一応俺とミライは街の長。今後、この関係が大きく関わっていくだろう。
"話"とはなんなのだろうか。
そんなことは考えず、とりあえずサラダへ手を伸ばした。今は飯に集中しよう。ここ一週間食って居ないのだ。




