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終焉に終焉を。  作者: 終焉を迎えたTomato
第六章 想イノ章

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EP83 分裂した世界

知りたくはなかった。

これが現実なことを。


夢であって欲しかった世界は、今やどこか綺麗だと思えてしまうほど狂いまくっている。


少年少女。その面影はどこにもなく、大人か、幼い子供しか見当たらない。

中学生は皆。戦争へ向かっているのだから。

三百万人の若き兵士。

幾つもの分隊や兵科に分かれ、戦地に送られる。

もちろん、自衛隊も向かってはいる。それも全員。

しかし、約十倍の数の中学生兵士で、自衛隊への負担は少ない。

中学生兵士の殆どが最前線。歩兵として送られた。

自衛隊は主に援護。様々な兵器を使って後ろから攻撃や治療などを行った。


ここも史実通り。変わった点もなさそうだ。

ただ一つ。気になる点と言えば......


この戦争で、本土侵略はなかったはずだ。


ならどうしてこうなっているか———


理由なんて一つしかないだろう。


この世界が夢でもなんでもなく、実際に存在したものの過去であると仮定するならば。

この世界が、分裂を起こしたものだと推測できる。

いわば並行世界だ。

ではなぜここに来れたか。


それは、終焉ノ鐘が鳴った際、世界は世界線を融合させた。

いくつもの分岐点を一つにまとめて、一個の世界にしてしまったのだ。


じゃああれは......


遠くの、"何か"を指差す。


「あれは......『俺』......?」


震えた声で、遠くの何かを探した。

さっき一度離れて、また戻って来たのだろうか。

あちらもこちらを観測している。


灰色の軍服。しかしそれは航空隊の服。

陸兵がほとんどで、終結直前に少し航空隊に入ったから、もしあれが俺であるのなら、16歳から17歳あたりだろう。

陸兵とは少し色が薄く、薄い生地で作られている。


あんな装備で、といいたいところだが、数百倍の大きさを誇る魔物を目の前に置き、現代ファッションで闘う俺に、人のことを言うことはできなかった。


任期の延長。

それが世界的に発生した。


"それら"によってどう世界が変わって居たかは覚えていない。


あれが俺の分裂であるのならば、早急に排除しなければならない。

おそらく、あいつは破滅を招く者。

きっといつか望んだ未来に終止符を打ち、無に帰すまで攻撃をやめない者。

俺の記憶が消えていたのも、あいつから、もしくは別に存在していた母体から分裂した者なのかもしれない。

その場合。母体はなぜ分裂したのかが疑問に残る。


何かがたりてない日常を過ごして、適当に生きたこの世を愛して。

たった一つ、愛とか希望とかじゃない、なんでもない感情に身を任せ世界を滅ぼし、護ろうとした俺は、多分、死んでおけば良かったのだ。


そうすれば。

あいつだって存在しないはずなのだから。


少しずつ近づいている。

こちらの様子を伺っている様だ。

刀を持たずに、腰にピストルの様な物と、短剣をつけている。

殺意に溢れた眼差し、消えていく辺りの重力。

そう。彼は、"完全な俺"ではないのだ。

分裂した世界線上の存在。


「姫咲。逃げろ」

「え......?」


銃を取り出す。

銃如きで俺に傷はつかない、しかし、姫咲は別だ。

たとえ記憶に創られし者出会っても、その存在は本体に限りなく近い。

姫咲はただの人間だ。魔力も使えないただの人間だ。


「できるだけ遠くに逃げろ、上官からの命令だ」

「......分かった。先輩も後で来てね」


濃い緑色の軍服のスカートが揺れる。

姫咲は何度か躓きながらも逃げていった。


「できるだけ。時間を稼ぐから」


俺であり、別人であるあいつに、俺のことは理解できる。

そこに解決策なんてものはない。


夜へ向かう世界を背に、自分に立ち向かわなければならない。


銃を構え、発砲した。

2秒後、遅れて地面を弾が掠る。

明らかにおかしい威力に負けず。

激しく打ちつける紅き涙に負けず。

あの頃の、世界が輝いていた頃を思い出しながら、目の前の自分を殺さねばならない。


『......』


何も言わず、空を歩んでいる。


魔力も感じれない。

きっと魔法を使えない訳じゃなく、魔力を制限しているのだろう。

だとするならば。


【終焉に生ける者よ】


大きな地響きが世界を覆う。


【その灯火を忘れよ】


幾つもの魔法陣。

どことなく召喚される、"終焉の龍"

その一撃が、彼を襲う。


世界が耐えきれないほどのを魔力を。

全てを攫うこの波を。


あの愚かな人間は身を挺して受け止め。消滅した。


この闇を照らした光も、終焉によるものなのだ。


終焉とは自然の一部なのだから。



「姫咲はどこに......いや、もう......」


空を見上げて、自分の犯した罪を見つめる。

ただただ、夕日を背に、世界の終わりを見届ける。

たとえ幻想でも、現実と遜色ない。

やがて、天空に現れし、一本の闇に、世界は呑まれていく。


ただただ。

ただただ。

堕ちていく。


葬り去ったあの時計も、形すら残さない。

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