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終焉に終焉を。  作者: 終焉を迎えたTomato
第四章 戦って戦って戦って。
79/81

EP79 希望を忘れずに

感情が怒りに包まれる。

これまでにないほど、大きな魔力を感じる。

体内を巡り巡って、何度も放出される。

貯蓄されている。生成されている。


この感覚をコントロールできたら、未来を変えられるかもしれない。


ただ、それはあくまで、できたらの話だ。


「苦し....!なんだよ!」


苦しい。辛い。

体を内部から裂くような痛みが、何度も続く。

終焉の力、それが負の力である限り、副作用は苦しいものになる。過去に調べたはずだ。なぜ忘れていた。そもそも、終焉は自然現象の一つ。完璧に操る事なんてできやしないのだ。


「これじゃ....ユズが....」


ダメだ。倒れては。

ここで倒れたら....想像するだけで吐き気がする。

結局気づけば倒れていた。

また、あの白い空間で、白い道を歩いている。

やはり、周りには誰もいない。

俺が歩いている道、たった一本がどこまでもどこまでも永遠に続いている。


「机....?こんなところに?」


ぽつんと道の真ん中に現れた机。その上には数枚の紙切れが置いてあった。

紙切れには文字が書いてあった。


『やあ。n回目の和人。ここに来るのは何回目?』


少し汚い字で、びっしりと綴られている。


『もう知っているかもだが、ここは原始の記憶。そう呼ばれる地域で、この世界だけでない"存在"が集まる場所。誰かの夢だったり意識だったり記憶だったり。それらが道として、君には見えているはずだ』


訳が分からない。

というか、"n回目"とはなんなのだ。ループしているのか?」それとも何かの名称なのか?


『今。君に見えているもの。それはたった一本の道だろう。本来であれば、周りに他の人も居る。それが友達や恋人の場合だってある。ではなぜ一人だけか。答えは簡単だよ。君が....いや、この場合俺か。俺が、この世界に限らず、幾つもの世界を滅ぼしたから。君にその記憶がないのは、君が終焉に呑まれていたからだよ。俺は何者かって?答えは何者でもない。ただ、君の記憶や意思、経験などから作り出された幻想だ。未来とかループしているとかじゃないから安心しろよ。

それに、その未来は、君自身が護るんだから』


この紙切れは、同じような内容のもの、別のもの、一枚拾っても、一枚増える。終わりがなく、永遠と続いていた。

この紙切れの作者が、俺の経験や知識から作ったというのは確かなようだ。


ユズのことも書いてあるし、終焉やフィエールのことだけ書いてあるものもある。


なんとなく理解して、落ち着いた頃、目の前に石造りの扉が現れた。

おそらく、これを開けて潜れば、元の世界に戻る。

数回深呼吸をして、その先に進んだ。

気がつけば神社の目の前、また結愛の結界が張られていた。

シャボン玉のように虹色に輝く膜を超えて、龍が四体待ち構えている。

遠くの方で、一体と戦っているユズの姿が見える。


【千里眼】


魔法を使って、ユズの行動を把握した。


あの刀は折れていて、再生の最中でもぶん回している。

きっと刀に慣れていなかったんだ。

ユズは魔法と剣技で戦っている。

魔力の濃度が異常に高い。

時々隠れて回復しながら戦うユズは、チラッと母船の方を確認し、救助を待っているようにみえた。

一気に魔力を消費せず、耐久戦に持ち込む、いい戦法だ。


母船の方はと言うと、こちらに先端を向けて赤いランプと、青いランプが点滅している。


——エネルギーのチャージ。あの白い空間を破壊するに至らなかったエネルギーを使って、あの龍を仕留めるつもりだろうか。

その怒りの矛先は、全ての龍の急所を狙っているようだった。


「ユズ!そこで待ってろ!」

「分かった!ずっと同じようにしてる!」


できればこの結界に入ってほしいがそんなことをしていたらユズが死んでしまう。

だから。俺にできること。


母船との会話を試みよう。


数分かけて母船に近づく、レシオかクレリアの力を借りなければ、ユズが危険だ。


「おい!頼む開けてくれ!」

めいいっぱい叫んだ。ガラスでできた司令室に向かって。

しかし、聞こえる事はなかった。

構造的に音が外から聞こえない上、このチャージのために、全ての電源を落としているのだ。


「分かったよ....俺一人で抑えるしかないんだろう?」

ため息を吐いて、第一宇宙速度が可愛く見えるほどの速さで龍の眼球を目掛けた。


【運命よ、海を裂け!】


何度も魔法を打ち込み、一体は弱らせることに成功した。


「ユズ!怪我は?」

「ないよ。でもそんなことより龍が....!」

背後から、龍が突撃してくる。

これではもうダメだ。ユズを守れない。少なくとも、当たり一面は吹っ飛ぶだろう。


そう思った直後だった。


甲高い金属の音が、街中に響く。

その剣の持ち主、十二月の英雄。

そう、フィエールだ。


「ユズ、和人、すまなかった、二人だけで戦わせて」

「フィエール....」

「フィエールさん....!」

「ひとまず、エール様とエリア様はまだ昏睡状態だ。ユズは神社に戻ってくれ、和人、貴様の力は必要だ!」

少々困惑するユズを神社に送り、またフィエールの元へ向かった。

「和人、希望を忘れずにな!」

「おう!じゃあ行くぞ!」

「ああ、もちろん本気でなああああ!!!」

激しい戦闘がさらに激しくなって、終わりが遠のいた。

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