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終焉に終焉を。  作者: 終焉を迎えたTomato
第四章 戦って戦って戦って。

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EP77 世界の声

ユズを抱きながら、ものすごい速度で落下する。

少しだけ、日がオレンジっぽく色を変える時、聖天地を望み、自由落下していた。

平衡感覚が狂いそうなほど回転したり、酸素が薄くてユズが気絶したり、飛行して聖天地に戻りたかった。


でも、それを考えたときには遅かった。


「和人、聖天地、崩れてない?」

ユズの指先を見る。

聖天地の大部分が崩壊、落下し、ガラスの欠片のように散っていった。

「....原因か....あれが」

聖天地は再生するため心配ないが、フィエール達が心配だ。

そして何より、あの"終焉でできた龍"が....


今すぐにでもあいつを消さねば、きっとフィエール達が危ない。

戦えるのは結愛だけだ。ユズを神社に送り保護してもらうという手もあるが、それはきっと無理....聖天地と同程度の大きさの龍八体を一人で相手にするのは流石に不可能だ。


———ならどうするか。


クレリアも、きっとここには居ない。

連絡も取れない。

俺の体内の、俺という存在が持つ、"終焉"の力。

果てしない程に巨大で、まだ完全には使えない。その上、失敗すれば周りが吹っ飛ぶ。

少なくとも、聖天地が十個あっても足りないだろう。

けど、魔法でも刀でも勝てないのなら、そうするしかないだろう。


「ユズ、神社に送るから、結愛たちを頼めるか?」

「え?一人で?」

「ああ、そうだ。どっちも一人だ、少しの間でいい」

「和人、無理だよ、あんなでかいのが八体もいるんだよ?」

「ユズ、死ぬなよ」

「和人?!聞いてるの?!」

ユズの言葉を無視して、ユズを転移させた。

会えないかもしれない、そんな危険を冒してでも、俺には、この世界を守るという使命がある。

右手を大きく広げ、刀を受け止める。

聖力を練り上げ、終焉の力でコーティングした、完全自作、俺に合う、"新しい相棒"だ。


「大丈夫だ、俺ならいける。今はもう一人じゃない」


誰も居ない遥か上空で、自分に言い聞かせる。

動け、世界よ。


体の向きを変え、まずは一体を目掛けて攻撃を仕掛ける。

できるだけそいつの攻撃が、他の龍を巻き込むように避ける。

できるだけ、できるだけでいい。

無理をしなくていい。


ただ、戦え。戦えるのは俺だけだ。


音速を軽く超え、攻撃や飛行を繰り返す。

ユズの心配をしている場合じゃない。


これは戦争だ。自然と人間の戦争だ。

悪いのは俺らだ。

でも学ぶのも俺らだ。

今も未来も学び続ける。


【聖霊よ、水面の加護あれ!】


水は効かない。


【結晶となれば、剣となる!】


氷も効かない。


【聖なる天理よ、我らに祝福を!】


聖力は効くようだ。


同時に終焉の力も。

しかし、これは困難を極めるだろう。

刃が通らない。

この刀が一ミリも入り込まないのだ。

クレリアの支援を待っても、数時間はかかりそうだ。


【烈火よ、その魂を貫け!】


炎属性魔法。

複数の魔力砲が、その体を貫く。

それでも即座に再生し、傷跡も残らない。

神社の方に攻撃が届きそうだ。

このままではユズ達が危ない。


「くっそ!どうすればいいんだ!」

やけになって刀をぶん回す、複数回タイミングよく打ち込めば攻撃が通るものの、結局は再生してしまう。


「あぶね!」

避けた。

つもりだった。

その巨大な尻尾に吹き飛ばされ、気づけば神社の目の前まで来ていた。


「和人?!大丈夫?!」

驚きと心配の入り混じったユズの叫びが聞こえる。

「大丈夫....きっと」

地面に寝そべっていた。傷口が痛む。

体力が持たない。

でも立たなければ。

そう思い立ち上がった。その時、もう目の前数キロ先にに龍が居た。

龍は即座に魔力砲を放った。


「和人....!避けて!」


ああ、だめだ、このままじゃ....ユズが....


諦めかけた。

大きな爆発音、衝撃波と共に、視界が一瞬暗転した。

無傷、生きている。

なぜだ。

なぜ俺は生きている。目の前に結界のような膜が張られていた。その膜が守ってくれたのだろうか。

一メートルもない膜との距離、本当にギリギリだったのだろう。

もう、神社以外、街道も隙間に生える雑草も存在しない。


「お兄ちゃん....助けて....」


聞こえた。確かに聞こえた。

明里の声が、弱く、小さな明里の声が。

怒りが込み上げる。けど、冷静さを欠けさせてはならない。

「ユズ、結愛は?」

「そ、それが....」

この結界、その源は....?

嫌な予感は、こういう時に限って当たるものだ。


結愛。彼女が、この結界の、源になっている。フィエールとエリアのそばで、すやすやと眠っているように見えて、その背中から、透明なエネルギーが出ている。

それは小さな羽根のようで、ある程度の大きさで薄れて見えない。

結界、結愛、そして、明里の声。

あれは、明里の声だったのだろうか。

もし、"世界の声"だったら....?


世界が悲鳴をあげている....?


どちらにせよ、こいつらを殺すまで、何もできない。

俺は、人の努力を破壊する奴が、大っ嫌いだ。

「ユズ、戦えるか?」

「うん、剣は持ってないけど」

「....ならこれ使え」

「え?それは和人のじゃ....?」

手に握りしめた刀と、その鞘をユズに渡す。

「大丈夫だ。俺にはまだあるから」

刀。ユズに渡した新しい相棒。短い役目だったが、それでも、また新しい構造が浮かんだ。

あとは作るだけだ。


「刀を....作った....?」

「ああ、ユズのもな。少し重いかもだが、無くすなよ」

「うん、これで戦える....!」

俺らは、木の影から出た。神社の道の真ん中、神の通り道に立った。



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