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終焉に終焉を。  作者: 終焉を迎えたTomato
第四章 戦って戦って戦って。

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75/82

EP75 世界の片隅で。

クレリアに押されるがままに、その裂け目へと身を放った。

真っ白な建物に、美しい青空が広がる。

まるで天国に来たかのようで、聖堂のような建物は、汚れひとつない美しい真っ白に染まっている。

先ほどの空間はなんだったのか、考える事もせず俺はただその小さき大聖堂に見惚れていた。

裂け目は徐々に治って、やがて塞がった。


「....クレリア、怪我はないな?」

「はい....なんとか....」

「何回空間を移動すればいいんだ....全く....」

大きな木製の扉、綺麗に煌くステンドグラス。

扉を開けると、ステンドグラスの色を鮮やかに通し、―静かに彩られた石像があった。

一冊の本がある。

意味深に、一冊のみが机の上に置かれている。

ロウソクの炎は消える気配がない。

「クレリア、これ開くか?」

「こ、怖いで――」

「よし開くぞー」

「え?えぇ?!」

クレリアは背中の後ろに隠れた。

本の一ページ目。この本の目的、詳細が書かれている。


―この本は、この世界に一冊のみの存在。

―この本は、この世界の聖力によって執筆されている。

―この本の力は、世界を見透すこと。

―この本の力は、世界を守ること。

―<可能性>の少女はこの本の真実を知る。

しかし、他人に話すことはない。絶対に。

―この本は権能<大地の英雄>を所持する者に、"一度だけ"変更ができる。


―この本は、終焉に対抗する。そのため、<終焉>を持つ者に、彼に、見ることは不可能になる。

しかし、<可能性>、権能<大地の英雄>、残り九つの権能、天の贈り物を所持する者と同席した場合読むことができる。

また、<終焉>や<可能性>などを所持しない者は見ることはできない。

この本の、このページ、表紙、存在のみが理解できる。




次のページをめくった。しかし、見えることは無かった。

それはクレリアも同様で、存在のみしかわからなかった。

とりあえず、この本を持って帰り、可能性、結愛に見せてみることにする。

「帰りたい、でもどうすりゃいいんだよ!!」

「あちらに、扉がありますよ」

「行ってみるしかない!」

祭壇の左側にある小さな扉、少ししゃがまないと通れない。(クレリアは通れた)

その扉を抜けると外に出た。

一本の白い道が奥の方に続いている。

遠くの方は何も見えない。

「これ天国行きじゃないよな?」

「流石に違いますよ、そもそもあなた死なないじゃん」

「確かし、じゃあ行こうか」

「そですね」

クレリアとこの長い道を歩いた。

途中、ここはかなりの上空で、世界の片隅に位置する神殿のような、神聖な物である事が分かった。

十二メートル程ある幅の道から下を見下ろすと目の前に東京、その左側に聖天地、東京の奥に富士山があった。

「ユズたちはどうなってんだろうか....」

「さあ?もしかしたらここにいる人以外からは見えないのかもしれませんね....」

「それはつまり、"観測"されてない?」

「多分....シュレディンガーの猫的な?」

「分からんなぁ」

「分かりませんねぇ」

数十分、歩き続けてきたが何もなく、ただ、沈みゆく日を受けながら歩く事しかできなかった。

この向こうに何があるのだろうか。

ただただ、歩いていく。


そして、あれから二時間程した。

心を無にして歩いていた。

気づけば、真っ白な空間で、少し灰色がかった道を歩き続けていた。


いつの日だろうか、後ろを向いて、誰もいない事に気づいたのは。

そういえば、隣にも、前にもいなかった。

本当に誰も居なかった。

家に帰れば、誰かがいる。『おかえり』と言ってくれる。

小さい頃は、今まではそれがずっと続くと信じてきた。

けど、そんなことはなくただの夢となって消えていった。


中学に入っても分からなかった。

けど、大人はずっというんだ。

『夢は叶わない』『諦めろ』『"普通"になれ』『良い大学に行け、いいところに就職しろ』『お前には何もできない』『お前じゃ無理だ』

そんなことを聞く内に、俺の進む足は遅くなっていった。

やがて、この人生が終焉を迎えた日。


俺の足は、ついに後退を始めた。


どうせ死ぬ。なら、勉強しなくたって、ある程度できてれば勉強しなくたって、きっと、楽しい未来はあるだろう。

もう、そんな考えしか思いつかなかった。

ただの言い訳だ。

たった少しの言い訳が、この世界を滅ぼした。

そうだ、この世界だけじゃない。他の"世界"も、他の"宇宙"も、たくさん滅ぼした。

自我なんてなかった。

そうだ、俺は自我を無くし、一万年に渡って世界を滅ぼし続けた。

俺は、七十万年生きたんだ....


そうだった、苦しかった、怖かった、ずっと一人で、友達も恋人も忘れて、全てを投げ出して。

たった一人、七十万年という時を生きたんだ。

何度願ったんだ、俺は。


「俺を殺してくれ....!」


この声が、誰かに響いたのか、この声で誰かに助けてもらえるのか、やっと開放されるのだろうか....

....いいや、違う。

この手の暖かさは、ユズの温もりだ。


空間を割いてでも、俺を助けにきてくれた。

"殺す"以外の、別の方法で。

何か言ってるな。ユズ。

ごめん、聞こえないや。

もっと、近くで....

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