EP72 過去の未来
「Apocalypse」という組織が気になる。
というか組織なのか?
他にも、聖天地を表しているような絵や、読めない文字が発見された。どこかの古代文明の遺物だろうか。
しかし一番気になるのはアポカリプスと書かれたもの。少なくとも、この神社と何か関係があるのだけは確かだ。
クレリアのタブレットにも知られていないこの組織が、この世界にどんな影響を与えるのだろうか。
「和人様ー?」
「....え?あ、ごめん考え事してた」
「そうですか、これを見て下さい」
「何これ?」
「過去の出来事をまとめた電子書籍です」
クレリアに見せられた画面には、小さく大量の歴史が載っていた。
クリアだけでなく、地球も、エールの歴史も載っていた。
もちろんそこにはフィエールの名もしっかりと記され、なんなら何個もあった。ぱっと見、四十の功績がある。
フィエールは現在、エールとエリアのところで現在の状況等をまとめている。
依然、二人は目を覚さない。
apocalypseとの関係性がもしかしたらあるのかもしれない。
どちらにせよ、引き続き調査が必要だ。
「クレリア、やっぱりどこを探してもそんなの....」
「つまり、歴史に掲載される事なく、この文明に見つかる事なく生活しているということ、もしかしたら、クリアより高度な文明かもしれません。ですから、この『Apocalypse』を探すのは困難....」
クレリアは黙った。遠くの一点を見つめていた。
神社の中、右側にある小さな池の端っこ。大きな松の木が生え、その周りを美しい花が囲んでいる。
数秒黙ったクレリアはその後、また考え込んだ。
「クレリア?どうした、なんかあったのか?」
「....い、今、何か人影が見えた気がして」
「人影?」
もう一度、俺は視線の先を見た。
直後、視界が歪み、終焉が世界を滅ぼしている最中の世界にタイムリープ?した。
空は赤く染まって、大地は常に揺れている。
鉄筋コンクリートでできたビルも、マンションも、頑丈な岩盤でさえも破壊した。
終焉は、弱まる気配を持たず、一向に規模が増して行くだけだ。
「和人様!避けて!」
クレリアの叫びのおかげで、俺は間一髪落石を避けることができた。
空に浮かぶ黒い煙、どこかで火事が起きている。
その煙の中に、とてつもなく高度の高い黒煙が存在した。
その煙を辿って行くと、西の方....つまり、あれはきっと富士山が噴火し、発生した噴煙だろう。
先ほどの落石も、噴火によるものだ。
俺はしばらくの間眠っていたから気づかなかったが、確かに火山灰が地上に満遍なく存在していたのを思い出した。
....終焉の影響か、あの時の状況は少しおかしかった。
もう既に、この世界は崩壊していたのを忘れていた。
楽しい日常が、大切なものがそこにあったから、俺はずっと忘れていた。
クレリアのタブレットは割れて、画面左端が映らなくなっている。
「クレリア、あれは....」
スクランブル交差点、横断歩道の中央で、三人の全身を黒い布で覆い、マスクをつけた女性らが集まり、手を繋ぎ輪を広げている。
あれが『Apocalypse』の組織、終焉の愛護団体のようなものだろう。
名前かっこいいな....
その後、彼女らの地面には魔法陣が出現し、終焉に向かって放たれた。
終焉は、皇居の真上、標高は不明。
黒く赤く、まがまがしい光の束が、何度も何度も送られていく。
どうして、彼女らはそうするのだろうか。
しばらくの間、彼女らの行為を眺めていた。
すると、一枚の紙切れが風に乗って来た。
そこには、
何故我らを観測できる。
観測者よ。過去の未来を、見届けるのだ。
貴様の愛など、希望など、夢など、全ては無意味。
きっと、黒き眼球が。
全てを救い。
全てを変え。
全てを創造してくださるだろう。
観測者よ、貴様のその無力さを、味わうがいい。
と記されていた。
宗教か何かなのだろうか。
黒き眼球、それはきっと終焉を表しているだろう。
『過去の未来』という言葉が気になる。
....いやそれって今のことでは?と思うが、まあ多分それは言ってはいけないお約束だろう。
クレリアにこの紙切れを見せて、とりあえず保存した。
数秒後、何も起こらず、神社へと戻った。




