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終焉に終焉を。  作者: 終焉を迎えたTomato
第四章 記憶の闇に

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EP57 暴走と抵抗。

ユズは悩んだまま固まっている。

「ユズ!早く行け!!」

「....わ、分かった!」

ユズが走り出す。

炎により、赤く染まる。

日没まで数分だ。

夜になれば、きっと一部の魔物は活性化し、視界が悪くなるだろう。

そしたら、一度母船に戻るしかない。

刀を握れ。

剣を振れ。

愛する人のために。

この世界のために。


爆撃が続く。

魔法なしで魔物との対峙はかなりきつい。

何より、防御ができない。

人間の場合、大気中や物体に存在する魔力を使っている。自分で魔力を生成することは不可能ではないが、かなりの時間が必要だ。しかし、魔物の場合は自ら生成し、それを使用する。

つまり、発電機とスマホのような関係だ。

魔力がなければ使い物にならない。

しかも高威力だ。勝てるはずがない。

何か勝てる方法はないだろうか....

逃げようとしても、後から追ってくるだろう。

俺は何度も考えながら刀を振った。

その斬撃は、海を裂き、空間をも裂いてしまうほどの威力だ。

しかし、このアンデット系の魔物には一撃も効かない。

この刀が向いていないのか、それともこいつの防御力のステータスがインフレしているのか。

その真相は誰にもわからない。

そもそも、こいつはアンデットなのか?

なんにせよ、ユズが帰ってくるまで。俺はこいつら魔物と対峙しなければならない。

頼む。焼夷弾でもクラスター弾でもいいからぶち込んでくれ。

母船からの戦闘機の出撃が途絶え、戦闘機が来ることは無くなった。戦闘機の中に一機、攻撃をしない機体があったが、あれは戦闘機ではなく偵察機だろうか。

もしそうならば、母船の人々....クレリアやレシオですらわからないことがあるのだろう。

いや、当たり前か。

ただ、どうやら地球のことなどを知っていたり、なんなら地球より文明レベルが進んでいる気がする。というか進んでいる。

少し不可解だ。

取り敢えず今は戦闘に集中しよう。

にしてもすごい力だ。

「こりゃあ骨が折れるぜ....」


「和人!!」

遠くから、軽そうな剣を持ったユズの姿が見えた。

意外とはやいな。

「ユズ!気をつけろよ!」

遠くにいるユズは華麗に攻撃を避けながら向かってくる。

そして、ユズは一言、手を伸ばし、魔物に向けて言った。

「月光!」

その直後、あたりは薄く明るくなり、魔法が放たれた。

そのビームは、魔物の体を完全に削除し、更に向こうへ破滅と光をもたらした。ビームが消えると、その破滅は街を抜け、まだ未開発の土地、そして一つの山を消し飛ばした。


....なら。どうして俺は魔法が使えなかったのだろう。


「....ユズ....お前......」

俺はユズの行動に驚きを隠せず、灰と化して行く魔物の死体を背にユズを見つめた。

彼女はにっこりと笑った。

自分の力が小さく感じた。

「和人....すごいでしょ?」

「あ、ああ....」

「えへへ。嬉しい」

ユズが一人、この世界で生き残れた理由に関係しているのだろうか。

....となると、フィエールやエリアも....そういう事だよな?

「和人?どうしたの?」

「い、いやなんでもない」

日が沈んでいく。

さっきまでうるさかった魔物たちが、今や異様に静かだ。まるで、すべてが死んだかのように。

けど、どうせ奴らは出てくる。

いつしかきっと....いや、もう明日にはここに訪れるだろう。

そうなれば、そうなるのならば。俺らはどうするべきか。

今一度、考えなければ。


「和人。一つ、言いたいことがあるの」

「え、何?」

「....その....ログハウスがなかったの。あの突然現れた神社に上書きされたわけでもなさそうで....それで....」

「それで....?」

ものすごく。嫌な予感がする。

なぜかは分からないが、大事なものを失った気がする。

「....結愛ちゃんが....居なくなっちゃったの....」

ユズの頬に涙が伝う。

結愛がいない。

そもそもログハウスが存在しない。

あのログハウスと言っていいのかちょっと分からない規模のデカさを誇るログハウスが存在しない。

俺らの、短い"記憶"が詰まった場所が。

俺らの、たった一人の"娘"が。

「結愛ちゃんは....どこに....」

「ユズ、泣くな。きっとどこかで、結愛は俺らを待ってるよ」

ここに住人がいないのも、言われてみれば最初っからおかしいのだ。

もしかしたら、あの母船に避難しているのかもしれない。

あの、空に....

「和人....?」

涙を流しながら、手を伸ばす。

届かないものを掴もうとする。

怒り、哀しみ、幾つもの感情が、俺の中を行き交う。

どうすれば、結愛を見つけられるのだろうかも分からず、俺は歩き出した。

少し。

心当たりというか、仮説があるのだ。


あの世界で見た明里の姿。その背中は、どこか結愛に似ていた気がする。

もし、何か関係があるのなら、そのヒントは神社にあるはずだ。

「....あの神社に行くの?」

「よく分かったね。....ほら、行こうか」

ユズの手を掴んだ。手を繋いだ。

もし、誰かに結愛が誰かに誘拐されているのであれば、たとえそうでなくとも。

その原因が、悪であるのなら。

俺は絶対に許さない。

魔物が復活する前に、あの神社に進め。


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