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終焉に終焉を。  作者: 終焉を迎えたTomato
記憶の闇に

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55/82

EP55 あの日、世界が滅んだ日。

空を見上げる。

星が一つ輝く。

同じものはない。

在ってはならない。

「和人....?」


少し、何かが見えた気がする。

大きな木が生えていて、街が広がって....でも、魔物か何かに破壊されたような....

建築は和風だ。けど、道の感じからして日本じゃない。


「和人....!」

「え?あ、ユズ。起きたのか」

「うん。どうしたの?ずうっとぼーっとしてたけど」

「....な、なんでもないよ」

どうしてだろう。思い出せない。

「ならいいけど....なんかあったら言ってね!」

「ああ、ありがとう」

ユズは元気に言った。苦しい記憶を見た後でも、彼女は輝きを失うことはなかった。

彼女は一番星。空に輝く星のように輝いた。

「あ、和人、またゲートが」

「本当だ。あれ....なんか違う....?」

少し違和感を感じた。前のものは十字に割れていたのに対し、今回は二回り大きく、六芒星の形に割れていた。何かの予兆だろうか。

「仕方ない。入るか....」

「うん」

ここで考えていても変わらない。戦わなければ勝てないのと同じだ。

そうして、俺はまた、ユズの手を取りその世界へ歩き出した。

傘はないけれど、覚悟はある。

きっと大丈夫。


踏み出した瞬間、気づけば俺の実家にいた。

「お兄ちゃん....どうして....!」

明里がいた。泣いていた。

そして、俺は....

首を切って、死んでいた。

これは、あの日の話。世界が滅んだ日の話で間違い無いだろう。

「和人....こんなことが....」

ユズが言った。

申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

俺の勝手で、こんな辛い出来事を見せてしまっている訳だから。

「ユズ、ごめん....」

「ううん。謝らなくていいの、求めてるわけじゃ無いし。ただ、少し....いや、かなりショックだっただけで」

ユズは強い。戦闘力ではなく、メンタルが、その精神が強い。

じゃなければ、友人の自殺を目の前にし、その後の終焉で家族、そして世界を失ってもこんなに明るいはずがない。

もし、普通の人なら、もう希望を失い、自ら命を絶つだろう。

「お兄ちゃん....!どう....何?!地震?!」

大きく揺れる。

明里はものすごく困惑した様子で、冷たくなった俺を揺さぶる。

速く逃げなければ自分も死ぬ。それなのに。

「お兄ちゃん!速く起きて!二人とも死んじゃう!」

もうだめなのに。

「速く!!ねえ!速く!!!」

懐かしい声が脳に響く。

涙が溢れる。

救えなかった。守れなかった。

たった一回の、自分の「死」によって、妹を、家族を殺した。

世界をも敵に回した。

一瞬で、約80億人を消した。

そんな俺は今、のうのうと生きている。

幸せを感じている。

笑っている。

どうして俺なんかが生きているのだろう。

俺なんかが生きていいのだろうか。

俺なんかが。

俺なんかが....

俺なんかが――

だんだんとだんだんと、闇に包まれる。

だんだんとだんだんと、闇に呑まれる。

世界が、俺自身が。

闇の中輝き、戦い、諦めない煌めきが、こちらを見つめる。

世界が残酷だと気づいた時には遅かった。

自分が間違っていると気づくのが遅かった。

生きているのが間違っていた。

死ななかったのが間違っていた。

そんな感情が、幾つも脳内を彷徨う。


星。


それは、人の人生を照らす。

ユズ。

彼女が、俺の中の一番星だ。

「和人....大丈夫....?」

手が震える。

「あ、ああ、大丈夫だ」

声が震える。

もっと早く、好きなものを好きと言えばよかった。

もっと早く、生きることを楽しめばよかった。

もっと早く、自分を探せばよかった。

もっと早く。

もっと早く。


もっと早く。

世界が滅べばよかった。


「和人!目を覚まして....!」

ユズのその言葉に、消えかけた己を取り返した。

「ありがとう....ユズ」

まだ、目の前には明里がいる。

逃げると言う、その"選択肢"を放棄した明里がいる。

俺が守れなかった、明里が、俺を守ろうとしている。

涙が止まらない。

俺は、どうするのが正解だったのだろうか。

心に問いたい。世界に問いたい。

きっと、いつかの未来に希望があるのだと信じたい。

「和人、明里ちゃん。移動したよ」

「え?ああ。追いかけようか」

突然の行動に、少し困惑しながらも後を追った。

この空間は記憶かなんかだからなのか、彼女たちからは見えないようだ。

明里が向かった先。

そこには、何もなかった。

勢いよくドアを開いて飛び出した明里だが。知らぬ間に謎の空間に飛ばされた。

そして、そこには....

さっきと同じ、神社があった。

神楽大社。

その文字も、そびえ立つ鳥居も、全てが新しく、煌めくように美しかった。

当然ながら、明里は困惑している。

それはもちろん。俺らもだ。

「ねえ和人。これって....ループしてるってこと?」

「....ループ....か。その可能性は高そうだ。けど、なら俺らは既に明里に会っているんじゃないか?」

世界がループしている。

その考え方は、きっと大昔からあるだろう。

でも、一つ疑問がある。

それは、その世界が、本当に同じ世界なのかと言うこと。

深く考えた。

何度も考えた。

その間、明里はとあるものを見つけた。

「何これ....ナイフ....?」

鋭い刃物。ナイフのようだが、取っ手はない。

明里は、そのナイフを目の前に突き出し、空間を割いた。

その裂け目から漏れた光には、崩壊した世界と、全く知らない世界が映った。




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