EP5 異変
何もない道をひたすら歩く。刀を杖代わりにただ歩く。30分か1時間したくらいでログハウスに着いた。
「やっと....休める....」
もう動きたくない。中に入って窓を開けて、すぐベッドにダイブした。疲れすぎていたのか、すぐに眠ったようだ。
「ん........」
目が覚めた......いや本当に覚めたのか?真っ暗だ。訳が分からない。夜という訳でも無さそうだ、なぜなら、今日は満月、それに今日は雲一つない晴天だ。
体を起こして、歩いてみることにした。
「あれは?」
遠くに謎の輝きのようなものが見える。人かもしれないのでそこを目指す。ただそれ以外には何もない、あるのはあの輝きと俺だけだ。
「ユズ?」
取り敢えずユズの名前を呼んでみた。返事はなかった。だんだん近づくにつれ、何かの影が見えてくるが何かはまだ分からない。ただ人では無さそうだ。
「我は魔王ベース」
「魔王だと?」
「そうだ....」
「何言ってんだお前....」
「う、うるさい!とにかく我は魔王なのだ!」
「愚かな人の子よ、貴様が和人か?」
「あ、ああそうだ。俺は和人だ」
魔王....この世界に魔王など存在しないはずだ.....
「ベース、聞かせてくれ、ここはどこなんだ?なぜ俺はここにいる?お前はなんなんだ?」
「....ここは、我の魂の中....貴様をここに呼んだのだ我がな。我はもう死んだのだ。....そして死んでからずっと貴様を見ていた」
「死んでいる.....ってそんなことより、なぜここに俺を呼んだ?」
「我が、貴様を呼んだ理由....それはこの世界の終焉に関係がある.....この世界は、終焉によって侵食され始めているのは知っているだろう?」
「ああ、もちろん」
「その終焉が、我の魂を復活させたのだ」
「終焉が....魂を......?」
「我はすぐ気づいた、復活したのは、我だけでないと....我以外の数多の魔物が....世界に....」
「.....こんなのは初めてだ....」
「我はもう生き返れない....だが、魔物はいつしか蘇る......貴様になら、できるだろう、魔物を終焉を消すことが.....」
「やってみねえと分からねえが....」
「貴様になら.....できると..........信じている..........不死の剣士よ.....不老の少年よ.....我の魂に残った....少しの煌めき.....その意思を......どうか............」
「....魔物か.....」
やがて視界が明るくなっていく。本当の目覚めをしたようだ。
魔物.....それにしても、なぜベースは俺が不老不死なのを知っていたのだろうか。いや、そんなことを考えている場合じゃない。今すぐに結界を貼らなければ。
「おはよう!和人!」
「......」
「和人....?どうしたの?そんな顔して、怖い夢でもみたの?」
「あ、ユズ。おはよう。大丈夫だよ、少し考え事をしていただけさ」
「そ、そうなの?ならいいけど....」
「ユズ、下は危険だ」
「うん、終焉が侵食してるからね」
「それが.....もう一つ理由があるんだ」
「もう一つの理由?」
「簡単に言うと魔物がもうすぐ出てくる」
「魔物が、出てくる.....?対処法はないの?」
「魔物を一掃して大きな対魔結界を貼る」
「分かった。私も手伝う」
「え?でもお前はまだ何もできないんだ」
ユズはまだ魔法を上手く、強く撃つことはできない。
「それでもいいの!みんなを守りたいの!」
もうみんなはいない....それに....
「でも......魔物が.....」
「いいや!そんなの関係ないから!私決めたの!和人一緒に世界から終焉をなくすって!終焉に終焉を告げるって決めたの!」
そんなのは分かってる。しかし、終焉をなくすには下手すりゃ数十年かかる。俺は問題ない、けどユズが、ユズだけが歳をとって衰えて、最終的には朽ちていくんだ。それが嫌なんだ。
「ユズ、聞いてくれ、問題なのは魔物のせいで、危険度が増したからってだけじゃないんだ。終焉の終焉には数十年かかるかもしれないんだ。」
「....でも私は....」
「....なあ、ユズ」
「何?」
「実は俺......不老不死なんだ」
真実を打ち明けた。なんて言われるのだろうか。怖い。嫌われたらどうしようか。
「.....そっか......」
ユズは少し間を開けて言った。
「辛かったんだね....」
ああ、その通りだ。辛かった、苦しかった、寂しかった。ずっと一人で誰もいない世界を彷徨っていた。おそらく900年ほど.....その間魔法の修行に励んだ。たったそれだけだ。それ以外何もしていない。
「ああ、辛かったさ。みんな死んでさ。俺だけが残ったんだ。」
「泣かないで....和人」
ユズのその言葉に驚いた。なんせ、泣いているだなんて気づかなかったからだ。
「ありがとう、ユズ」
「私はどうなってもいいの。だからお願い、一緒に行かせて」
「....本当にいいんだな?」
「....うん。だって和人の、みんなのためだもの」
こんなに強い決心があるのなら、ユズにも強い魔法も撃てるだろう。もっと強い魔法を教えるか。
「分かった、一緒に行こう」
「うん、ありがとう」
これでいいのか、分からないがきっと考えたって時間が無駄になるだけだ。
「ユズ、本当にいいのか?」
「うん!大丈夫よ!だって私だもん!」
「そんなこと言って、すぐにくたびれたりすんなよw」
「ちょ、ちょっと、私のこと舐めすぎじゃない?!」
「悪かったってwでもかなりきついのは本当だから無理すんなよ。なんかあればすぐに俺に言え」
「分かってるわよ、そんくらい」
大丈夫かな?少し....いや結構心配だ。
「じゃあ明日からはじめようか」
「なんで明日なの?まだ13:00だよ?」
「まだ大まかなプランしか考えてないんだよ、細かいところまで考えないいとな」
「ふーん、なら今日はここでゆっくりしよー」
―1〜2時間後―
それから、1〜2時間ほど考えて、完成した。ユズのために作ったプラン。魔法特別訓練だ。
「これでよしっと」
「終わったの?」
「ああ、以外に時間はかからずに終わった」
「もう今からやるの?」
「いや明日からだ」
「そっかー」
ユズはちょっとショボーンとした。時間が思ったより余ったので、少し雑談をすることにした。俺はこの世界について聞いた。ユズは、魔法の歴史などを聞いてきた。うむ、歴史に興味があるのはいいことだ。なんて思ってたら、もうあたりはすっかり暗くなっていた。
「ちょっと外に行って、風を浴びてくるね!」
「俺も行くよ」
外に出て、空を見上げた。見渡す限り、全てが輝いていた綺麗な星空だ。風も気持ちいい。
「あ、あれ!あの星は火星でしょ?」
「あれは....いや金星だ」
「え?嘘?」
「本当だよw火星は赤いからな、金星は黄色い」
そんなくだらない会話をしていた。ユズは楽しそうだった。だが、ログハウスに戻って、寝ようとした時、俺らは気づいた。
和人&ユズ「ベッドが一つしかない?!」
そう、ベッドがダブルベッドだったんだ。いやどうして今まで気づかなかったのだろうか?ユズと一緒に寝るか?でもな、気まずいよな.....
「ど、どうする?」
「私は.....一緒でもいいよ」
ユズの顔が秒で赤くなる。こんな恥ずかしいことを、可愛いことに言われて、断れるわけがない。それにまだ出会ったばっかの少女に。....いや、こんな直ぐ体を許してはだめだろう。
一緒に寝るしかないか.....
「い、一緒に寝よっか」
ユズは黙って頷いた。仕方なく、ベッドの中に入った。ユズの体....温もりを感じる。こんなに大きい女の子の隣で寝るだなんて、昔の俺は想像できただろうか。
「ねえ....和人」
「ん?どうした?」
「その....大丈夫だとは思うけど....襲ったりしないでね....?」
「そ、そんなことしねえよ!」
「.....そっ.....か....」
なんかこの人悲しそうなんですけど?!
「.....本当にしないからな?」
「....分かった、おやすみ」
「あ、ああ、おやすみ」
なんなんだこいつ!して欲しいのか?襲って欲しいのか?い、いやそんなことないよな、そ、そうだよな。うん。もう何も考えずに寝よう。そうしよう。