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終焉に終焉を。  作者: 終焉を迎えたTomato
第三章 確実に世界を救うために。

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EP49 想いの決断

「疲れたー!」

「クレリア、なんか元気じゃないか?」

「そんなことないですよー!」

嘘だ。明らかに嘘だ。だって荷物を取りに行って載せて運んで、降ろして機械にぶち込んで帰って来たのだ、こんなに明るいはずがない。

「嬉しい事でもあったか?」

「....和人に、想いを伝えられたから!」

頬を赤らめながらに言った。それはもうとてつもない愛を感じた。ただ、その瞳の奥にあった色は忘れられない。

振られた。という揺るぎない事実、想いが届かなかった。それのせいで、彼女の瞳は色を失うのかもしれない。その色を、色彩を取り戻すことはできないのかもしれない。けど、俺にはできることがあるだろう。今は、それを全うすることだけに集中しよう。

「クレリア、一ついいか?」

「え?なに?お小遣い?」

「違うけど....クレリア、ありがとう」

「へ?」

少し、クレリアの瞳が潤む。

窓に写る夜景が寂しく輝く。

風が吹いた。慰めるように。

「和人様....ありがとうだなんて....」

また泣かせてしまった。けど、朝とは違う涙だ。

「死ぬわけじゃない、別れるわけじゃない、これからも一緒だ。何も変わりやしないさ。クレリア、俺を好きになってくれてありがとう」

「そんな....そうじゃないんです。ひどいです....」

今朝とは違う。何かが変わってしまった。これが青春ってやつなのか。俺には分からないが....けどこれだけは分かる。

「クレリア、今まで、協力してくれてありがとう。これからも、一緒に頑張ろう。終焉が消えたら、一度だけカフェにでも行こう。一緒に、スイーツを半分こしよう」

今、俺にできること。それは慰めることだ。

それ以外にできない。なんせ、俺は無力だから。

「私は!....そんな和人みたいに強くないですよ....」

「でも、選択はできる」

クレリアは少し黙った。続けないようなのでこちらから話を振る。

「お前には、俺には選択肢がある。未来もある。その選択で旅路が決まっていく、そしてその終着点で、選択の終着点で、『あの時はああで苦しかったけど、でも良かった』そう思えればいいんだ」

「綺麗事ばっかりですね....」

「人というものは、そういうものだ。生まれつき、人という種族である限り、俺たちの中には必ず汚いところがある。それを綺麗事でカバーしているに過ぎない。でも、それでいい。それが人の良いところだ」

「そう....で....」

ホテルのベッドに並んで座って、クレリアは泣いて....俺は窓の外を見る。今朝との違う姿を見せるその景色は、まるで、人間を比喩表現しているようだった。

「クレリア....?寝ちゃったか」

今思えば、帰って来てすぐに元気そうに見えたのは無理をしていたからなんだな。

君の神様になれたなら、俺は君を救いたい。

俺の肩に身をゆだね、スヤスヤと眠るクレリアの気持ちよさそうな寝顔に、俺は安堵でいっぱいだった。

さっき脱いだ上着をかけてあげた。

もう少し、このままでいよう。



「和人....!和人....!」

少し違和感を感じながら、目を覚ます。

クレリアが慌てた顔でタブレットをいじっている。

「....レシオ?」

目の前にいた声の正体は、他の誰でもないレシオだった。なぜここにいるのだろうか。

「どうしてここに?」

「そんなのいいから!早くこっち来て!!」

「ちょ、待てって!どうしたんだよ!」

俺は慌てた様子のレシオの手を引っ張った。

「そんなの、問題が発生したからに決まってるでしょ!!」

「問題ってなんだよ!」

「和人様、こちらへ」

クレリアが俺を呼んだ。依然、タブレットを見たままだ。何があったのだろうかと恐る恐るクレリアの元に向かう。

「和人様、地球に帰れるのは、今しかありません」

「は?」

驚きを隠せない。

「どういうことだ?」

「....魔力が....崩壊を開始しています」

「魔力が....?転移もできないじゃねえか!」

「はい。この宇宙船で行くしかありません。しかし、今出発しなければ、星の整列が崩れて、もう帰れるのは....八百年後になります」

「クソ!俺は問題ねえが、あっちとお前らが!」

不老不死。便利なのか、不便なのかはっきりしてくれ。

「和人!出発命令を!」

「ですが!燃料の補充が....!」

「....行くしかない....他に手段はないだろう」

「はい....」

クレリアは答えた。


緊急事態出発命令。


それが、俺の選択が、間違ってないことを願って。

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