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終焉に終焉を。  作者: 終焉を迎えたTomato
第三章 確実に世界を救うために。

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EP44 幻に囚われても諦めない

また、暗闇に包まれる....はずだった。

でも今回は違った。

一面真っ白で、あたたかくて、すごく居心地のいいところだ。

そういえば、幻想の前、痛みを感じなかった。おそらく、首より上に命中して、即死だったんだろう。

生き返るまであとどれくらいだろう....

「早く帰らないとクレリアが....住民たちが....!」

そう叫んでも、ただ虚しく声が響くだけだった。叫んでも叫んでも、俺の声は君に届かない。

ただ1人、虚しく前を見つめていた。何も変わらない未来を見つめていた。

すると、まるで映画のように、突如として映像が映し出された。

死んでから、3分も経っていない頃の景色が。


「和人様!!和人様!!おいて行かないでください!!」

「神....和人様がまた....眠りについた....」

「うるせえ!お前らのせいだ!!」

クレリアはそう叫び、銃を6発放った。

司祭であろう信者は素早く避けて、無傷だ。

「消えろ!!!消えろ!!!死ね!!!死んじゃえ!!!」

数十人の神聖教信者を前に、何度も何度も叫び、魔法を放った。

「殺したのは貴女だ....」

司祭は言った。たった一言を。

それが、クレリアの怒りを最大限に引きずり出したのだろう。

「消えろ!!!!!!!」

魔力砲が壁を数枚貫通しながら敵の体を突き破る。

この想いは、絶対に消えない。

クレリアは何度も続け、銃を放つ。

神聖教信者の死を迎えさせ、狂ったように叫ぶ。

しかし、司祭は消えない。そもそも攻撃が当たらないのだ。

クレリアはどうするんだろうか....

そんなことを考えていると、そのスクリーンは薄くなって消えていった。

やがて、この幻想も暗く閉ざしていく。

幻に囚われて、遂には音もなくなった。

「あああああ.....俺が何をしたっていうんだよ....」

膝から崩れ落ち、謎に温かい地面に触れる。

ユズも結愛もフィエールもエリアも....

沢山の人を待たせているのに、俺は何もできないのか....

「どうしてだよ....!」

俺は俺に対する愚痴を溢した。

どうしようもできない自分に嫌気が刺した。

目の前で、クレリアが戦っているのに....

この"偽りの世界"から抜け出す情報はないのだろうか....


その頃。聖天地では....

「ユズ。何かあったのか?」

「い、いや!なんでもないよ!」

「そ、そうか....さっきからずっと空を見上げているから何かあったのかと思ったよ....」

「大丈夫だよ!」

ユズは苦笑いをした。

本当は、異変に気づいているのに....

そして、和人の異変にも気づいていた。

和人が、いくら不老不死だからと言って、最強という訳じゃないのは心の奥底で分かっていた。だから、それが引っかかったのだ。


俺は、まだ、地に手を着いたまま。その場から動かなかった。

「ユズ....助けてくれ....」

助けを呼んでも、どうせ来ないのは、来れないのは分かっている。

全てが闇に呑まれ、真っ暗になる。

地面に薄く貼られた水の膜は水色に輝き、美しかった。

その光は、どこか辛そうだった。

まるで昔の....いや、今も続く俺の笑顔のようにどこか無理をしていて、でも、心配されたくないから、無理してないように見せている。そんな気がした。

「....」

涙が止まらない。

消えない生命で生きている今を憎んで、消したかった生命で生きた人生に幕を閉じたかったあの日々を思い出す。

俺が終焉を知る前の、戦争の日。

その日もずっと、争いに明け暮れていた。その時に知った。

この世界には希望なんてないのだと。夢なんてないのだと。信じたくはなかった。けど、信じるしかなかった。

この虚しさはだんだんと怒りに変わる。

今も同じく、情け無い自分を責めて、希望なんてないのだと、またしても実感した。

「俺が....俺が....!」

震えた声で泣いた。

でも、ずっと泣いていても、何かが変わる訳じゃない。今泣いて悩んで、そのままにしておいたら意味がない。俺がやらなくてどうする。俺が、俺にしかできないことがあるんだ。

俺は立ち上がって、この世界から出る方法を探した。

高火力の魔法を放つしかないのだろうか....

一歩ミスれば、クレリアたちが吹き飛ぶ。

たった一発の失敗の許されない行為だ。

「....なんとかなってくれよ....!!」

そう願い、無詠唱で魔法をぶっ放した。

これでも、ヒビが二つしか入らない。

「まじかよ....手強いな....!!」

もう一度、無詠唱で魔法を放つ。あと少し、あと少しだ。

「これで仕留める....!なんとかなってくれ....!!」


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