EP25 終焉と紅き月...
「和人様、準備が完了致しました」
「分かった。出発だ」
「お、多い...!」
「そりゃ一万人だ。多いに決まってる」
「和人の言う通りだ」
「じゃあ!お前ら!今こそ!世界護る時!団結の時だ!行くぞ!」
「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「わ、わあ....」
一斉に進軍する。進軍によって発生した土煙は世界を守る意思を感じる。
サテウス西部、そこは俺らの向かう戦場で、そこには数々の魔物がいた。何がどうなろうと国内へ魔物を入れてはならない。たとえ1人になったとしてでも、国内へは、なんも関係のない人たちは、絶対に守る。
「行くぞ、ユズ、フィエール!」
「任せて!」
「ああ!」
戦闘開始。
かなりの数の魔物だ。けど、誰1人として逃げ出さなかった。
この軍を率いる長としてすぐに戦闘に参加はできない。少しでも戦力を上げて、国民を守りたい。そんな想いで、指揮をする。敵の強さと味方の強さ。どちらも瞬時に見分け、最適な行動を指示する。
かなり団結できているようだ。仲間と協力し、戦う者もいた。そしてそれをマネしていく者もいた。
これならきっと大丈夫、そんなことを思っていた直後だった。
地面が大きく揺れ、空に浮かぶ月は紅く染まる。
「...紅き月?!」
それはもう真っ赤に染まった。まるで純血のようなその月に怯える者は少なくなかった。
俺はそれを眺めていた。かつて見たものと似ている。
脳内で記憶の断片が重なる。今では無くした記憶、どうして今になってそれが出て来たのか分からないが、
きっと今はそんなの考えてる場合じゃない。
「やはり、予言は正しかった」
「予言?」
「ああ、原初の英雄アリス、彼女が死ぬ前も紅き月の夜だった。そしてその時彼女は言った。「また紅き月が大地を照らす時、世界が滅ぶ」
とな。終焉を見てからずっと思っていたが、まさか本当に起こるとは...」
「アリス...どこか懐かしい...」
先ほどの記憶の断片、それには女性のような姿が映っていた。顔は見えなかったが、美しく青く長い髪、
もしそれがアリスなら、俺はそいつと会ったことがあり、話したこともある...でも、なぜ記憶なのにアリスだと感じるのだろう?俺は世界を11個旅したが、そんな奴は見たことがない。
「ぐおおおおお!!!!」
魔物が叫ぶ。
今はそんなことを考えている場合じゃないな。
「フィエール、行こう」
「行くしかないさ」
「ああ!そうだn....ん?」
俺は何か気配を感じて、即座に振り返った。
目に映ったのは...終焉だった。
「終...焉....?なんでここに...」
「和人!魔物の様子がおかしい!」
「え?」
魔物を見ると謎のオーラに苦しんでいるようだった。
その苦しみが終わったと思ったら、次は凶暴化した。
「でも...終焉が...!」
「きゃあああ!!!!」
「ユズ?!大丈夫か?!」
ユズの傷口からは生ぬるい血が溢れていた。
なんとかギリギリ致命傷は避けたようだが、それでも回復に時間がかかる。
近くには魔物、背後には終焉...どうしたらいいんだ...
とりあえず、ユズを安全な場所へ運んだ。
「ユズ、ここなら安全だ。今回復魔法をかけてやる、大丈夫だ」
「う、うん、ありがと...」
なんとか血は止まった。その時気づいた。なぜか異様に魔法が使いにくいことに。おそらく魔力妨害か何かだろう。
ここはフィエールに任せて、俺が戦いに出よう。
「フィエール、ユズを頼んだ...しっかりと守ってくれ」
「...分かった」
意味深な間を開けてフィエールは返事をした。何かフィエールにも考えがあるのだろうか。
だが聞く暇もなく、すぐに戦闘へ向かった。
「せやああああああああああ!!!!!」
「おらあああああああああああ!!!」
至るところにいる魔物はやがて全員が暴走をし始めた。どうやら自分でもコントロールできてないようだ。フィエールもユズもいない、兵士も負傷、死者もいた。
こんなのはおかしい、俺らが、こいつらが一体何をしたっていうんだ...
ずっと戦っていた。
ずっと戦っていた。
【闇の真髄よ、胴を貫け】
たくさんの攻撃魔法も使った。
たくさん刀を振り下ろした。
そして、ついに刀が折れた。
「...どうしようもないな...もう」
襲われて死ぬのかと諦めかけていた。その時だった。
「せええええい!!」
エリア様が軍人を引き連れ、守ってくれたのだ。
「和人様、諦めてはなりません。絶対にここで抑えなければ、国民にも国民以外にも被害が出ます。中には死者もいるでしょう」
「エリア様、戦闘に行ってたはずじゃ...」
「想定の半数以下しか魔物がおらず、殲滅してこちらへ来ました」
「そ、そうか、その半数以上のそっちにいなかった魔物が、もしかしたらこっちへ来たのかもな」
「そう考えると、魔物には終焉の位置が分かるのかもしれませんね」
「多分、その考えで間違いないだろう」
「和人...私もう大丈夫だよ...」
「ダメだ。その岩陰で休んでろ。戦いたいなら、そこから遠距離魔法だけだ」
「でも、それじゃあ和人も軍人さんも...」
「私達は大丈夫です。休んでください」
「分かったわ...外すかもしれないけど、遠距離魔法で戦ってみる」
「ありがとうな」
さて...終焉も紅い月も、どうするか...




