EP22 これは抵抗じゃない、戦争だ。
起きた。
あと2時間で作戦開始。俺らの抵抗があと2時間で始まる。きっと勝てるよな。
「和人?おはよ」
「おはようユズ、作戦まであと2時間。調子はどう?」
「バッチリ!問題ないよ!昨日も休んだし」
「それならよかった。でも、決して油断するな。俺が引き返せと言ったら、たとえ身体を失っても生きて帰れ。分かったか?」
「う、うん...和人?何かあったの?」
「...少し嫌な予感がするんだ。何か、何かを感じるんだ」
「...どう言うこと?」
「何かを見落としてるわけでもない。ただ大きな気配を感じる。ものすごく強くて、怖くて、多くて...待て、フィエールは?」
「フィエールさんは寝て...いない...?」
「フィエールがいない...昨日は散歩に行っていた、でも今日は...」
「今日も散歩に行ったのかな?」
「そうだといいが、違うだろう。だってあいつは、鎧を着ていかないから...」
「鎧もないよ」
何かを感じていたのは、間違ってなかった。それはすぐに分かった。
外から誰かの足音がする。そして玄関が勢いよく開いた。そこにいたフィエールは、傷だらけで、鎧もほとんど壊れていた。
「和人!!大変だ!早く来い!」
「な、何が?!」
「話はあとだ!早く!」
「私も行く!」
「おう!」
俺はすぐに刀を持ってユズと一緒にフィエールについていく。ずっとかなりの距離を走って、見えてきたのは、沢山の...死体だった。
屍の上には、人型の魔物がいた。ジェネシスで見た魔物とも、この前の終焉で見た魔物とも、容姿が違う。アレから放たれるオーラは、汚れていて、擦れていて、それでもどこか悲しみに溢れていた。
人型の魔物は、こちらを見て、寄ってきた。
彼女は言った。
魔神「私は、終焉を司り、大地を汚し、海を呑み、空を食す者。さあ、愚かなる人の子よ、私にその命を捧げよ」
そう、彼女は魔神だったのだ。
「...ユズ、今すぐ引き返せ」
「でも!」
「さっき言っただろ!早く引き返せ!お前も、結愛も危ない!」
「わ、分かった。無理はしないでね!」
ユズが去って行った。
「エラルド...お前がこいつらを?」
「当たり前だ、人は皆、愚かだから」
「でもこんなの間違ってる!」
「ああ、フィエールの言う通りだ」
刀を抜いて、戦闘態勢に入る。でも勝てないかもしれない。
「フィエール、まずは様子を見てからだ、いつでも戦闘に入れるように、準備をしておけ」
「分かった」
「エラルド、お前は、魔神と言ったよな?つまり貴様は神の一種なのか?」
「いやいや、あんな愚かな遺伝子とは一緒にしないで欲しいですねぇ。私は魔神、魔物の神。“元”人間のあいつらとは違いますのでねぇ」
「そうか、エラルドよく聞け。今ここで1番愚かなのはお前だ」
「そうですかそうですかぁ...ククク、それはどうでしょうか?」
「どういう意味だ...?」
「そのままの意味ですよ。きっと貴方の方が愚かですねぇ、和人様?」
「ど、どうして俺の名を?」
「それは簡単ですねぇ、なぜなら、終焉を招いたのは貴方様ですからねぇ...愚かですねぇ、愚かですねぇ...!」
「貴様を殺す。今ここで」
「俺も同感だ」
世界を守る。俺はそう決めたから。今闘うのだ。
「フィエール!行くぞ!」
「ああ!」
大地を蹴り出し、空間を切り刻む。魔神ということは、もしかしたら、魔物を操れるかもしれない。だからできるだけ早く片付けないと。
「フィエール!気をつけろよ!」
「こんな時でも、仲間の心配をするとは...なかなか余裕があるのでしょうねぇ...ですが、貴方たちは勝てません。なぜなら、愚かな人間だからです...ハハハ!」
不気味だ。吐きたくなるほど不気味だ。
【世界に輝きあれ!】
魔法を放っても無駄だろう。そんなのは分かってるさ。ただ、少しの隙が生まれるのなら、話は別だ。
今放った聖力魔法でも、神相手じゃ到底効かないかもしれないがな...
「和人!攻撃が効かないぞ!方法はないか!」
「残念だが今はない!できるだけ時間を稼ぐんだ!今頃ユズが援軍を呼びに行ってるはずだ!」
ーその頃ユズはー
「はあ...はあ...」
(どれだけ走ればいいの?もう限界だよ!で、でも和人とフィエールさんが、まだ戦ってる!頑張れ私!頑張れユズ!と、とりあえず早く軍ところに行かなくちゃ!)
「きゃあ?!」
転んだ。脚が血まみれになっていく。
「痛い、痛いよぉ。助けてよぉ」
結愛ちゃんが心配だけど、和人たちの方がもっと心配。大切な人を無くすなんて嫌だ。絶対に嫌だ。
「い、行かなくちゃ!」
再び走り出す。目の前の未来に向かって。
ずっとずっと走って、やっと基地が見えてきた。
「あ、あの!誰かいますか?!」
「どうしました?」
「はあ...はあ...あの、国の外で魔物が出てきて!えーっとそれで、今!フィエールさんと和人が!戦ってて!」
「フィエール様?!それに和人様も?!分かりました!連隊長に伝えて参ります!」
「は、はい!ありがとう...ございます!」
よかった...無事に呼べた...和人...頑張って...!
「伝えて参りました。貴女様は、こちらの馬車へお乗りください。我々がしっかり護衛します」
「で、でも!まだ結愛ちゃんが!宿に!」
「分かりました。では、結愛様のお迎えを先に」
「ありがとうございます...!」
私は、軍人さんと結愛ちゃんを迎えに行った。
「ユズお姉ちゃん!うええん!怖かったよぉ!」
「結愛ちゃん!無事でよかった!」
「貴女様は、和人様のお仲間ですね?」
「は!はい!」
「では、国の中央部へ、そこで我々が保護します」
「分かりました」
勢いよく馬車が動き出す。馬車に揺られながら、気づいた。空が紅いことにー
ー和人たちはー
「和人!このままじゃ2人とも死んでしまう!早く逃げよう!」
「いや!だめだ!ここで逃げたらこいつは国の方に来る!」
逃げちゃダメ、逃げちゃダメ。心の中で唱えながら、刀を振り、魔法を放ち、刀を振り...これを繰り返している内に気づいた。こいつにも弱点はあるけど、たとえ弱点を狙ったとして、ひるんだ時間がとても短い。
これより大きな魔法を継続して放たなければ、勝ち目はないだろう。
「奴の弱点は炎魔法だ!できるだけ長い時間高威力の魔法を放て!」
「ククク...まさか見破るとは...面白くなってきましたねぇ...で・す・が、私にもやることがあるのですのでぇ...そろそろ、本気を出させてもらいますねえ?」
「な、何が来るんだ...!」
「魔物だ!それもたくさんの!」
「は?...こいつだけでも大変なのに...これ以上かよ...」
そして、の背後から、数多の魔物が一斉に出てきた。それも強い悪魔の部類も、スライムも。
「う、嘘だ....こんなの...酷いだろ....」
ああ、どうすれば....
「でも、諦めない...!」
「ただ、無理だけはするでない、無理なんてしたら、諦めたくなくとも、諦めざるを得なくなる。つまり、それは死を意味する。貴様も、死の概念は一応あるだろう?」
「知ってたのか...ったく、何もかもお見通しだな」
「実は、昔母が言っていた。救世主は、日出る国から現れる。とな、それ以外にもたくさんの予言を教えてくれた。そして最近、その予言は誰の話なのか、それは和人だと思ったのだ。刀を使い、魔法を使い、明るく、頼もしく、強く、誰よりも優しくて勇敢で、自分のことを二の次に考えられる貴様以外、いないと思ったのだ」
「そうか、それもそうだな」
「さあ、私たちの、抵抗を始めよう」
「...いやこれは“抵抗”じゃない、“戦争”だ」




