EP19 世界は...残酷だ...
こんな世界でも、人々は戦争をしている。
中央王国サテウス・ルザーの隣に位置する、
クラリス魔国連邦。たくさんの魔人などがいる多種族国家で、13の地域から成り立っている国だ。
そしてその東方に位置する国、ザレットジョール帝国
ザレットジョールは、ほとんど人間で、差別などが激しい国家である。その2国間で、戦争が勃発しているそうだ。北方7国同盟の領地、アストリアに行くまであと4日その間に、この2国と協力しなければ。
「どうすればいいんだ...」
「戦争を止める...そういえば、なんで戦争をしてるの?」
「ザレットジョールによる、差別や妨害行為だ。クラリスは、それから国民を守るため、戦争を始めた。クラリスはただの被害者だ。それなのに、ザレットは被害者面をしている。私は、全てを許せない」
「差別か...」
「こんな世界でも、差別があるんだね、私たちのいた世界でもこの世界でも、人間は変わらないんだね...」
フィエール「...そちらの世界でも、差別があったのか?」
「うん、私の生まれた時はだいぶマシになってたけどそれでも差別はあった、でも、昔はもっと酷かった」
「問題は差別以外にも、沢山ある、戦争もそうだし、この世界にはない、地球温暖化というものもあった、他にも、海洋汚染や大気汚染など様々な問題が発生していたんだ」
「地球温暖化?大気汚染?海洋汚染?とはなんだ?」
「うーん、分かりやすく言うと、環境が悪くなって、人や動物、それに植物などが住めなくなったり、死んでしまったりするものだ」
「そうか、どうやらエールとは違うようだな...いつかそちらの世界に行ってみたいものだ」
「いや、行ってみたいんじゃなくて、行くんだけどな」
「ど、どうゆうことだ?」
和人「あれ?言ってなかったけか、お前も一緒に俺らの世界の終焉を消しに行くんだ」
「ちなみに、そちらの世界の様子は...?」
「終焉が来るまで発展した国とかは、学校に全員行けたり、あとはパソコンとかスマホとかが色々あったよ」
「終焉が来てからは、全員消えた。俺とユズ以外はな、結愛はどこからか来た。召喚のようなものだと思う。まあ、詳しいことはあとだ。今は、この世界について考えよう」
「そ、そうだな」
「うん」
「え、えーっと...??」
「結愛、そこらへんで遊んでてもいいぞ。ただあまり遠くに行くなよ。魔物がいっぱいいるぞ」
「やったー!」
「...よし、話の続きだが...」
「クラリスとザレットの戦争、それをどう止めるかだよね...1番いいのは交渉だろうけど...」
フィエール「ザレットは、おそらく鉄が足りていない。だから鉄を輸出、その条件として、一時的な停戦をしてもらおう」
「それはいいのだが、クラリスは?」
「獣人とかがいっぱいいる多種族国家...」
そこから数時間、会議は続いた。だが、特に話もまとまらず、無駄な時間を過ごしただけだった。
気がつけばあたりはすっかり暗くなり、結愛は隣で寝ている。今日はここで野営でもしようか。
「ユズ、今日はここで寝よう」
「うん、でも、ホテルは?予約してるんじゃ...」
「今日を入れて4日、あのホテルに泊まる予定だと伝えていた。ただ同時に1日くらい空けるかも知れないと伝えておいたんだ。だから問題ない」
「そっか、分かった。テントを持ってきたのは、そういう理由だったんだね」
「私はどうすればいいのだ?」
「もちろん、お前の分もある」
「...感謝する」
「礼はいいが、金なら受け取るぜ」
「フィエール、これは冗談だよ。惑わされないで」
「そうだな、10万キリル貰ったし」
「全くお前ってやつは...」
「さて準備して早く寝ようぜ、疲れたわ」
「うん、結愛ちゃんは任せて」
「何サラッと楽な方を選ぶんだお前は...まあいいけどさ。じゃ、結愛を任せたぞ」
「私も手伝おう」
「ありがとよ」
2人でテントを建てていた時、フィエールに言われた。
「和人、貴様は、ユズとどういう関係なのだ?」
「うーん、恋人同士って感じ?でも付き合うのは、終焉を消してから、そう2人で決めたんだ」
「恋人同士...つまり結愛は、貴様とユズの...」
フィエールが照れながらこっちを見て言う。
「ち、ちげえよ!俺たちの子供じゃない!」
「そ、そうだよな、すまなかった。何はともあれ、2人ともすごく仲良しで似合っているぞ」
「...ありがとな」
軽く周りを整えて、ユズに言いに行く。
「終わった?さっき大きな声がしたけど、大丈夫?」
「問題ない、テントはできたぞ、そういえば飯を食っていなかったな」
「食料なら、すぐそこに狩場がある。そこで集めよう」
「新鮮な肉か!いいじゃあねえか、ユズはどうする?俺は行くけど」
「私は結愛ちゃんを守らないと、なにかあったらいやだし」
「いや、私1人で行く、和人はここで休んでていい」
「え?でもいいのか?自分で言うのも何だが、俺強いぞ?」
「私は英雄と呼ばれる者だ。心配いらん」
「そ、そうか、大丈夫ならいいが...」
「ありがとね!フィエールさん!」
フィエールに任せて、ユズの隣に座る。気づけば、フィエールはもうすでに向かっていた。
フィエールに聞かれた俺とユズの関係、それをはっきりとさせたい、勇気を絞って、聞いてみた。
「なあ、ユズ」
「ん?どうしたの?」
「俺たちの関係って、なんだと思う?」
「関係?...うーん恋人同士、じゃないかな」
「よかった。俺と一緒だ」
「なんでそんなことを聞いたの?」
「さっき、フィエールに聞かれてな。それで俺も恋人同士って答えたんだが、怖くなったんだ、もしユズと意見が異なったらって、だから聞いたんだ」
「...和人とは完全に一致って訳ではないかも」
「え?」
「私は和人の“恋人”じゃなくて“嫁”がいいの、でも付き合うのも結婚するのも、終焉がなくなってからって決めたから。まだ”恋人同士“でいいよ」
「そうか、そうだな、俺も恋人じゃなくて、ユズの旦那がいい」
「ふふふ、嬉しい」
「それと、もう一つ話があるんだ」
「なに?」
「...結愛のことだ」
「結愛ちゃんのこと?」
「ああ、その...信じられないかも知れないが、結愛は、転移者でも転生者でもない、召喚された訳でもない。結愛は、可能性因子っていうものを持っていて、この世界も俺らの世界も救う為に産み出されたんだ。だから、この子には親も名前も、存在しない。在るのは、知らない誰かの、掠れた記憶だけだ」
「それってつまり...」
「多分、終焉が消えたら、この子も消える...」
「嫌だ。嫌だよ。そんなの、ひどいよ」
「まだ調査段階だから、本当かどうかはわからない、この話は内緒にして、心の片隅に入れておいてくれ」
「うん、でも、どうにかなる方法はないの?結愛ちゃんが消えない方法が...」
「分からない、けど必ず見つけ出す。だってこの子は、結愛は俺らの娘みたいな存在だから」
「うん、そうね」
結愛は、消えるかも知れない。それは、絶対に許さない。俺が必ず結愛を救って見せる...
「和人!採ってきたぞ!」
「おう!ありがとうな!」
「...あ、ありがとうね」
ユズ...やっぱそうなるよな。娘が消えるかもなんて言われたら...これでよかったのかな、いやでもこうするしかなかったんだ。どうしようもないことなんだ。
「...じゃあ、焼こうか」
そう言って立ちあがろうとした瞬間、ユズに服を掴まれて、勢いよく腰を降ろした。いや降ろされた。
ユズは、俺を座らせてすぐ、抱きついてきた。
「...」
ユズが何も言わない、俺は、なぜこうなったか察した。
「...私がいない間に何かあったのだな。仕方ない、私が焼いてやろう」
「あ、ああ、ありがと.....う」
...俺はどうすればいいんだろうか。
いや、俺にやることはただ一つ。謝ることでもない。
...
「ユズ、大丈夫だ。俺が、必ず結愛を救ってやる。だから、だからお前は、結愛を心配させないように、結愛を悲しませないように、協力してほしい」
「...うん、そうだね...それ以外、出来ることはないもん...」
涙を流しながら、上を向く。今初めて、ユズの涙を見た。
「もうすぐでできるぞ」
「今すぐ行くよ!ほら、ユズ、前を向こう?」
「....うん!」
「ん...ん?ごはん?」
「結愛、もう夜ご飯の時間だ。起きな、今日は焼肉だ」
「焼肉...焼肉?やった!」
まだまだ、こいつには子供らしさがある。
こんな子だからこそ、守りたいと思えるのかな。
今になって、父さんの気持ちが分かる気がする。
父さんは、明里の病気の為に、沢山の壁を出した。結果、俺らは貧乏になったが、それでも、明里が元気でいた。そんな辛い状況でも、輝きがあるんだな。
俺が16の時に、交通事故で亡くなったが。今でも覚えているよ。
ー翌日ー
フィエールが起きてこない。もう結愛もユズも起きたというのに。と思っていたら、やっと出てきた。
「もう...朝か...?まだ寝たい...」
いつものフィエールからは想像できない姿で、テントから出てきた。すごく疲れていたのか、眠そうにしている。
「もう、朝...というか昼だ。疲れてたのか。どうだ?ゆっくり眠れたか?」
「ああ、ゆっくり眠れた...にしてもこの寝袋、心地よいな」
「高いのだからね!」
「払ったのは俺だがな...」
ユズも、元気そうだ。
さて、一度王国に戻ろう。
 




