EP 18 世界のための選択肢
目を開けると、俺は実家にいた。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
「...あ、明里?ここは家?どうして俺はここにいるんだ?」
「どうしたの?お兄ちゃん」
「い、いや、何でもない、元気だったか?」
「うん!」
...どうして、俺はここにいるんだ?どうして、俺は明里に会っているんだ?
「明里、和人、買い物に行ってくるわね。いい子にしてなさいよ」
「母さん...俺を何歳だと思ってるんだよ...もう18だぞ...」
「そうね、じゃあ行ってくるね」
ここは夢なのか?それとも現実なのか?別の世界線を見ているのか...?
分からない、何にも分からない。
「お兄ちゃん?何かあったの?」
「ん?いや明里と会えて嬉しいなーって思ってな...!」
「うん、うれしいけど、手が震えてるよ...?」
「え...?」
本当だ、気づかなかった。俺の手は震えていた、まるで凍えているように。
「大丈夫だよ、明里。心配しないで」
「本当に?う、嘘じゃないよね?」
「ああ、大丈夫だ、お前のお兄ちゃんだからな」
「わ、私にできることがあったら行ってね..」
...どうせ、今いるのは現実じゃない、なら、できないことをやろう...
「じゃあ、そこに座って目を瞑って」
「こう?」
「そうだ、そのままでいいよ」
「うん...」
俺は、そっと明里を抱きしめた。明里の小さな体から、どこか優しい暖かさを感じる。気づいたら、俺は泣いていた。
「明里、今、お前は幸せか?」
「うん!すっごく幸せ!」
「そうか、ならよかった」
涙を拭いて、我慢して、明里の顔を見る。
「でも、お兄ちゃんが学校に行ってくれたらもっと幸せ!」
「そうか、お前は、優しい子だな」
そういえば、俺は学校にしばらく行ってなかった。
不登校だったんだ。いつも家で寝るかゲームをして気を和らげていた。そうでもしないと、あの時の俺は、真顔になることすらできなくて、ただただ泣き続けることしかできなかった。
あの時の俺は、全てに希望を見出せず、ただ苦しみながら生きていただけだ。父と二人暮らしだったが、父は仕事で忙しかった。だから寂しくて、母さんにお願いをした。月に一度でいいから、明里と会わせてくれ
と。明里はほとんど病院にいた、でも俺と会う日だけ、家にいた。明里の病気は、不治の病で、名もない、謎に包まれたものだった。それを知った明里は、
医学者に血液などのサンプルや情報を送っていた。
けど、それのせいで、明里はだんだんと衰弱していっている。
「急に黙ってどうしたの?」
「ああ、ごめん、考えごとをしてて」
「そっか!」
「うん」
明里「お兄ちゃん!見て見て!みんなを描いたの!」
明里の手元には、アニメ風に描かれた家族のイラストがあった。なぜアニメ風に描いたのかはさておき、
めっちゃ絵が上手くなっている。そのイラストの右下には、文字が書いてあった。
「いつまでも仲良く居ようね!」
と、力強く書かれていた。
「...お、お前...よくやったな!めっちゃ絵上手いじゃねえか!」
「えへへ!ありがとう!」
「うん」
「いつまでも仲良く居ようね...」
「明里?」
明里の様子が変だ。明里に何が...
「でも、もうできないんだよね...」
「どう...いうことだ?」
「もう終焉は、最終フェーズに突入しかけてるよ、お兄ちゃん。コスモスも、エールも、もうすぐ消えちゃう」
「そうだな、俺が悪いんだ...」
「お兄ちゃん...でも、この世界を守れるのはお兄ちゃんしかいない!だから!お兄ちゃんが何とかして!」
「ああ、そうだな、約束する」
「うん!じゃあ目を覚まして!」
目を開ける、明里の言葉が蘇る。
この世界を守れるのは俺しかいない。
どうにかできるのは俺しかいない。
終焉はもう最終フェーズへ突入するだろう。
...できるだけ早く、動かなければ。
隣に寝ているユズと結愛を起こして、サテウス軍のところへ向かい、会議、の予定だったが、急遽明後日に延期。
今できるのは情報収集だけだ。俺は3人を連れて、王国の外へ出て、周辺の情報を集めることにした。
「よし、いいかお前ら」
「うん!」
「私も大丈夫」
「ああ、問題ない」
「終焉は、もう直ぐ最終フェーズへ突入する。
それがどういうことなのか、言わなくてもわかるだろうが、終焉が本当の力を出して本格的に、世界を滅ぼしにくる」
「サテウス軍だけでは、足りないのでは?」
和人「そうだ、サテウス軍だけでは足りないんだ」
「サテウス軍って確か、7万くらいだったよね?それでも足りないの?」
「戦場で何が起こるか、予測はできても完全にわかる訳ではない、それに予測と言っても、魔物の種族や数くらいしか分からない。そのままで行くのは危険で、致命的なダメージを負いかねない」
「じゃあどうするの?」
「...方法は、サテウス・ルザーだけじゃない、他の国の軍人や人々の力が必要だ。それに加えて兵器などが有ればなお良しだ」
「すまないが、その考えは実現できないかも知れん、サテウスは大丈夫なのだが、他の国が戦争をしていてな...」
「戦争...」
「なら止めるまでだ。今、世界に必要なのはたった一つ、協力だけだ」
「でも、それは...」
「それ以外、何があるの?何にも方法はないでしょ?今、この世界で1番終焉に詳しい和人に任せるべきだよ」
「ユズお姉ちゃんの言う通りだよ!!フィエールお姉ちゃん!」
「...それもそうだな、和人、貴様に協力しよう」
「ありがとう、3人とも!」
戦争...この世界でも、人間は変わらないんだな。