EP17 救世主
いつ魔物が出て、増えたのか分からない、気づけば、魔物は100体を軽く超えていた。まだ話したこともないのに、フィエールはユズを守ろうとしている。
魔物が次々に増えていく。速く、速くもっと速く、刀を振れ、その肉体にその魂にその記憶に、痕跡を残せ!絶対に忘れないような、そんな傷跡を残せ!
「フィエール!お前を信じる!そっちを任せた!」
「ああ、任せろ!」
魔物の体液が、辺りを染め上げる。魔法を...
【精霊の力よ!!】
上級魔法でも、魔物は増え続ける。残念ながら、浄化魔法は上級までしかない。
想定内、それだけでも良かったのかもしれない。
どうすれば、どうすればいいのだろうか?
より強い魔法を使いたいところだが、タイミングがない。隙があれば...いや、俺がやらないといけないわけじゃない、今、ユズはこっちを見ている。どちらにせよ、これ以外方法がない。
「ユズ!俺が隙を作るから、その間に攻撃魔法を撃て!」
「う、うん!」
「1番強いやつだ!外してもいい!隙ができたら合図する、今のうちに溜めておけ!」
そうだ。人間は1人じゃ生きれない。誰かと協力することが必要だ。取り敢えず、今は隙を作ることに集中しよう。
フィエールの方を見る。
さすがは英雄だ。研ぎ澄まされた無駄のない動き、適切な魔法の選択をしている。
隙を作る、それはかなり難しいことだ。
でも、あと少しでできるはず。
いくら魔物を殺してきたのか分からなくなるほど、魔物を殺してやっと隙を作れた。
「ユズ!今だ!撃て!」
「任せて!」
高威力の魔法のレーザーが真横を過ぎ去り。魔物を消していく。
ユズが作ってくれたこの瞬間を利用して、魔物との戦いを逆転する。体が疲れきる前に、全てを消さなければ。
「和人!私も戦う!」
「私も!」
「分かった!ただし無理すんなよ!」
結愛とユズが参戦した。どちらも物理攻撃はできないが魔法は一般人よりもかなり使える。
人数はかなり劣っている。けれども、戦力で言ったら、こちらの方が数倍上だ。
これなら勝てる!
世界中で終焉が確認されている頃だ。何ならすでに被害は出ているかもしれない。だから一刻も速く終わらせなければならない。
「て、敵が多すぎるよ!」
「でもやるしかねえ!」
ずっとずっと、戦闘を続け、ようやく終わりが迫ってきた。何時間戦っていたのだろうか?大地が輝く頃、戦闘が終わった。
「よくやった、ユズ、結愛、そしてフィエール
ありがとう。思ったより、戦いは長引いたが、それでも倒せてよかった。終焉も一つ消せたしな」
「う、うん、そうだね、私もう疲れちゃった...」
結愛はぐっすりと眠っている。戦いが終わって、俺がユズのところへ来た時にはもう、ユズの上で眠りについていた。
「貴様が何者かは私は知らないが、感謝する。だが、先ほどの戦いで、全てを知っているようだった。大人しく白状しろ、貴様の言う、『終焉』とは何だ?」
「分かった。敵対するつもりもない、俺は和人、こいつがユズ、寝てんのは、結愛だ。俺らは別世界から、終焉を一緒に消す仲間を探しに来た。そして、あの終焉というのはだな...と、いう前に、一つ条件がある」
「条件?」
「ああ、それは、俺らの仲間になれ、そして俺らについてこい。一緒に終焉を消すんだ」
「...分かった。だが、相応の報酬などはでるんだろうな?」
「この世界と、俺らのいた世界の...“平和”だ」
「なるほど、この世の民だけでなく、そちらの民も幸せになるのなら良いだろう。そちらの世界の人数は?」
「およそ80億、と言ったところだ。何なら80億をすでに軽く超えている」
「は、80億?!エールの800倍ではないか!...す、すまない、あまりにも大きい数字で取り乱してしまった。そんなに多くの民が救えるのなら、喜んで行こう」
「ありがとな、交渉成立だ。じゃあ終焉についてだが」
「うむ」
全てをフィエールに話した。
”終焉が来たのは俺のせい“ということだけを隠して。
話終わった後、フィエールに王国へ案内された。
アリスト大陸の中央にある。大陸の管理などを行う、大陸1の大国、サテウス・ルザー中央王国。
俺ら3人は、フィエールについていく。どうやら、ここに、かつての仲間がいるそうだ。フィエールはそいつらにも交渉をして、仲間として終焉に立ち向かおうとしているのだろう。宿を紹介してもらった、費用なども王国が負担してくれるそうなのでお金の心配はない。俺らはフィエールがかつての仲間に話をしている間に、宿で休むことにした。
2日後フィエールが宿にやってきた。しかし、フィエールの仲間たちは協力してくれないと言ったそうだ。
でも1人、フィエールだけは協力してくれると言った。今の俺らにとってたった一人でも救世主と言える。
その後、女王である、レザー・エリア様に報告をし、
世界とこの世界の終焉に関する情報を得た。どうやらもう8個確認されているそうだ。北方7国同盟の領地、アストリアに行き、滞在、終焉の調査や終焉の破壊をするということは伝えているようで、サテウス軍と共にそこを目指す。
なぜだか分からないが、この世界の通貨であるキリルを、約10万もらった。この硬貨はおそらく純金だ。一円玉の約2倍という大きさで、この量だ。日本円にしてもしなくても、この価値は測り知れないだろう。