EP12 終焉ノ鐘
ライティーメイル、アルト村....この少女が正しいことを言っているとは限らない、けどもし本当なら....
「ユズ、少し話をしよう」
「え?あ、うん」
「悪い、君は少しそこにいてくれるかな?」
「....はい」
俺らは場所を変えて話した。
「色々と言いたいことはあるが、あの少女の言ってること、ユズはどう思う?」
「うーん、あの子、嘘ついてるようには見えなかった。異世界転移....だと思う」
「まあ確かにそうだな」
異世界転移、今までそんなことは見たことがない。
頭の中で様々な憶測が飛び交う。そんな時だった。
外で大きな音が鳴る。俺はすぐにユズに少女のところへ行けと命令し、周囲の状況を確認しに外へ出た。
空を見上げる。空から大きなガラスの破片のようなものが地面に向かって降りてくる。ところどころ、小さな輝きが見える。
「.....あれは?....人か?」
100メートルくらい離れた場所に先ほどの輝きが落ちてきた。その影は人のようなものだった。人間だったら、生きていることを願って走り出す。
ああ、予想は当たってしまった。
目立った外傷はない、でも、もう遅い。死因は詳しく分からないが「高所からの落下」ではなさそうだ。
おそらくだが、あの少女も、このようにしてここにきたのだろう。
「和人!」
振り返るとユズが走ってきていた。その後ろには少女もいた。
「待ってろって言っただろ?!」
「だって、帰ってくんのが遅くて心配だったんだもん!」
「そうか....」
「......この人....」
少女が、落ちてきた人を眺める。
「何か知っているのか?」
「こ、この人は知らないけど、私もこんな感じだった....から.....」
こんな感じ....どうやら、空から降ってきたのは間違いないみたいだ。いやよく生きてたな。それも無傷で。
「もう....生きてないの?」
「ああ..残念ながら」
「....」
「どうしようもなかったんだ....この人の墓を作ってくる....」
“終焉ノ鐘”が鳴る。それはつまり、全宇宙の終焉を意味する。
問題は、これが更に強くなる可能性だ。今はまだ始まったばっかだ、でも、その始まったばっかというのがこれより先もあるというのを意味する。
そんなことを考えながら墓を作った。墓といっても、かなり質素なものだが。
作り終わってから、ユズとまた話をした。
「....和人..本当に大丈夫なのかな.....?」
「大丈夫だ。俺が絶対に終焉を消す」
「うん、和人ならできるよ」
「ありがとう......ユズ、あの子のことだが....」
「....」
「名前をつけてあげようと思う」
「え?」
「あの子は自分には名前がないと言っていた。でも、自分の出身地や親を覚えていたから、記憶喪失ではなさそうだ。それにさっき、墓を作る前に彼女は言った、私もこんな感じだったとな。以上が理由だ」
「うん、いいと思う」
ユズは快く納得してくれた。
「名前、どうしよっか....」
「.....愛とか?みんなを愛してくれますようにって願いを込めて....どうかな?」
「それなら、結ぶ愛と書いて結愛にしよう、意味は、人々の愛を結ぶ」
「いいね!」
我ながらいい名前を思いついたと思う。あとは本人に確認しよう。
「君、ちょっときてくれないかな?」
結愛が反応してすぐこちらにきた。
「君の名前は今日から、結愛だ」
「結愛ちゃん、かわいい名前でしょ?」
「結....愛....かわいい....」
良かった。いやだ!とか言われたらどうしようと心配だったが、その心配はないようだ。
「ありがとう!ユズお姉ちゃん!」
結愛がユズに抱きついた。嬉しそうで何よりだ.....
(((.....俺は?)))
少し悲しくなったがまあ結愛が喜んでいるんだからいいだろう。
「嬉しそうなとこ申し訳ないんだが、この先について話そう」
「う、うん」
「さっき、お前らも見ただろうが、状況が悪化した。あのガラスのようなものは”終焉ノ鐘“と呼ばれるものだ」
「終焉ノ鐘?」
「なにそれ?強そう」
「詳しくは俺も知らない、なぜなら、見たことがないし、少しあった知識ともかなり違うからだ」
終焉ノ鐘、それは、世界だけじゃない宇宙にまで広がる終焉の一種で、終焉の中で最も強力な存在だ。
「でもあの時起きたのは終焉ノ鐘だけじゃない。あの時、空に微かな輝きが幾つもあった。それは、世界ノ結合を意味する」
「世界ノ結合?ってなに?地球と地球がくっつくの?」
それが起きてたら文明どころか地球が消滅してるぞ。
「いやどういう状況だよそれ。そんなことは置いといて、世界ノ結合とは、パラレルワールドが一つの世界にまとまったということだ。〇〇があった世界線とか〇〇をしなかった世界線とかがぶつかり合ったわけだが、それが厄介でな。世界には必ずハッピーエンドの世界線とバッドエンドの世界線がある。今回結合したのが後者、バッドエンドの世界線だ。それがどういうことかわかるか?」
「うーん、この世界は絶対バッドエンドになるってこと?」
「惜しい!実は絶対というわけではないんだ」
「絶対にバッドエンドじゃない....ハッピーエンドはあるけど、確率が低い、もしくは、それなりの代償
があるってこと?」
「その通りだ。その代償が何かは知らんが、とてつもなく重いのだけはわかる」
「じゃあ..どうすれば.....」
「実はパラレルワールドにもパラレルワールドは存在する。つまり、この世界ノ結合後の世界のパラレルワールドからハッピーエンドの世界を探すんだ」
「なるほど....」
「.........」
眠くなってきた。そんな疲れてるかな?
「よくわからないけど、もう寝よ?」
「それもそうだね!」
(ナイスタイミングだ結愛)
「じゃあ俺は今日床で寝るな」
「ダメ、3人でベッドで寝る」
「え?!」
「....っていつもしてたか..」
「そ、そうね....」
やったあ、一回も床で寝ずに済むー。ウエーい。
うん、寝よ。
明日から忙しいなー。