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終焉に終焉を。  作者: 終焉を迎えたTomato
第一章 未来の守護者
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EP1 終焉の始まり

結局、人間は過去を忘れてしまう。それがどれだけ美しい記憶でも、どれだけ憎い記憶でも、いつかは色褪せて、何かと混ざってしまう。

たとえ、それが歴史を変えるようなことで、偉人として教科書に載ったとしても、確実性に欠け、その記録が覆されたり、別のものに置き換えられたり、捏造されてしまう。記憶とは、記録とは、思い出とは...そういうものだ。


たった一人、俺だけを除いて。

俺はいつまで悩めばいいのだろうか...

いつまで過去を憎んでいればいいのだろうか...

 俺がこの世界にきたとき、終焉もこの世界に現れた。

 場所は東京。

 空は赤く染まり、朽ち果てた人々の体は塵となって消えていく。

 かつてあったあの栄光も希望も夢も、記憶でさえも無に帰して行く。

 天は悲鳴をあげ、海は静かに泣き、大地は眠りながら叫んだ。

 崩れ堕ちて行く建物も、最後の力を振り絞った自然に飲み込まれて行く。

 もうこの世に、文明などない。生命ですら、存在しない。

 まだ一部のみであるものの、その力は瞬く間に広がるだろう。

 俺は、この世界に、選ばれたのか。選ばれなかったのか。


 この世界を救う。それが目的できたわけじゃない。けど、俺のせいで世界は終焉を迎えたんだ。俺がなんとかしなくてどうする。

 もうすでに、崩壊は始まっているようだ。血のように赤く染まった空。崩れたビル。崩壊していく重力。


 とても大きな爆発音とともに、地面に叩きつけられる。

 視界が失われていく、だんだんと暗くなり耳鳴りも大きくなる。


 そして体感時間で4時間ほどした頃声が聞こえた。

「....ですか?!......大丈夫ですか......?!」


 誰かの声が聞こえる。


「......ここは?」


 さっきまで崩れたビルの中にいたはずだ。それなのにいつしか綺麗な天井の下にいる。


「起きましたか!?良かったです!!」


 知らない少女が俺の手を握り締め横に座っていた。


「君は?それにここは何処だ?なぜ俺はここにいる?」


「あ、私はユズです!」


 突然の自己紹介でビビるわ。せめて前置きをくれ。


「えーっとあなたはビルの中に倒れていて、こんな状況なので、この臨時治療施設に運ばれました」


「そうか....まあ、ありがとう....俺の名前は和人、よろしくな」


「はい!よろしくお願いします!和人さん!」


「敬語じゃなくていいし、さん付けじゃなくてもいいよ」


「あ、はい、えーっと、じゃあ、和人君.....」

 ユズは少し顔を赤らめて言った。


「そういえば、今外はどうなってる?」


「今、外は大変なことになってる。人々は狂い、建物

 は崩壊し、瓦礫に挟まれ亡くなる人や友人、家族と離れ離れになる人が.....」


 少し考えて、独り言をこぼした。


「.....そうか、ならもう行った方がいいな」


「行くって、何処に?」


「もちろん、助けに行くんだよ」


「だ、だめよ!まだ傷が治ってないじゃない!」


「それでも、行かなくちゃだめなんだ」


「俺のことは心配しないでいい、似たような事は何度も経験してるから」


 俺なら大丈夫。だって....


「それでも、だめ」

「....なぜ君はそんなに俺のことを心配するんだ?」

「.....もう苦しむ人を見たくないから............」


 彼女は少し間を開けて言った。少しずつ涙を流す。


「そ、それは、悪かった。」

「もう少し休んでもいいかな?ここで」

「こんな時に休んじゃダメなんて言う人はいないでしょ」


 ユズのこの優しさを断る訳にはいかない....何より断りづらい。

「ありがとう、じゃあ少しだけ寝させてもらうよ」

「おやすみなさい」

「うん、おやすみ」


 俺は目を瞑る。できるだけ早く体を治して、人々を救わないといけない。なぜなら俺のせいで、崩壊が始まったのだから、俺のせいでたくさんの人々が苦しみ、悲しんでいるのだから。今日はもう早く寝よう。

 ....声が聞こえる。たくさんの悲鳴が、街中に響く。


「.........私も.....早く..........しないと.....」

 ユズが何かを言った。ガラスのなくなった窓の外を見ながら。


 どうすれば、世界を救えるのだろうか。

 どうすれば、終焉を終わらせることができるのだろうか。

 少し寝ながら話すか、これからの“世界”ことを。


「なあ、ユズ」

「どうしたの?」

「君はこれからどうするんだ?」

「きっとこの施設で過ごすんだと思うよ」

「....外に行きたいとは....外に行ってもっとたくさんの人々を救って、終焉を終わらせたいと思わないのか?」


 俺は質問をした。殆どの人は、『それはできるならしたいけど、でも怖くてできない』と言う。まあ確かに言われてみればそうかも知れない。


「そう思ってるけど、でも、お母様が.....だからできないの」


「お母様に何かあったのか?」

「お母様が、起きない、ずっと昏睡状態なの」


 少し俯いて言った。


「昏睡....状態.....」

「それは、終焉の影響か?」

「正確には、終焉によって崩れた瓦礫が、お母様に直撃したの。その時私は学校で急いで帰ってきたら..お母様が倒れてて....」

「そうか、それは辛いな」

「うん......」


 回復魔法を使えば、治るかもしれない。治らなくともやる価値はある。


「ユズ、そのお母様のもとへ、案内してくれないか?」

「え?」


「治るかもしれないんだ。必ずできるとは限らないが、やってみる価値はある。」


「.....分かった」


 下を向いたユズの後についていく。かなりの時間階段を降りて着いた。扉の向こうには傷だらけの若い女性がボロボロになったベッドで寝ている。


「この人が、君のお母様?」


「うん、眠ってからもう2週間経っているの」

「分かった。大丈夫、きっと治る」


 身体中に包帯を巻いたお母様の上に手をかざす。


「.....ヒール・レスト」


 手のひらから輝きが出る。やがて、お母様全体を覆い。霧のように消えていく。そして、肌が見えた瞬間分かった。成功だ。


「.........」


 ユズは状況を理解できてない。それもそうだろう。だって今まで魔法をみたことがないのに、いきなり目の前で使われるのだから。


「良かった、成功だ。これで、あとは目が覚めるのを待つだけ」

「か、和人君、今のは?」

「今のは、上位回復魔法だ。」

「まほ、う?」

「そんなものこの世界にないよ?」

「"なかった“んだよ。終焉と同時にこの世界にやってきた」

「私も使える?」


 ユズが目を輝かせていった。


「ああもちろん、誰でも使えるよ。さ、戻ろっか」

「うん」


 現在時刻1時52分、深夜だ。もう寝なければ、傷の治療に支障が出る。まあ、魔法で治せるけど。

終焉....なぜか分からないが、今までの終焉とは少し違う気がする....

気のせい....だよな....?

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