1
「何なの、そのはしたない服は!」
お母様の声が屋敷中に響いた。
いつもは忙しく出歩いていて、こんな時間に家にいることのないお母様と鉢合わせした私は、街で友達と一緒に買ったワンピースを着ていた。
今流行っているという、軽くて着ていてとても楽な服。今日はクラスのお友達とグループデートに誘われていて、みんなこの服で行くことになっていた。
普段着ている首も手首もきっちりと隠された服。何枚も重ねて重い生地。縛り上げるようなコルセット。それが貴族の「礼儀」だと言うけれど、伯爵家のご令嬢だって時代遅れだと言っている。いつもお母様の用意してくれた服を着ているけれど、もっと自由な格好をしてみたかった。それなのに…
「そんなに胸元が広がって、体にサイズが合ってないじゃない。生地もいかにも安物。そんな服を着て出かけるなんて、子爵家の娘として恥ずかしいと思わないの?」
「いいじゃない、初めて自分で選んだ服なのよ」
「そんな格好で外出するなんて許しません。着替えてらっしゃい」
「この服で行くって、みんなと約束してるのよ。お母様の趣味は古くさくって、みんなに馬鹿にされてるんだから!」
「その程度の服で満足している方が恥ずかしいのよ」
「知らない! お母様のバカッ!」
私は悔しくて、自室に戻るため階段を駆け上った。その途中で階段を踏み外し、バランスを崩して後ろにひっくり返った。
「メアリ!」
そして強い衝撃の後、私の意識は途絶えた。