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私のお母様  作者: 河辺 螢
本編
1/17

1

「何なの、そのはしたない服は!」

 お母様の声が屋敷中に響いた。

 いつもは忙しく出歩いていて、こんな時間に家にいることのないお母様と鉢合わせした私は、街で友達と一緒に買ったワンピースを着ていた。

 今流行っているという、軽くて着ていてとても楽な服。今日はクラスのお友達とグループデートに誘われていて、みんなこの服で行くことになっていた。


 普段着ている首も手首もきっちりと隠された服。何枚も重ねて重い生地。縛り上げるようなコルセット。それが貴族の「礼儀」だと言うけれど、伯爵家のご令嬢だって時代遅れだと言っている。いつもお母様の用意してくれた服を着ているけれど、もっと自由な格好をしてみたかった。それなのに…

「そんなに胸元が広がって、体にサイズが合ってないじゃない。生地もいかにも安物。そんな服を着て出かけるなんて、子爵家の娘として恥ずかしいと思わないの?」

「いいじゃない、初めて自分で選んだ服なのよ」

「そんな格好で外出するなんて許しません。着替えてらっしゃい」

「この服で行くって、みんなと約束してるのよ。お母様の趣味は古くさくって、みんなに馬鹿にされてるんだから!」

「その程度の服で満足している方が恥ずかしいのよ」

「知らない! お母様のバカッ!」

 私は悔しくて、自室に戻るため階段を駆け上った。その途中で階段を踏み外し、バランスを崩して後ろにひっくり返った。

「メアリ!」

 そして強い衝撃の後、私の意識は途絶えた。


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