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非日常の日常の始まり
髪を一つに束ねて両耳からは淡い小さなブルーの石が入った大人しめのピアス。普段着であろうラフなポロシャツと下はシンプルなブルージーンズ。
可愛い子猫の刺繍が入ったエプロンを羽織り、活発そうな笑顔で私の前に現れた。
「可愛いわんちゃん達ですね。」
その笑顔は頬と口角をぐっと15度程持ち上げ、頭を右に約20度傾け、両目を薄く緩めてその瞳には優しさしか感じさせない。
私はその可愛い彼女… いや、その可愛らしい彼女に一目惚れしてしまった。
我に返った私は、「…ええ、お散歩に出てみたらこちらのペットショップが目に入って、何かないかなぁって入ってみました」と平静を装い何気ない感じで答えた。
彼女は、「うーん、でしたらゆっくり見て下さい。 何でしたら新作のコーナーも特設しましたのでそちらも見て頂けたらと…」
私は彼女のその先の言葉が一切耳に入ってこなかった。
何故か木漏れ日の冬の散歩道で二人で手を繋いで歩いている情景がリフレインして今何処にいるのか? 何故私はここにいるのか? すべてフリーズしてしまった。
そう、私はあらぬことに彼女に恋をしてしまったのだ。