夢は根性でコントロールできる
久しぶりに新作の執筆を始めました 対象年齢は小生と同年代になろうかと思いますが、
今回は原子力とか兵器とか戦争物から完全に離れて、愉快で幸せになれる読み物を目指し
ています。頭の中が簡単にファンタジーになれる人にはお勧めです。
夢屋与平
1 夢の定義
夢と言う言葉にはポジティブな響きがある。夢のような話や夢のような生活とか、老若男女人それぞれ違いはあっても
悪夢以外は大歓迎であろう。然し、ここではそんな夢のような話ではなく、レム睡眠とノンレム睡眠環境下における夢のコントロールについて実例を交えながら紹介しようと思う。
人は誰でも毎日寝ている間に4~5回の夢を見る。
―――いやいや、俺は殆んど夢を見たことがないよ と言いたい人も居るかも知れないが、本当は夢を見たけど覚えていないだけのこと。見た夢を記憶できるか出来ないかはレム睡眠下であったか、ノンレム睡眠下であったのかによって変わってくるし、睡眠初期段階のレム睡眠で見たサイコー♡な夢も、後から繰り替えされるレムとノンレムの波によってかき消されるのである。因みに体は寝ていて脳は覚醒しているのがレム睡眠であり、逆に体は目覚めていて脳が眠っている状態がノンレム睡眠である。よく金縛りに遭うのがレム睡眠中で、こんなときにはロクな夢を見ていない。
理想的な夢の見方は、ノンレム睡眠中に欲望通りの夢を見て自然に目覚める事である。こうすれば目覚めた後も夢の内容を明確に覚えており、その夢のストーリーをある程度コントロールできたとしたら、また今夜も楽しみというものである。
2夢道場 夢屋与平
夢屋与平は会員制の居酒屋である。しかし夢道場でもあるから、オーナーの与平は師範でマネージャーは師範代、その他従業員は内弟子となる。一方、ここにやってくる会員達は外弟子と呼ばれ、なかには熟練者もいるが大体はまともに夢をコントロールできない初心者が占める。そんな初心者の中にヒーローオタクの大門冴鬼という風変わりな名前の男がいる。
推定年齢は35歳位で身長は高めで筋肉質でがっしりした体形の持ち主だが、残念な事に顔はサングラスが必要なほど迫力に欠けていた。大門はこの道場に入門した当初から親しくしている前田慶三という男と気があって、何かといえば二人だけで盛り上がって夢見る鍛錬を競い合っていた。
前田は証券会社に勤務しており、主に金融商品の開発をしている。しかしバブル景気のような時代では楽勝で稼げたが、今では優良銘柄が少なくて、そこそこの屑銘柄を抱き合わせて見かけの利回りを確保するのがやっとの状態である。「もう一度あの頃のような夢のような時代がこないかな」前田はこの言葉が口癖のようになっていた。
「頑張って夢を見ようよ!君は仕事で成功する夢、俺は栄光を掴み取る夢」大門の夢は所詮夢を見るだけで済むが、前田の夢は正夢となり、本当に金持ちになるという虫のいい夢だから困難が伴う。
3 栄光のセントアンドリュース
年に一度全国のゴルフ場から推薦されたクラブチャンピオンや大学生チャンピオン等が集まり、18ホールを戦って優勝した者だけが全英オープンアマチュア枠で参加できる予選会が、ここ夢カントリークラブ( 7280ヤード パー72)で開催される。予想される優勝ラインは3~5アンダーで現役のツアープロでも一筋縄にはいかない。
こんなガチな大会に大門冴鬼の姿があった。
そう、彼は只今レム睡眠の真っ最中なのだ。
大門冴鬼選手の前半は3ボギー 3バーディーのイーブンで後半折り返し。10番パー 11番パー 12番ミドルホール右に軽くドッグレッグした430ヤード パー4でティーショットを右にプッシュして右フェアウエイバンカーにつかまる。更に悪いことが重なるもので、バンカーの100ヤード先には大きなモミの木があってグリーン方向は狙えない。やむ無く1打刻んで痛恨のボギーで1オーバーとなった。
しかし日本最強のアマチュアゴルファーを自認する大門冴鬼は少しも動じず、静かにカードに書かれた残りホールを見つめた。13番224ヤードショート 14番343ヤードミドル 15番415ヤードミドル 16番550ヤードロング 17番182ヤードショート そしてこのコース最難関、535ヤードロングである。「ふっ・・・ 残り全部バーディーで上がれば5アンダーか 楽勝じゃー」そして運命の13番ホール「グリーンまでは障害物なし ピンはグリーン手前から15ヤードで全体的に受けている。風はと・・・左からのややフォローか よし、5ウッドでいこう! 狙いはピンの左5ヤード」
パッシーーーーン 5番ウッド特有の高い弾道でボールはグリーンに一直線に向かっている。「ナイスオン!!」後ろから拍手が聞こえた。「だめだ、ピンの左3ヤードはずしてしまった くっそー」大門は折角の拍手に答える事無く、軽く右手を上げてグリーンに向かった。軽くバーディー。
14番343ヤードパー4 このホールは距離が短いが、真っ直ぐ打つと土手を越えてOBで右はグリーン方向に斜めに遠ざかる池がある。「スプーンでフェードに打っても距離が残りそうだな。グリーンも砲台になっているし、ここはドライバーでグリーン手前の花道狙いか・・・」
バッキャオ~~~ン 力強い弾道で真っ直ぐ飛んで狙い通りグリーン手前花道からピンまで上りの25ヤードである。
「う~ん 芝メッチャ薄いやん!」しかし大門はサンドウエッジを取り出してバンスをボール手前にトンと突くようにリーディングエッジをボールと地面の間に差し込んで右手で押し込んでシャフトを真っ直ぐ上に立てた。すると先にグリーンで見ていたキャディーさんがキャーキャー騒いでいたので何事かと確かめたら、どうやらイーグルだった。
「一気に2アンダーか まあこの程度で騒いでいたらセントアンドリュースで優勝するなんて夢の又夢だぜ!」
続いて15 16 17と3連続の我慢のパーで、いよいよ運命を決めるといって良い最終ホール535ヤード パー5である。打ち出しはティーグランドから打ち上げの真っ直ぐで、1打目の落下地点は見えない。大門は難なくフェアーウエー中央。セカンド地点からグリーンまでは約250ヤードだが、ピンは池超えのグリーンやや右手前 グリーンは手前の池に向かってやや下っていて、芝はツルツルに刈り込んである。
「よし、ここはスプーンでピンに寄せてイーグルの4アンダーでぶっちぎってやる!」 バチコ~~~ン ボールは狙い通りグリーンに一直線に向かっている。「よし、行け行け あ~入るかぁ~ まさかアルバトロス?!」 ボールはピン手前に落下しワンバウンドでピンの根元に当たった。コンと乾いた音を残して真後ろにはじかれ、だらだらとグリーンを転がって更にラフの急斜面を転げ落ちて池に入ってしまった。
「あの池はノーペナで打てるはず。俺も右足の靴を脱いでかっこよくバーディーか、最悪でもパーだろう」池まで行くとボールは完全に水没していたが、出せない深さではない。
そして池から3打目 思った以上に水の抵抗があって全く出なかった。普段はクールな大門はここで言いようのない恐怖と屈辱を感じた。続いて4打目 ボールは出ることは出たのだが、無常にも斜面を転がり落ちてきて元の鞘に戻ってしまい、怒りに任せて水面下にあるボールをクラブで叩きつけて失格となり、そこで大門冴鬼の夢は覚めたのである。
目覚めた大門が放った一言 「あ~ 夢でよかった 人生で一番プレッシャーがかかったよ!」
※ 続きは近日中に書き上げます。
まだ完結していないので、なるべく早く執筆を終えるように努力いたします。