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会話物語

星に願いを

2014年4月12日 ブログ初投稿

 男…偶々星を見に来た。

 女…どっからかやって来た。


男「(ニ、三度舞台上を行ったり来たりして)……もぉ、いい加減にしてくれないか?」


女「(首を傾げる)」


男「だから、付いて来るなって(歩き出す)」


女「(歩く)」


男「もぉ……! 言葉が分かんないのかな? いい? (片言)ツイテコナイデクダサイ」


女「??」


男「……ダメか。てかこれ日本語か。見た目は東洋人っぽいけど、俺中国語とか分かんないからなぁ……英語か? 英語でなんて言うんだっけ? えぇっと、ドント、ドント、……ゴー、じゃあ行っちゃダメ、か? 来るな、来る……カム……」


女「(男に寄る)」


男「カムダメカムダメ! ドント、ドント焼き……それはどんど焼きか。えぇ、と……あぁ、もぉ! とにかく、ダメ! 付いてきちゃ!(歩き出す)」


女「(歩き出す)」


男「……はぁ、……いいよ、もう。付いて来たかったら勝手に付いて来いよ(歩く)」


女「(止まる)」


男「えぇ?! あんたには『付いて来い』が『付いて来るな』なの?!」


女「(肯く)」


男「あ、あぁ、そうなんだ。面白いね、違う国の言葉って」


女「星」


男「え? あ、うん。俺、ここに星見に来たんだよ。今日は綺麗だよなぁ。あの星なんて、すっげぇキラキラしてて……」


女「あの星、結構前に消えた」


男「えっ?! そうなの?! でも、光ってる……」


女「光はまだここに届いてる」


男「へぇ……君、天文学生かなんか? ……って、言葉通じないのか」


女「Don't come」


男「へ?」


女「さっきの英語、『Don't come』」


男「あ、そっかそっか! ドントとカムが出てきて、なんでそれが出てこなかったんだぁ!」


女「星……」


男「てか、言葉通じてんじゃん! じゃあ、なんで俺に付き纏うの?」


女「ツイテクルナって言ったから」


男「それが、付いて来い?」


女「(肯く)」


男「紛らわしいなぁ……君の国の言葉」


女「星」


男「星見に来たの?」


女「わたしの星の言葉」


男「……はい?」


女「あなたは、わたしを助けてくれた」


男「いやいやいや、助けてないし、星って……うん? 星? 意味が分からないんだけど……」


女「言葉通じないの? だから、あんたがわたしを目覚めさせてくれたから、なんか恩返しできないかなぁって付いて行ってんの」


男「いきなり流暢になったな! てかいきなり威圧的になったぞ?!」


女「猫被るのも疲れんのよ。違う星に来たから、少しは大人しくしてようと思ったのに」


男「ちょっと待て。星に? 国に、じゃなくて」


女「いい加減にしないと殴るよ? さっきから言ってんじゃない。恩返しできることない?って」


男「それは一回しか聞いとらんから! 頼む。ちょっとタイムね、整理しよう。君は、違う星から来たの?」


女「もぉ……はぁ、いいわ。そうよ」


男「目覚めさせてくれた、って言ったけど、さっき俺がボロボロのカプセルみたいなやつの変なスイッチを押しちゃったこと?」


女「安眠妨害スイッチね」


男「すっげぇ嫌な響きだな。妨害してんじゃん、俺」


女「でも、それを押してもらわないと、わたしは目覚めることができないってわけ」


男「君の星は、なんでも嫌味に作るのか?」


女「そうね、余所の星からするとそうだったかもね」


男「そう『だった』?」


女「消滅したの。つい数百年前」


男「ついじゃないついじゃない! 数百年前ついじゃない!」


女「つい、よ。この星はなんでも短過ぎるの」


男「感覚の違いかぁ」


女「寿命自体は変わらないみたいだけどね」


男「そっちはどんくらい生きれんの?」


女「そうね、二百年くらいかな」


男「長過ぎ! 全然変わらなくない!」


女「変わらないの? 変わるの? どっちよ?」


男「ん? ん?? か、変わる!」


女「紛らわしいわね、この星の言葉は」


男「そっちほどじゃないよ」


女「はぁ、……それにしても、なんもないとこね。ここ」


男「そりゃあ、原っぱだもん。何もない方がいいんだよ」


女「わたしの星には、こういう場所がなかったわ。至る所に何かがあって、わたし達だけが生きやすい」


男「それは、……この星だって同じだ」


女「そう?」


男「そうさ」


 ふたり、そこに座る。


男「あっ、あの星、今一瞬大きく光った」


女「あの星は今戦争真っ最中なの。また派手にドンパチしてんじゃない」


男「ロマンの欠片もないこと言われた……」


女「ここは穏やかね」


男「ここはね。でも、違う国ではそうじゃないとこもある」


女「……どこも一緒か」


男「うん」


女「何してほしい?」


男「え? 何が?」


女「殴っていい?」


男「殴るのはダメ」


女「恩返し終了」


男「そぉ来たかぁ!」


女「ウソウソ、冗談よ」


男「ったく……なんで消滅したの?」


女「さあ? 分かんない」


男「自分の星のことなのに、分かんないの?」


女「じゃあ、あなたは分かるの? 自分の星が消滅するわけ」


男「そ、そんなの、消滅したことないから分かんないよ。まあ、……隕石が落ちて来たとか? マグマで内側から爆発する、とかで消滅するんじゃない?」


女「自分のせいだとは思わないんだ」


男「そっ、そんなこと……そういうことも、あるのかな……」


女「消滅させちゃったんだと思う」


男「え?」


女「わたしの星ね、みんなが同じ方を向きましょうって星だったの。そうすれば、争いは起きないじゃない? みんなが同じ意見なんだし。だから、上がこの星ごといなくなりましょうってなったら、そうなるわけ」


男「君はそうじゃなかった?」


女「非星民なの、わたし」


男「そんな、非国民みたいな」


女「だって、ほんとにそうだったんだもん。みんながおんなじ意見。そりゃあいいこともいっぱいあったわ。争いはなく、みんな平等。がんばってても、そうじゃなくても。飢えても、肥えても」


男「飢えるって、生活水準は同じじゃなかったの?」


女「寿命は同じにはできなかったの。生き返らせることもできなかった。どんなに発展しても、発達しても。年老いて働けなくなったり、孤児になったり。そこでどうしても格差が出る。それでもみんな同じ意見。生活水準が高くなればなるほど、低いひとはそのまま」


男「どこの星でもあるんだね」


女「どこの生命も、永遠はないのね、きっと。そういう進化をするのね。ついにわたしの不満が星ごと爆発しちゃった……そうなんだと思う」


男「君は、……それを知ってた?」


女「わたし、孤児なの。働いても働いても、何もなくて、残らなくて。こんなのおかしい、でもみんなと足並みが揃えられない自分がおかしいのか、分かんなくなっちゃって。ある日、そんなことを口にしたら、……」


男「いいよ。ごめん、言いたくないことだったね」


女「わたしのせいなの、きっと」


男「いいって。君のせいじゃないよ」


女「わたし、みんなを見捨てたの。偶々見付けた安眠カプセルに逃げ込んで、せめて寝ている間に、……って思ったら、あなたが」


男「ワープしたってこと?」


女「分からない。もしかしたら、わたし、死んでるのかも。ううん、きっと一回死んだんだわ」


男「生きていけってことなんじゃない?」


女「みんなを殺した罪を背負えってことなんでしょうね」


男「そうじゃないよ! いや、……忘れちゃいけないのかもしれないけど。背負えってことなら、大き過ぎるかもしれないけど……でもさ!」


女「ありがと。あなたの前にカプセルが落ちたわけ、なんだか分かった気がする」


男「わけ?」


女「恩返しが遅くなっちゃったわね。どうする? 何してほしい?」


男「……べ、別にいいよ。何もいらないし」


女「わたしもそう考えられたらよかったのにな」


男「ほしいものはいっぱいあるさ、俺だって。でも、……」


女「わたしじゃ叶えられない?」


男「うん、多分」


女「どこにいても、わたしは何もできないのかぁ」


男「そうじゃなくって……! じゃ、じゃあさ……」


女「ん?」


男「ツイテクルナよ」


女「え?」


男「ツイテクルナ」


女「それ、って……」


男「ほら! 行くぞ! ……って、君の星では『行かない』か?」


女「っ……いいわよ、もう。それに違うから」


男「違うんかい!」


女「ねぇ、もう一回言って」


男「えっ、……あ、ツイテクルナ」


女「違うわよ。あなたの星の言葉で」


男「……付いて来いよ」


女「うん」






 ~オワラナイ~

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