潤色の真実
ふと気が付くと、私は布団の中にいた。
なんだ、夢か。
内容はよく覚えていない。
何事もなかったように身仕度を澄ませ家を出る。
次に気が付くと机に突っ伏していた。
なんだ、夢か。
内容はよく覚えていない。
何事もなかったように、机の上に散乱している書類を整理する。
はっと気が付くと、私は病院のベッドで横たわっていた。
なんだ、夢か。
内容はよく覚えていない。
死へのカウントダウンをする点滴の音に耳を澄ませながら、
私はそっと瞼を閉じた。
また、はっと気が付くと、そこはゆりかごの中だった。
なんだ、夢か。
内容はよく覚えていないが、なんだか疲れたな。
もう一眠りしよう。
そしてまた、私は眠りについた。
一体どれが夢でどれが現実なのだろうか。
これは夢の中の夢か。
夢が醒めれば、また新たな夢の世界が待っている。
人の一生とは、一つの夢なのか。
生と死を知ることは、夢と真を知ることに似たり。
覚醒夢の連鎖は永続的現実なのかも知れない。