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変態の話  作者: 後悔の亡霊
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露出狂の話

はじめに。勢いで書き上げた気持ちの悪い話なのでご注意をば

卑猥な話をしてすまない。私は高校2年の夏、下着を着用せずに学校へ通っていた時期があった。きっかけは、ある日たまたま着忘れた時に覚えた、えも言われぬ高揚感であった。


スカートというのは女子高生である以上必ず着なくてはならないものであり、風が吹けば翻りそうなその衣装は、更に私を高揚させた。


見られたらどうしよう、どうなるだろう。こんな私でも性的な目で見られるのだろうか。

そういった感情が私の中で渦巻き、耳を真っ赤にしながら胸を高鳴らせた。


友人と話している時、授業で男子と作業をする時、先生にプリントを提出する時。

今までありふれて陳腐なものと化していた日常は、途端に心弾む異世界になったのだ。

私の心臓は休まることを知らず、常に身体中に拍動を響かせていた。


下着を身につけないようになってからというもの、視線が気になりだした。

ふと、誰かに見られているような気分になるのだ。況や皆が私を見ている気さえするのだ。


誰の目にも映らなかった私は、今や自分の中では皆の視線を釘付けにしていた。

しかし私が下着を着ていない事は誰にもばれなかった。



ある日。友人と弁当を広げて、昨日の歌番組について語らっている際、ふとある考えか浮かんだ。


見られているなんて私の思い上がりで、実は誰も私に興味が無いのではなかろうか。

今度は冷静な思考が、視線に敏感になりだした。


するとどうだろうか。先生や男子をはじめ、私の友人ですら私と目を合わさずに話している。会話を思い返せば、上辺だけの話題ばかりであった。そして、それは私も同じことであった。


私は誰かの視線よりも先に、誰かに興味を持ち誰かから興味を持たれるような関係になるべきだったのではないだろうか。

クラスを見渡すと、誰一人として目を合わさず首元やら額やらに視線を向けている。

誰一人として、自分の信念や意思を語らない。


みんな、上辺だけの会話、上辺だけの付き合い、上辺だけの――興味のあるふりをしていた。


途端、教室の床が抜け落ち、ばらけ、私と私の机と椅子だけが宇宙に放り出されたような感覚に陥った。


それは孤独。


この世界で私は誰とも、いや、誰もが誰とも繋がっていないという孤独。


誰もが興味を他人に持たず、過ごしている。そう考えると酷く気分が悪くなり、その日は早退した。


以降、私は普通に下着を履くようになった。

灰色の世界で視線は淀み、誰も捕えず忙しい時間の中へと溶けていくのだ。



社会人になったある夜、人気のない公園にて私はその頃感じたような熱い視線を感じて振り向いた。

冬も近く、だいぶ冷えてきた時分であった。


男が1人、不安そうな、思い詰めたような顔をしながらコートの縁に手をかけていた。

ボタンをしめておらず、コートの隙間からは一筋に肌色が見て取れた。


一気にそれを開くと、正直あまり気持ちの良いものとは言えない中年の裸が目に飛び込んだ。


私がそれを見て固まっていると、男は額に汗を垂らしながらぎこちなくも満足そうに笑い、逃げ出した。

すかさず私は首に巻いていたマフラー伸ばし、それを男の首に巻き付け動きを止めることに成功した。


男は突然の事に驚き首を引っ張られ、小さく呻いた。そして、困惑と恐怖を浮かべながら私に振り返った。


この男は、昔の私だ。誰にも見られず、誰にも関心を持たれず、そうして透明になっていく自分が怖かったのだろう。

独りが、怖かったのだろう。

私も怖かった。私は逃げ出した。

この男はそれでもなお足掻き、こうしたことをしているのでは無いだろうか。


「お話をしましょう。私は、あなたにちょこっと興味があります」


彼の怯える瞳を真っ直ぐに見つめ、そう微笑むと抵抗する力が弱まった。

男の瞳にもう恐怖や戸惑いはなく、ある種の安堵が佇んでいた。

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