リザルト
「ご両親公認おめでとうコゼットちゃん!!」
「え? あ、はいありがとうございます」
気がつくと、白い部屋でチヨ様に抱きかかえられておりました。
前と同じ、コタツとテレビがあります。
眠るとここに来る、ということでしょうか。
「まずは第一関門突破ね!! 実際あそこで中途半端なことを言ったら問答無用で一生禁固もありえたわね!」
「まあ、そうですね。イスフィールドの名を汚すことはできません。外で生きられる力が無ければ『コゼット』はいないものと扱われるでしょう」
「その年からお家のこと考えられるなんて! お稽古も頑張ってるしそこらへんの問題はないわね」
たくさん撫でられます。
なんともむずかゆくなってしまいます。
「わたくしはなにも。必要だと思うことをしているだけで……」
「ほとんどの人はそれができないのよ! コゼットちゃんは凄いわ! 偉い! かわいい!! ちゅっちゅ!!」
「あ、ありがとうございます」
ひたすら抱きしめられたり頭に口づけされたりします。
これ以上言葉を重ねても、さらにひどくなりそうなので嵐が過ぎるのを待ちます。
撫でられたり抱きしめられたりするのは良いのですが、口づけを落とされたり、時々ふとももに手が伸びるのは、ちょっと、さすがに恥ずかしいです。
ただ、止めて下さいとはとても言う気にはなぜかなりません。
「初っぱなからスライムの配下ができたのは幸先良いわね。色々なことを試せそうね!!」
「はい。数日中には資料が集まったり、お話を聞く機会があると思います」
「順調ね。流石貴族。これが平民だったら即、詰んでた可能性マッハね」
「確かに、そうかもしれません」
マッハはわかりませんが、この職能を知るには今後も多くの試行錯誤が必要でしょう。かなりの金がかかることは予想できます。
「なにか資金源になるようなことを見つけるのが先決でしょうか」
「うーん、早いほうが良いと思うけれど、辺境伯が持つお金からしたら別段、目くじら立てるほどでもないんじゃないかな」
「それもそうですね。それに、わたくしはこれから病気だということになります。仕立てるドレスの数を控えめにすればいいでしょう」
他にも、社交費や贅沢品の購入費など、削れるところは多々あるでしょう。
貴族というのは金を使うというのも仕事で、良き文化を作るために金をかけ、領に金を落とすも重要なことなのです。
「え~~!! コゼットちゃんお洋服のバリエーション少なくなるの~?」
「ダメですか?」
「ダメじゃないけど~。いろんなかわいいコゼットちゃんを見たいっていうか~」
「……あの、お腹を揉むのをやめてください」
「とってもやわらかくて気持ちいいです」
「おやめになって下さいませ」
「あ、令嬢っぽい!!」
「令嬢です!!」
チヨ様は少々お戯れがすぎます!!
◇
「そういえば、あのスライムはどうやってわたくしの寝室に入ったのですか?」
「うーん。私にもわかんないや。本人に聞いてみたら? 人じゃないけど。はい」
「え?」
よいしょ、とチヨ様がこたつの上に物体を置きます。
白くぷるぷるした丸いフォルム。間違いありません。スライムです。
「クッキー……」
「喋りました!!」
「はい。今日はチョコチップよー」
チヨ様がクッキーを差し込みます。
「アマピィイエエエエエエイ!!!!」
この荒ぶり。間違いありません。わたくしの配下になったスライムです。
「え、あの、どうしてスライムがここにいるんですか? 喋っているんですか?」
「コゼットちゃんがこのスライムを使役した時にはここにいたね。喋っているのはこの空間だからかな」
「この空間ですか?」
「考えてみて、私は地球にいた日本人だよ。コゼットちゃんとは多分、喋る言語も文字も違うよ」
「……なるほど」
あまりにも自然に会話ができていましたので、気にもしておりませんでした。
「なんでここに居るのかは……<スライム使い>の影響かな? スライムとコゼットちゃんには繋がりができて、その結果、コゼットちゃんの中にあるここに来たってところなのかな?」
「なるほど、この状況が特殊というわけですね」
チヨ様はうんうんと頷かれます。
「そう考えると、スライムと直接会話をしたのは私たちが初めてかも知れないね。偉業かどうかは知らないけど」
「は、はい。そうですね。ええっと、スライム。どうやってわたくしの寝室に入ったのですか」
「ツヨイチカラ、シンカ、ヒガン」
……。
「……ええ、力を求めるのは種としての本能ですよね。そうではなく、わたくしはどうやって寝室に入ったのかと」
「アツマリ、チカラ、ツヨイチカラ」
「そういうの良いから。クッキーもうあげないよ」
「スキマカラハイッタ」
「なるほど」
チヨ様の言葉で即、口を割るスライム。クッキーは強し。
「コゼットちゃんはいくらでも食べて良いからねぇ。はい」
「あ、はい。ありがとうございます」
口元に近づけられて、半ば条件反射でクッキーをかじってしまいます。
「~~!! おいしいです! これは前頂いたチョコレートですね!?」
「そうよ~。砂糖とバターたっぷりのカロリー爆弾だよ~」
甘い香りと麦の香りと共に、チョコの強烈な風味が口の中に広がります。これは、良いものです。
スライムが口を割るのもわかるというもの。カロリー爆弾はわかりませんが、その力強い響きに見合う一品です。
◇
「スライムは隙間から簡単に入ってこれるのですね」
「みたいだね。上手く使えれば強そうだ」
「ツヨイ? ツヨイ?」
「今後に期待ですね」
「ショウライユウボウ!!」
「難しい事を言いますね。スライムはこんなに頭が良いのですか?」
「ツヨイアルジ、チカラツヨクナル」
「……わたくしが使役したからですか?」
「アルジツヨイ、ポテンシャルパツグン。ナカマアツメル、モットツヨイ」
「まあ、ポテンシャルはあるだろうね。メインヒーローの悪役令嬢だし」
「そういうものなのですか?」
「まぁ、両親も凄いっぽいし、血的にかなり優良株なんじゃない?」
「なるほど。仲間を集めるというのは、スライムが集まるともっと強くなるということですか?」
「ああ、それに関しては私が答えられるかも」
「はい? チヨ様がですか?」
唐突に、わたくしたちの前に光でできた文字が踊ります。
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ピュア・スライム
経験値:5
<全が一><吸収 lv1><抽出 lv1><移動 lv1><ストック lv1>
ストック:0
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「なんです? これは」
「異世界転生お約束チート能力、『ステータス』よ!!!」




