新しい力。つまりニューパワーです
「何をみているんですか?」
「んー? ほら、昨日魔法は使えるのかどうかって言ってたじゃない? だからちょっとアニメを見返しているんだよねぇ」
「なるほど」
いつもの白い部屋で、チヨ様に抱えられていると思ったら、テレビに風景が流れておりました。
テレビの中では大きくなったわたくしが、確かに魔法を放っております。
何度みても、不思議な光景です。
それがわたくしというのですから、なおさらです。
隙を見て上がってきたチヨ様の手をはたき落とします。
どこを揉もうとしましたか。破廉恥ですよ。
「中々に、なんというかこう、悪い魔法に見えますが?」
テレビの中のわたくしは、なんとまあ悪そうな顔で、なんとも黒くどろどろした魔法を放っております。
わたくしにあのような顔ができますかね?
次の日は顔中筋肉痛になりそうです。
「完全に毒っぽいよね。黒いし」
「これをイメージすればいけるのでしょうか」
将来のわたくしが使えるというのあれば、これを練習すればいけるのでは?
「どうだろー。コゼットちゃんの授業を聞いてる感じ、イメージも大切なんだけれど、あの魔法陣みたいなものも必要なんでしょ」
「そうですね。どちらかというとまずは記憶ですね」
あとは魔力を体に通し、必要な分をくみ取ることが大事なのだとか。
未だによくわからないので受け売りですが。
「うーん。魔族にならないと使えないとか? けど学園の時でも使ってたしなぁ?」
「そうなんですね。まあ焦らずにいこうと思います」
「そうだね」
「アルジ」
「なんです」
スライムに話しかけられます。
いつもより多くプルプルしていますね。本当にどうしました?
「ナニカワスレテナイ?」
「……ああ」
「アルジ?」
「いえ、忘れてはいなかったのですよ?」
プシュっと平たくなるスライム。
わかりやすく拗ねますね。
「ほらほら、拗ねないで。ね。ほら、クッキーをあげよう」
チヨ様のクッキーへと瞬時に反応するスライム。
「ソ、ソンナモノデツラレルトデモ」
「じゃあ二枚にしよう」
「ピャアァアアアア!!」
わかりきったことでしたね。
チヨ様のクッキーにスライムが敵うわけないのです。
「うむ。では、ステータスっと」
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ピュア・スライム
<全が一><吸収 lv31><抽出 lv12><移動 lv11><ストック lv52><光合成 lv11><土操作 lv20><硬化 lv15>
<多産 lv12><熱操作 lv1><格闘 lv1>
ウィード:3600
<光合成 lv11>
アース:4600
<土操作 lv20><硬化 lv15>
計:8200
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「中々どうして、増えましたね」
こうしてみると、5000削れたのは結構危なかったですか。魔法が今後の課題ですね。
総数8200というのは数にしては多いですが、所詮はスライムです。魔物としては(スライムを除いて)最弱のゴブリンの巣を襲撃して5000減るのを見て推して知るべしですね。
今でも耐久力を上げるためにストックを10とか100とかの単位で分裂させて運用しています。
そうして考えると総数100体以下になる計算になる時もあるわけです。まだまだ数が必要ですね。
これ、ストックのレベルが相当上がっていますが、ストックのレベルと実際のストックのズレは、レベルが上がると補正でもあるんでしょうね。
レベルもあがっているように感じますが、経験値が大分ストックに持って行かれている印象ですね。
スキルも増えていますが、それよりも気になるものがいくつかあります。
「修正値とか、外に出ているスライムの数が見れなくなっていますが」
「うーん、どうやら負荷が大きくなってきて、表示できなくなったみたい」
チヨ様も首を捻っています。
「大丈夫なのですか?」
しばらく唸っていたチヨ様ですが、やがて口を開きます。
「……元々、コゼットちゃんを通してスライムを見るっていう凄い変則的な使い方みたいだし、ストック外のスライムの数も増えてきたし、スキルのレベルも数も多くなってきたからね。今後はスキルのレベルとかも見れなくなってくるかも」
「そういうものですか」
「まあ元々見えないものだし、コゼットちゃんも感覚的にわかってはいるから、スライムに任せてるんでしょ?」
「まあそうですね」
なんとなくスライムの強さがわかるのは確かです。
どういうスキルがあり、スキルがそれぞれどれくらいのレベルかまではわかりませんでしたが。
まあ、わからなくても困るほどではありません。
「あと、私のこの能力がスキルなら、単純にレベルが不足しているのかも」
「なるほど。チヨ様のスキルの成長よりもスライムの成長の方が早いと」
「そういうことだね。それに、これがスキルだったとして、どうレベルをあげればいいかわからないし」
まあ、そうですよね。見るだけのスキルですしね。
「まあ、今のところはとりあえず、新しく出たスキルだね」
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<多産>
どのような環境でも生き残れるように、子を成し増やす能力に長ける。確率で子に突然変異が起こる。スライムの場合は食料による分裂能力に補正。
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「一気に数が戻せたのはこれのせいですか」
ゴブリンらしいスキルですね。
そして貯めていた経験値も全てこれと減ったスライムの補填分に充てたと。
子の突然変異というのも気になりますね。説明を見るとこれがスライムにも影響出るのかわかりませんが。
ゴブリンの繁殖力を得た、元々分裂力が強いスライムですか。
あれ?
これは中々凄いことなのでは。
「スゴイスゴクフエル」
「まぁそうでしょうね。その分ストックの上限に到達するのも早くなるようですが。どうするのですか?」
「メザセストックマスター。アイボウハ、ストチュウ」
「そうですか。けど他のスキルもおろそかにしないで下さいよ。」
よくわからない事を言っているので、おざなりに流します。
「ガッテンショウチノスケ」
「ねぇ、私のセンスが古いみたいに感じるその受け答えどうにかならない?」
「ソンナコトイッタッテショウガナイジャナイカ」
「絶対おちょくってるな?」
「ジョウダンハヨシコサン」
「違うからねコゼットちゃん!!」
「何がですか」
何やら半泣きで懇願されますが、そもそも何がどう違うのかよくわかりません。
「ダッチューノ」
「うるさい! 黙れ黙れ!!」
チヨさまのチョップでスライムがぷよぷよされております。
◇
「で、<熱操作>と<格闘>ですか」
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<熱操作>
魔力を使い熱を操作する事ができる。また、熱への耐性も得る。
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<格闘>
格闘術や運動能力に補正。
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<熱操作>の方はなんとなくわかります。ゴブリンシャーマンから得たのでしょう。<格闘>は大きい方のゴブリンから? それとも道中のどこかのタイミングですかね。
新たなスキルを得るためには、やはり森に行くのが効率良いですか。
スライムの強化は、そのままわたくしの強化ですからね。やはり行かないという選択肢はありませんね。
「魔法ではなく操作なのですね」
「多分スライムだと魔法を使うまでには至らないって感じなのかもね」
「なるほど、そういう感じですか。しかし耐性を得るのは良いですね。優先して上げてください」
「アイアイサー」
「<格闘>はどうしましょうかね。スライムに意味がありますか?」
「まあ、有って損はないんじゃ無いかな? 投擲の代わりになるかもよ」
「なるほど」
ということは結局、全てあげていく感じになりそうですねえ。
処理場も稼働して経験値も良く入るようになったと思いますが、スキルのレベルも上がってくると今後どうなるかはわかりませんね……。
<ストック>のレベルも中々上がっているようですし。全スライムから経験値を得られるといっても、そろそろペースが遅くなるでしょうね。
一つ一つやっていくしかありませんか。
「<熱操作>はどんな感じなんですか?」
「ピィエイ」
スライムが一体分裂して出てきます。
瞬間、破裂しました。
「?」
「?」
「マリョクタリナイ」
ええ……。
つまり、魔力を使い切って弾けたという事ですか?
貧弱すぎませんか、スライム。
というか熱耐性も得たといいますが、その熱操作で弾けてたらダメなのでは?
「どう対処しろと」
「イ、イッパイストックスル」
しどろもどろのスライム。
まあそれしかありませんか。
「スキルのレベルがあがれば、使う魔力も減りますかね……」
今はそれに賭けるしかありませんか。
中々上手くはいかないものですねぇ。
「そもそも、分裂したスライムは<熱操作>を持てるんですか?」
草や土はその特徴を持ったスキルを持っています。しかし、新しく取得したスキルはどういう扱いなんですかね。
「イクツカモテル」
なるほど。全てを持つことはできないわけですね。
「土スライムに<光合成>をつけるのは?」
「ビミョウ」
微妙ってなんですか。
「シュミジャナイ」
な、なるほど? スライムごとにスキルの好みでもあるんですか? あなた達全部で1つなんでしょう?
どうしてちょくちょく、そのように好みがあるみたいな言動があるんですか?
ふむ。
これは、絶対人の身では管理できませんね。
「そうですか。任せます」
とりあえずこんなものですかね。




