土スライムです
「新しいスライムだけれど、やっぱり土スライムだったみたい」
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アース・スライム
<全が一><吸収 lv13><抽出 lv6><移動 lv4><土操作 lv4><硬化 lv3>
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<土操作>
土に関する操作の器用さ。スライムは魔力によって土自体を生成することもできる。
<硬化>
体を固めることができる。スライムは取り込んだ材質によっても堅さが決まる。
チヨ様が新しいスライム、アース・スライムの詳細を見せてくださいます。
ストック済ですので、共通のスキルはレベルが上がっていますね。
「茶色は土の色なんですね」
「そうだね。土に合わせた色になるのかな」
「<光合成>がありませんね」
「種類ごとに持てるスキルがあるって事だね」
土はあたりに沢山ありますからね。よくいる部類のスライムだとは思います。
土操作に硬化ですか。中々有用なのでは?
「今まで見なかったのはなんでだろうねぇ」
「確かに。土はたくさんあるはずですが」
二人でスライムを見ます。
「ツチ、カタイ」
すごくシンプルな答えですね。
「じゃあなんで土食べるスライムになんてなるんですか」
「シュミ」
なんとまぁ、元も子もない。
「タヨウセイ」
わたくしたちの空気を察したのか、スライムが言い換えました。
「言いつくろってもねぇ」
「多様性ってなんです?」
「あー、なんっていうのかなぁ。1つの種類だけしか居ないと、その種で病気が流行ったときに全滅する可能性があるの。それを避けるために、それぞれに差をつけて生き物ってのは生まれるのね。それが多様性、かな」
「そうなのですね」
自分で考えたわけではなく、生き物としての仕組みとしてそうなっているわけですか。にわかには信じられません。
けれども、生き物には色々な姿の物がいますからね。
世界は知らないことだらけですね。
「まあ、土スライムは中々使えそうだね。<硬化>が楽しみかな」
「そうなのですか? わたくしは<土操作>がよいと思いました」
土を掘れば簡易的な堀が作れますし、今後スライムが増えればそのまま作業速度に直結しますからね。開墾にも使えそうですし、井戸も掘れるかも知れません。
土に関する作業は多くあるでしょう。
「なるほど。コゼットちゃんらしいね。領のことを考えるとそうだね」
チヨ様がにこにこ笑いながら、わたくしの頬をつつきます。
「ということはわたくしのためということですか?」
「うむ。みたまへ。スライムくん」
「ヘシン!!」
スライムが形を変えます。
「ナイフ、に見えますね」
白いナイフのような何かになりました。
触ってみます。堅いですね。
「即席の武器になるわけですか」
「そういうこと。どれだけ細かくなるかにもよるけれど、工夫次第で色々やりようはあるよ」
ナイフとしては鋭さが足りませんね。棒といった方が正しいです。
光も反射しない、白く半透明の棒。
少し力を入れると曲がりますね。このレベルだとこんなものですか。
「そもそも体積的にこの小ささはどうなのよ」
「オトメノヒミツ」
「まあ<ストック>の時点で重さも体積もどっかいってるみたいだしね。まさにファンタジー。……もしかしてコゼットちゃんめちゃくちゃ、とても力持ちだったりしない?」
「いいえ? ――ふとももを揉まないでくださいまし」
流石にそれは許されませんよ。
それに力持ちかどうかと、ふとももを触ることにはなんの関係もありませんよね。
ぺしっと叩くとチヨ様の手が引っ込みます。
「コゼットちゃんが冷たい!!」
わざとらしくもたれかかってきます。
失礼な。無作法はチヨ様ですよ。
「まぁ、スライムくんには今後もがんばってもらうとして。ステータスをみようか」
ナイフもどきにクッキーが近づけられます。
でろんと形をくずしてクッキーを取り込むスライム。
欲に忠実ですね。
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ピュア・スライム
<全が一><吸収 lv13><抽出 lv6><移動 lv4><ストック lv1>
ウィード:25(25)
<光合成 lv9>
アース:2
<土操作 lv4><硬化 lv3>
修正値:5
ストック:27(外25)
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「さて、今のところこうなってるね。ごちゃごちゃしてるから表示を弄ったよ」
「こんなこともできるのですね」
「がんばったらできた」
がんばったらできるものなのですね。
現にできてますからね。
できるのでしょう。
それにしてもこの表示は見やすいですね。
ストック外の数があるのも良いですね。
まだストック上限数には達しませんか。
経験値は<吸収>につぎ込みました。もう10を超えましたね。これは100までいきそうですね。
今後どんどん上がりにくくなっていく予感がしますよ。まだまださくさくですが。
チヨ様的にはしすうかんすうてきに上がりづらくなるそうです。エンドコンテンツだとかなんとか。
よくわかりませんが、チヨ様が真顔で言うくらいですからね。相当なのでしょう。覚悟しておくことにします。
「あと今日も汚物組は全滅だったね」
「そうですね。何か方法を考えた方がいいですかね?」
10匹近くが消えましたね。いたずらに数を減らしているだけな気がしますね。
「どうだろうね。まだ二日目だしね。一ヶ月とかやってみてダメなら、でも良いんじゃないかな」
「そうですかね。全て増やす方に回してもいいのでは?」
どうにも、もったいないと思えてしまうのです。
貴族として少し細かすぎますかね? けれども損得の計算は常にしなさいと教えられましたからね。
「エサタリナイ」
なるほど。今日は餌の量が結構ありましたが、そう毎日大量にゴミが出るわけでもありませんからね。
街のゴミを割り当てるのも、今日明日すぐにできるわけでもありませんし。
集めるのもそうですし、そこへスライムを持って行くのも、定期的に回収するのも、詰める話が多いです。まさかわたくしが毎日確認にいくこともできません。
これでも令嬢ですからね、わたくし。外に出るのには許可がいるのですよ。
今だと、どうしても仕事が割り当てられないスライムが出てきますか。
それにしても、ストックしておけば良いという話はありますが……。
「どう思います? スライム」
「マワサナケレバ、アタラナイ」
「至言だねぇ」
チヨ様がうんうん頷かれています。
「どいうことですか?」
「小さくても可能性があれば、試していればいつかは当たる。試さなければ可能性は0になるってことだね」
「はぁ、まあそうですが」
ひたすら当たらない事もあるのでは? 至言……ですかね?
「デルマデマワスカラ、ゼッタイデル」
そこにかかる労力はどれほどか、という事をわたくしは気にしているんですけれども。
あなた、わたくしの考えある程度読めますよね?
知っているんですからね。
今、意図して無視しているでしょう。
薄々思ってはいますが、このスライムも中々な性格ですよね。
ふてぶてしいというか。
「うんうん。そういうことだね! 出るまで回せば100%よ!!!」
どうしましょう、何故か今のチヨ様からはダメな気配がします。
何がとは漠然としすぎて言えませんが。