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お話を聞きましたよ

「ふむ」


 今日はスライムが8匹おりました。緑です。


 もっと欲しいですね。冒険者ギルドにスライム捕獲の依頼を出して貰うようお父様に頼みますか。


 さくっと取り込みます。


「それでは昨日と同じように」


 朝の日課となりそうな雑草処理をスライムに任せます。


 と、スライムから少し戸惑うような反応があります。


「どうしました?」


 スライムが分裂して白と緑で7匹になります。


「……ふむ。その方が効率が良いということですか?」


「ピェイ」


「ふむ。それではそのように」


 スライムが雑草に群がります。どうやら草刈りでもしたようで、今日は結構な量になっています。スライムたちにはごちそうですね。


 準備中のスライムがいても分裂はできるのですね。ということは明日は15匹がかりですか。


 控えめに言って軽く恐怖を感じる光景になりそうですね。


 まぁ、やりますが。


「そういえば目眩がしませんね。<ストック>の力ですか?」


 先ほど8匹の<テイム>をした時は、前のように目眩がしました。しかし、一度1つになって分裂した今は特にしません。


「ピィエン」


 肯定と。


 ふむ。<テイム>的には1匹扱いということですかね。<テイム>とは別で<ストック>により多数のスライムを操れるわけですか。


 良いですね。今後大量になればその真価が発揮されるでしょう。



「ふむ、スライムの捕獲依頼をしたいと」


 さっそくお父様にお願いしに面会を頼みました。すぐに話は通り、今は執務室におります。


「はい。どうやらわたくしはかなりの量のスライムを従えられるようです。こちら、わかった事をまとめたものです」


 今までわかった事を簡単に書いたものをお父様に提出します。


 簡単なメモのようなものですが、とりあえずの報告としてはこれでよいでしょう。


「わかった。後で読もう。依頼も出そう。駆け出しの良い小遣い稼ぎになろう。だがスライムは搬送用の樽を溶かす。この街のギルドへの依頼としては問題無いが、他の街への依頼は輸送費もあるゆえ、具体的な成果と利益がないと許可できぬ」


 他の街、というのは魔の森に面している2つの街ですね。最前線です。わたくしたちの街はその後方で構える司令塔といった所でしょうか。


 そこからスライムを持ってくるにしても、馬車とその護衛も考えると流石に予算が組めませんか。


 ですが、諦めることはできませんね。対案は持ち帰りです。


「わかりました。何か考えておきます」


「うむ。雑草の処理については聞いている。栄養剤に関しては我々も期待している」


「ありがとう存じます」


「アントン」


 言われて、アントンが前に出てきます。


「その他のゴミ。具体的に厨房から出る生ゴミや、厩舎から出る古くなった飼葉や藁の処理について、可能かどうか問い合わせが来ています」


 なるほど。思いつきでの行動でしたが、なにも対象は雑草だけじゃないですね。


「普段はどうしているのですか?」


「まとめてゴミとし、町中のゴミとまとめて、街外の森に穴を掘り埋めていますね」


「なるほど、そこでもお金がかかっているわけですね……」


「ええ、悪臭の原因にもなりますからね。その節約になるのであれば、他街へのスライム捕獲依頼も出せるかと」


 スライムは<消化>してしまえば汚れも無く常に綺麗なようですからね。生ゴミもまあ問題ないでしょう。


 そして対案を考える必要もなくなりそうですね?


 ――あら?


「……そういえば、糞尿はどうなっていますか?」


「……そちらも穴を掘り埋めていますね」


≪ええ? 埋めてるの!? 肥溜めは!?≫


 チヨ様の”声”が聞こえますね。どうやら、チヨ様からすると利用価値があるということですか。


 後で詳しくお話を聞くことにしましょう。


「もしできるのであればかなりの負担軽減と利用できる土地が増えます。しかし、流石にお嬢様が直接携わることではないかと」


 アントンが眉をひそめます。


 お父様は何も言いません。


「もしできるのであればしたいですか?」


「それは……。放っておくと悪臭がどうしても出ますからね、費用によりますが改善されるなら興味があります」


「考えてみます」


 流石に忌避感が無いとは言えませんが……、スライムの活用法があるなら試してみるべきでしょう。


「また、こちら、当領で試みたスライム活用方法の記録になります」


 アントンから羊皮紙の束を渡されます。


「ありがとう。苦労かけます」


 結構な量ですね。

 

 持ち出しても構わないようなので、寝る前に目を通しましょう。


「いいえ。スライムの活用の検討は定期的にされていますからね。他にもないか資料を探しておきます。王都にも手紙を出しましたが、そちらはしばらくかかるかと」


「わかりました。生ゴミと厩舎から出るゴミは雑草と同じ場所にまとめられますか? 明日試みてみます。試みなので生ゴミは一部だけで良いです。厩舎のゴミは藁と飼葉ですよね? そちらはおそらく問題ないです。全てまとめて同じ場所へ」


 今日いきなりですと、指示された方たちも大変でしょう。


 それにいきなり全部だと、ダメだった場合に処理に困るでしょうし。何事も試しつつですね。


「かしこまりました」


 さて、今日は以前聞いていた<テイム>を知る方々から話を聞ける日でもあります。



「やはり<テイム>ではスライムをテイムできないのですね」


「ええ。試してみましたが無理でしたね」


 今は<テイム>を使える騎士の方から話を聞いています。


 スライムへの<テイム>も試みて貰っていたのですが、どうやら無理のようです。


「テイムできる上限数はどのようなものですか?」


「私は3体程度ですね。魔物の強さにもよりますが、使い物になる魔物という話であれば、3体というわけです」


「なるほど。それ以上になるとどうなりますか?」


「目眩がして満足に指示が通らなくなりますね。<テイム>をした魔物とは、何も言わなくても指示が出せるような、感覚が繋がるようなものがあるのですが、それが曖昧になります」


 わたくしが多くスライムを<テイム>した時と同じ症状ですね。


 指示が出せなくなるようなことは無いのですけれども。魔物の強さにもよるのでしょうか。それを試すことはできなそうですね。


 なんとなくですが、わたくしはスライム以外、<テイム>できない気がしますし。


 それぞれに相性が良い魔物のタイプがいて、どうしても<テイム>が無理な魔物もいるとの事なので、この感覚に間違いはないでしょう。


「上限は増えますか?」


「はい、訓練を続けると<テイム>できる数は増えていきます。まあ、<魔物使い>みたいな<テイム>を使う職能を受けた者は大抵、<テイム>した奴を連れ歩くんで、自然に連れて行ける数が増えていきますね」


「わかりました。ありがとうございます」



「俺は魔物の見てるものを見ることができますよ」


「そうなんですか?」


「ええ、鳥の魔物なんですがね。今はそこらへんで餌を探していますわ」


 冒険者の方からは面白い話を聞けました。


「どこにいるかも大体わかりますよ。ちとまって下さい」


 そう言いながら、彼は片方の目を手で隠します。


「ふむ、今はこの屋敷の屋根で休んでますね」


「それは、凄いですね。距離はどの程度ですか?」


「この街周囲までならってところですかね。それ以上離れると、繋がりが切れる感じがしますね。そうなったら戻ってくるように言い含めてます」


 偵察に適していますね。かなり強力では?


「範囲外から離れると<テイム>の繋がり自体が切れるのですか?」


「いや、そうではないですね。互いに声が届かなくなるというか。頭の中からいなくなるというか。範囲に戻ると繋がりが戻ります」


「頭の中からいなくなる、ですか?」


「私の勝手な解釈ですがね、<テイム>した奴と繋がる感覚ってのは、頭の中にそいつを入れるみたいなもんだと思っています。だから相手の感覚を見たり知ったりできる」


 なるほど、わたくしのスライムも文字通りわたくしの中に住んでいますからね。


 スライムの言っていた「全部スライムになる」というのもこういう事ですか。


 だと・・・。安全ですかね?


「<テイム>を使う方は皆がそのような感覚を持つのでしょうか」


「いや、強弱はありますね。俺は特別強いらしいです。魔物の方も頭が良くなるみたいですわ」


 ふむ、わたくしとスライムの関係に似ていますね。<テイム>と相性が良いとこうなるわけですね。


「おかげで食いっぱぐれませんね」


「確かに、鳥の視界を持てるのは強力ですね」


 わたくしはスライムの視界を……視界、あるんですかね? 後で試しましょう。


 やはり先達からお話を伺えるのはとても有意義ですね。

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