第四話 街
その後、サラと僕の傷は何故か完治しており意識のない僕はサラにおぶられ僕の家まで戻った。
僕の意識は家で目覚め、事の顛末をサラから聞いた。
僕が変身?した後のことは一切記憶になかった。
でも、サラも僕も無傷で家に帰ってこれたと言うことはその話は真実なのだろうと僕は信じた。
それから僕は考えた。
今まで森へ入った時にゴブリンやスライムと言った下位種の魔物は幾度となく狩っている。
僕がオークと戦うまでに稼いだ経験値はオークを一体倒すと同等の経験値を稼いでいるはず。
そしたら何が引き金でレベルアップしたのか、考えた結果。
大量の経験値を一気に得る。
オークの経験値はもちろん高い、しかし僕はオークを倒すまでにオーク一体分の経験値は余剰に稼いでいる。
よって一度に大量の経験値を得る事でレベルアップするのではないかと言う結果に至った。
実際あれからオークの様な上位種を倒していない為かレベルアップはしていない。
でも、下位種の魔物をそれこそオークを何百体も倒すぐらいの量を倒している。
「なんでなんだろうなぁ」
僕はそんな事を考え、ぼやきながら街を目指していた。
「お〜これが街か」
何十時間歩いただろうか、村を出て5日やっと街の姿が見えてきた。
最前線の街ドルトエン。
森の近い街は魔物が街へ入ってこないように高く厚い外壁が設けられている。
更にここは隣国との国境より一番近い街。
いざ戦争になったらここは最前線の戦場だ。
他の街よりも兵士が多く、外壁も立派だろう。
でも今は隣国とは仲が良く戦争をしていたのは何十年も前で今は和平を結んでいるとか、その為この街は交易や商売が盛んで色々な種族が集まっているらしい。特に人族の冒険者が多いらしい。
「少年、身分証を」
街の入り口の門では門兵が立っており検問している。
「すみません、つい5日前に成人を機に村を出た者で
「なら身分証を発行するから屯所へ行ってくれ」
「ありがとうございます」
僕は門兵さんが指差す屯所へ向かう。
「すみませーん、ここで身分証を発行しろと言われたのですが」
「はいはーい」
奥から女性の声が聞こえてくる。
奥から若い人族の女性が走ってくる。
「はい、待たせてすみませんね」
「いえいえ」
「身分証の発行だね。じゃ、軽く質問と犯罪歴がないかだけ確認するから」
「はい」
丁寧な対応で事を進めてゆく。
初めて見る人族、ちなみに門兵さんはエルフ族だった。
名前はヤエさん、年齢は19だそうだ。
「15歳なのね、なら成人したばっかりか」
「そうなんです」
「じゃあ冒険者とか?」
「ん〜まだ決まってないんですけど。どうせ学もないですし、とりあえずは冒険者を目指そうかと」
「そうなのね冒険者はあぶ…」
『そろそろ…血を』
体が熱い…
どこかで聞いたことのある声…
「ちょっと!ヨナくん聞いてる?ぼーっとして」
「すみません大丈夫です。ちょっと疲れてて」
「まぁとにかく冒険者は危険だからあまり無理はしない様に」
「はい、ありがとうございます」
「じゃ、これで終わり。身分証はこれね」
と言って、ヤエさんは白い何も書いていないカードを渡してくる。
「えっと、これって何も書いてない物なんですか?」
「ああ、そうそう使い方を説明するわ」
「お願いします」
「これに魔力を微量流す、するとヨナくんの個人情報が浮き上がる仕組みになってるの!すごいでしょ!?」
ヤエさんはさも、自分が発明したかのように得意げに話す。
「え、魔力を持っていない人はどうするんですか?」
「この世界に魔力を持っていない生物は無いわ草や牛、魔法が苦手な人やドワーフだって魔力は絶対に持っているわ」
「じゃあ魔法が使えない人がいるのは?」
「それは、魔法を体外へ具現化させる力が極端に弱いからね。かと言って一切具現出来ていない訳では無いわ。だからこのカードは微量の魔力で反応する様に出来ている。もし落としても悪用されないようにね」
「なるほど勉強になります」
「それじゃ、こっちから街の方へ通すから」
そう言ってヤエさんは奥へ歩いて行く。
僕はその後を追う。
「それでは、色々とありがとうございました!」
そう言って僕は頭を下げる。
「いいの、いいの、これが仕事だから。あ、それとそれを失くしたら再発行で銀貨一枚が工賃でかかるから、失くさないようにね」
「はい、分かりました。ありがとうございました!」
そう言って僕はヤエさんに手を振る。
「エルフ族のヨナくんか憶えておかないと。隠蔽のスキルを使ってた。悪人には見えないけど犯罪歴もなかったし…」
「えっとまずは冒険者登録と色々売ってお金にしないと」
アイテムボックスにある魔物の素材や動物の肉を売れば、当分はある程度生活は困らないだろう。
ヤエさんは冒険者ギルドで買い取ってくれるって言ってたし。
今から冒険者ギルドに行って、安い宿を探すか。
「おい、ガキ何言ってんだ?」
「いや、そこのお姉さんが嫌がってるんですからやめていた方が良いかと」
僕は今、Bランクの冒険者様に絡まれている。
と言うか僕から絡んだのか…
なんでこんな事になっているかと申しますと。
ギルドに入ると僕より少し年上の女性がBランク冒険者様に腕を掴まれているのを見て。
「やめろ!」
と咄嗟に口から出てしまったのである。
そしたら。
「見ねぇ顔だな、なんだクソエルフ。俺様に逆らうのか。あっ!?こっちはBランクの冒険者様だぞ!?」
「いえ、えーっとどうしよう」
「エルフの少年!私は大丈夫だ、こんな奴ら」
僕がどうしようか考えていると。
お姉さんが大丈夫だと、言ってきた…
なら大丈夫なのだろう。
「そうですか、では僕は」
「「「え?」」」
ギルド内に居たみんなが驚いた顔をしている。
声きれいに揃ったね。
と言うかなんでみんな驚いているの?
「はっはは!やっぱりBランク冒険者様が俺たちが怖いか!見逃してやる!ワハッハ」
「さぁ諦めて俺と冒険に出ようかお嬢さん!」
「何が冒険だ!ケダモノが!今すぐ離せ!!」
「こう言うのっていつもなんですか?」
僕は近くに居た受付嬢さんに聞く。
「い、いえ、こんな事は滅多に」
受付嬢さんはチラチラとBランクさんの様子を見る。
「そう言う時の対処は?」
「ギルド長が、出てきて揉め事を解決します」
へぇ〜ギルド長さんは強いのか。
「で、そのギルド長さんは?」
「今は王都の方に行ってまして。このギルド一の冒険者のヤンガス様を止める人が居なくて」
「へー、兵士さん呼んできたら?」
「い、今呼びに行っております」
「やめろ!」
さっきの絡まれていた女性が声を上げる。
どうやら、強制的にギルドから攫われそうになっているみたいだ。
「ねぇねぇ、おじさんやめておいた方が良いんじゃない?痛い目見るよ?」
僕は冒険者に近づき肩をちょんちょんと突く。
「おい、ガキ何言ってんだ?」
「いや、そこのお姉さんが嫌がってるんですからやめていた方が良いかと」
「おう、そうか寛大な俺様がさっき見逃してやったのに痛い目を見たいのはお前みたいだな!」
そう言って俺様さんは背から大剣を抜く。
「こんな子供にすぐ剣を抜くなんてやっぱり人族って野蛮なんですか?」
村の人達は人族が野蛮だと言っていたってサラが。
「なんだ?ビビってのか?ガハッハッハ」
「まぁこんなに体格差があるのにすぐに剣を抜くなんて、ビビってるのはどっちでしょうかね?」
「「クスクス」」
周りの冒険者達が笑っている。
「うるせぇ!!俺様をバカにするな!!殺してやる!」
そう言って俺様は大剣を僕の脳天から振り下ろす。
「キャー」
先ほどの受付嬢が悲鳴をあげる。
僕は身体強化魔法を使い、男の背後に回る。そして、男の首に手刀を入れる。
ドサッ
大男は気絶し床に伏している。
今の少年を動きを捉えれていた者はこの場には居ないだろう…