第三十話
「ドラコの反応が消えた」
「え、もう?」
ドラコの生存反応が消えた事を確認した。
「2人とも撤退だ…」
「承知」
「えーもう少し遊びたかったのに…」
忠実なラエルとは裏腹にカルナは不満がある様だ。
「ググォアアァア!!!」
森ノ征服者は雄叫びをあげる。
「豚さんまた遊ぼ〜」
楽天的なカルナが手を振りながら言う。
『逃すわけっ!』
森ノ征服者は彼女達を逃すまいと腕を振るうが体至る所の傷が痛み思うようには動かない。
「じゃね〜」
「貴様は我が軍に率いれたいが、それはまた次の機会にしよう」
彼女達はそう言い残し森の中へと消えていった…
『加減をされた。奴らの目的は…』
発足は森ノ征服者が優勢に見えたが彼女達は手加減をしていた…
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魔人
魔王が地獄を統治する以前の神話時代から存在していたといわれる生物。元来魔人は唯一無二の存在だった。
魔人ベルゼ
唯一無二の魔人。
彼は魔王と協力関係にあった。彼は強者だった、だが強者が故に種を繁栄しなかった。それが仇となり神々との戦で敗北した。
それから魔人ベルゼは【魔神ベルゼ】と讃えられ、現在では悪魔が何らかの原因で突然変異、進化した生物を魔人と呼ぶ。
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『魔人化……厄介な事になったな…』
すさまじい魔力……
『くるぞ!』
「お前らは弱いから死ぬ」
魔人化した上位悪魔は先程の拙い言葉遣いではなく流暢な言葉でそう言った。
魔人の姿が一瞬にして消える。
そしてその姿は目の前に…
「かはっ……」
魔人の拳は僕の腹部をとらえ、僕の口からは見た事のない夥しい量の血が吐き出される。
そして先程魔人が居た場所の地が砕け遅れて爆発音がやってくる。
僕の視界の中でどんどんと魔人は小さくなる。
何十メートル吹き飛ばされただろうか…僕は大樹へとめり込む。
『キツいな…』
意識が遠くなりそうだ。
僕はみんなの方を見る。
みんなは僕を心配そうに、あるいは泣いている人さえもいる。死んだと思われているのだろうか。
魔人は僕の方へ足を進める。
「ヨナ!!!動いて!!!」
サラが何かを叫んでいるが口がパクパクと動いている様にしか見えず音は聞こえてこない。
「うるさい糞虫が」
魔人はみんなの方へ目を向ける…
ダメだ…頼むそっちへは行かないでくれ…
魔人はみんなの方へ殺意を向ける。
「弱気者ハ強者ノ糧トナル…」
魔人の魔力が上がるのを感じる。
「散れ…[混沌ノ爆破]」
魔人の手から漆黒の球体が放たれる。
それは凄まじいスピードで村人達の方へ向かっていく。
『……』
クソッ!動け!僕の体!!
『ヨナ。願うばかりじゃ何も変わらんぞ…』
村人達の中で攻撃に反応できたのはヨル1人だった。
ヨルは村人達の前へ出て体を張る…
ヨナに笑顔を向けながら…
父さん!!?
動け!嫌だ!!嫌だ!!!!
『……』
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このカルネという村へ来てから17年という月日が流れた…ヨナが産まれ、直後ルナが国へ戻った。
ヨナが産まれ八回、月が替わったころ…
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さて今日はこのくらいで帰るか。
私は4頭目のイノシシをアイテムボックスに収納したところで家路につく。
歩いて数分、村へ近づくにつれ村全体が騒がしいことに気が付く…
「まさか!」
私はここで息子のことが頭によぎる。
耳長族の集落の中である言い伝えがあった…
古来より赤い瞳を持つ赤子は周囲に不幸や災い、天災を起こすと。
ヨナは私とルナの子…魔王の血をその身に流す者。
魔王の瞳は紅く、その幻想的な瞳の色は裔に必ず受け継がれる。
「ダランさん何故そいつを庇う!?」
「そうだ!村長そいつは悪魔だ!!」
「落ち着くのだ。まだそうと決まった訳では…」
「何言ってんだ!?それの目を見てみろ!!」
私が騒ぎ立てている声が聞こえる村の広場に向かった。この村の村長であるダランがヨナのことを守るように村人とヨナの間に立っている。
「ヨルさん!」
村人の一人が私の存在に気付いた。
「ヨルさん!助けてくれ悪魔がこの村に悪魔が!」
「誰かが隠してやがった!」
私は静かにヨナへと近づく…
「よ、ヨルよ…待つのじゃ!」
ダランがヨナを庇うように私の前へ立つ。
私はダランを避けヨナを優しく抱き上げる。
「お…ぉおとーあん」
抱き上げられるとヨナは私を笑顔で呼ぶ。
「ま、さか」
「ヨルさん?」
村人達は驚いた表情をする。
「ヨル。まさかその子は」
ここに居る者の気持ちを代弁するようにダランが私に問う。
私は少しの殺気を放ちながら答える。
「そうだこの子は私の子だ」
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「ヨル、その子はこの村で成長させてあげて」
「何故だ?この村には不快な伝承がある」
ルナは優しく微笑みかける。
「ありがとう。でもいいのよ」
私に抱きつき囁く。
「ルナがそう言うなら良いが」
「離れるのは寂しいけどほんの少しの間だから。あなたとこの子のために我慢する。ヨナのことを守ってあげて」
頬に唇が当たる感触がする。
「ああ」
「愛してるわヨル」
「愛している」
ルナの抱きしめる力が強くなる、そして自然に私の力も強くなる。
「約束は守ること!」
そう言って小指を立てるルナ。
その小指に私も小指を出し絡め合う。
「分かっている」




