第二十六話 悪魔兵器
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上級悪魔。
悪魔の中でも最上位の者。
「おかしい…」
本来上級悪魔が下級悪魔や中級悪魔を召喚する事はあるが上級悪魔が召喚される事など聞いたことが無い…
ヨルは目を凝らして悪魔の様子を伺う。
やはりおかしい。
悪魔の目の特徴である赤い目は黒く霞んでおり魔法陣の上から全く離れようとしない、まるで自我がなく命令なしでは動くことのできない操り人形のようだ。
ヨルはドラコを睨みつける。
「おや。私が何者なのかとお思いですか?」
その問いへヨルは反応を見せない。
「私の名はドラコ・コーリヤ。魔界で中級悪魔をやらせていただいています。お見知り置きを」
「悪魔!?」
「あくまだって!?」
「どおりでヨルさんに追い詰められても余裕だった訳だ」
「なぜだ?」
「なぜとは?」
「なぜ、中級悪魔である貴様が上級悪魔を召喚し使役する事ができる?」
ヨルは問う。
「そうですね。私は中級悪魔です、あなたが言う通り私では上級悪魔様を召喚する事は不可能です。成功してしまったとしても中級悪魔ごときが上級悪魔様を召喚するなど無礼極まりないことであって侮辱行為に当たります。当然即座に抹消されてしまうでしょう」
ではなぜ?
「それはこの悪魔が…」
ドラコが上級悪魔に近づき。
「研究し作り上げられた人工の上級悪魔だからです」
「なに…」
「ステータスは限りなく上級悪魔に近く下級悪魔や中級悪魔でも簡単に扱える。いわば悪魔兵器ですね」
そんな物。ルナからは聞いたことがない…
「貴様今、魔界の兵器と言ったが魔王はそれを使って地上を攻める気なのか」
「はっはっは!」
ドラコは突然笑い始めた。
「魔王様が中級悪魔ごときの考えをお聞きになると思っているのか?」
「では貴様は魔王の命を無視して地上を攻めていると言うことか?」
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「ルナ」
男らしくなった体躯に幼かった少年の面影を少し残している青年。
「なぁに?ヨル」
「ルナは魔王なのに地上を滅ぼさないのか?」
青年は素直に疑問に思ったことを聞く。
「ふふ。滅ぼすなんてそんな事する訳ないでしょ。こんなにも綺麗で美しい世界滅ぼそうなんて微塵も思わないわ。逆よ」
「逆?」
青年は立ち止まり首をかしげる。
少女は立ち止まった青年の手をぐいっと強引に引っ張る。
「逆にこの世界を滅ぼそうとする者が居たらそれが神であろうと同族であろうと私が全力で止めるわ!」
少女は美しい笑顔でそう言うのだった。
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「魔王様は私達が地上を征服した後に必ずおっしゃられる筈だ!大儀であったと!」
「なるほど安心した。少し話さないうちに心変わりしてしまったのかと思った」
ヨルはルナが考え、行動した訳だはないことを知って安心した。
「なにを訳の分からないことを言っているのですか?さぁやってしまいなさい!」
上級悪魔が動き出す。そのスピードはヨルでも反応が遅れるほどだった。
「クッ!」
なんとか上級悪魔の斬撃を受け流した。
なるほど本当にステータスは上級悪魔と変わらないようだな。頬に流れる血液をヨルは腕で拭う。
上級悪魔は休む暇を与えようとせず、すかさずヨルの懐へ入り鋭くとがった爪でヨルの腹を抉ろうとする。
が、それをヨナは避け上級悪魔の腕を斬り落とそうと手首の関節部分を狙う。
カキーンッ!
甲高い金属音が鳴り響く。
「なに!?」
ヨルは悪魔とて人型である以上関節部分は弱いと思ったが…
「硬質化だよ。はっはっは。私達はあらゆる悪魔達の特質を研究し集めた。それをこの悪魔兵器へと組み込んだんですよ!」
上級悪魔の関節部分は金属は変わりヨルの持っている剣をはね返した。
「くそ!」
ヨルは距離を取るが、それを上級悪魔は同速で追いかけてくる。
上級悪魔がヨルの懐へ。
ヨルは上級悪魔の爪を避ける…はずだった。
「ヨル!」
ダランが叫ぶ。
「なに!?カハッ!」
ヨルの口から血液が溢れる。ヨルは先程と同じよう上級悪魔の動きを見て、爪がかすりもしない位置へと避けていた。
「ま、さか」
「ご名答!これも悪魔の特質です。爪が伸びるんです!」
ヨルは攻撃を腹に受けたが内臓部分へは到達していなかった。しかし衝撃は内側へと伝わり損傷している状態だ。
その状況でヨルは攻撃を防ぐので手がいっぱい、攻撃は到底できず、このままでは押し切られてしまう。
「やはりハイエルフとて上級悪魔の相手は厳しいか」
ダランは強く自身の武器を握る。
「サラ。私はお前だけには生きていてほしい!だから…」
何かを言いかけた口を閉じようとしたダラン。
本当はこの場からすぐに一人で逃げてほしいと言いたい。
しかし孫の顔を見てその考えは無くなった…
孫だけではなかったその場にいる村人全員がヨルの戦う姿をまっすぐ見つめている。一瞬も目を離す者などいなかった…
「おじいさま!」
サラはダランの目を見て武器を握りしめる。
なにを考えているんだ私は…
ダランは村人一人一人と目を合わし、頷いた。
それに応じる様に村人全員が頷いた。
「「「「うおぉぉおおお!!!」」」」
村人達の雄叫びはヨルと悪魔の動きを止めた。
弓を扱える者は三等分に分かれ順番に矢を放ち絶え間なく矢が飛んでゆく。そして接近戦が得意な者はヨルを庇うように攻撃をしていく。魔法が使える者は攻撃をするのではなく攻撃をしている者達へ援護魔法をかける。
しかし上級悪魔は横からの攻撃を意に介さず執拗にヨルを攻撃する。
「クソ!このままではヨルが」
上級悪魔が膝をつく。
「よし!いまだ!」
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「ヨル!大丈夫か!?」
どうやらヨルは気を失いかけているようだ。
ダランがヨルを上級悪魔から引き離し回復魔法をかける。
上級悪魔は膝をつき抵抗がなくなった。
「このままやられてくれればいいのだが」
「くっ!」
「ヨル大丈夫か!?」
ヨルが体を起こそうとする。
「ダメだお主の体はもう限界だ」
「ち、がう悪魔から…悪魔からはな!れろ!」
ヨルがダランの服を掴み訴えかける。
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「このまま押し切れるぞ!」
「近接武器を持ってるやつは直接攻撃を叩き込め!」
「いける!いけるぞ!」
村人達は弱っていく悪魔兵器を見て士気を高め確実にダメージを多く入れれる接近戦に持ち込む。
「ヨナ…」
その一人にサラも居た。
「ふっふふ」
ドラコは怪しげに一人ほくそ笑んでいる。
「離れろ!!」
ダランが叫ぶ!
「もう遅いですよ。ふふ。全反射」
ドゴォオォオオンッッ!!




