第二十五話 上級悪魔
いつかは追っ手が来てしまうとは思っていたが、こんなにも早く…
ヨル達は帝国軍から逃れる為に入り組んだ森の中をわざと複雑に歩き、位置が分からないようにしていたはずだった。
しかし、ものの数分同じ場所へ留まっただけで見つかってしまった。
「村の皆様は絶対に傷つけないようにお願いします」
男はそう言う。
何故、帝国軍は私達を無傷で捕らえようとする…
私達を人質に?
いや、そんな事をしてどうする?
これは戦争だ、ただの一般の民を人質にする事など意味を成さない。
ヨルの頭の中に疑問が巡る。
「私の名はコーリヤ。ドラコ・コリーヤ」
すると、男は突然自分の名を名乗り出した。
帝国兵は私達を取り囲み剣を向け迫ってくる。
ヨル達は広場の中心に丸く小さくなって行く。
「敵の数は……50程度か」
敵の兵は50数名。
私達の戦力は武器を持たない者を除き20程度…その中でもまともに戦えるのは半数以下。
「…圧倒的戦力差」
ヨルはそう呟く。
「ヨルよどうする?」
「…ここで応戦するしかない」
ヨルはそう答える。
「分かったぜ!」
ヨルとダランの会話を聞いていたラングが弓に手を持ち協力の意思を見せる。
「俺もやる!」
「協力する!」
「このままやられるのは癪だからやるよ」
「ヨナくんにも謝らないといけないからね」
村人達は皆、武器を手に取り女、子供護る様に円になる。
「お前たち…」
ヨルは村人達の表情を見て、村人達の覚悟を受け止める。
「あー。涙ぐましいですな」
ドラコと名乗った男は嘲笑い見下す様に村人を見る。
武器を取った村人達に少し警戒しているのか帝国兵は自分の武器を強く握りしめる。
「お前たちは防衛に徹してくれ」
「そんな、俺達も戦うぜ」
「そう言ってくれるのは嬉しいが私一人で大丈夫だ」
「でも!」
ラングは引き下がろうとしない。
「やめておけお主じゃヨルの足手まといにしかならんよ」
ダランはラングの肩をたたきながら言う。
「すまない。ここにいるみんなを守ってくれ」
ヨルは中心にいるこの状況に怯える者へ視線を送り、そのままラングの顔を見る。
「分かったよ。あんたを信じるよ」
ラングはそう言ってヨルの胸にこぶしを当てる。
「ああ。任せてくれ」
「話は終わりました?」
ドラコはヨルたちに言葉を投げかける。
「ああ。ちょうど終わったさ」
「それは、それはよかった。では、兵士の皆さん拘束をお願いします。抵抗する者がいましたら少々荒々しくなっても仕方ないです」
…
……
………
「圧倒的戦力差ですね」
ドラコは両手を上げニヤニヤとしながら言う。
「なぜ笑っていられる」
ドラコにヨルは問う。兵は皆ヨルに敗れ無力化されドラコは喉に刃を当てられている。
「すみませんつい。この状況に、これから起こる事が面白くて、楽しみで」
「なんの事だ?何を言っている。貴様らの目的はなんだ。私達を無傷で捕らえる意味は」
ヨルはドラコは疑問をまくし立てる。
「それは…これから分かる話です……」
ゴゴゴォォオオオ!!
凄まじい地響きと共に地面が光り始める。
「これは…」
ヨルはとっさにドラコから離れる。
地面の光は何かを描くように広がって行く
「なんだあれは!?」
「なんなの!?」
村人は突然光始めた地面に戸惑う。
「あれは、召喚の魔法陣か…」
ダランは呟く。
「ああ。ただ、普通の召喚じゃない。あれは悪魔召喚だ」
ヨルはそう言う。
地面の光は魔法陣を描きはじめ。
そして始めの線と終わりの線が繋がった。
すると光の線は先程よりも光を増し目を開けていられなくなるほどだった。
「これはマズイな…」
目を開いたヨルの前には…
人型のシルエットにコウモリのような翼に頭部には山羊の角肌の色は黒く裂けるようにニヤけた口からはナイフのようにとがった歯が見える。
「悪魔…あの尾は…」
ヨルは悪魔の尾に注目した。
「3本か…」
「何か意味があるのか?」
何かを理解したヨルにダランは問う。
「ああ、あの悪魔は上級悪魔だ」




