第二十四話 縋る者達
森を進み数十分。
木々が拓けており広場のようになっている。
休息を取るなら適当な場所だ…がここで立ち止まるわけにはいかない。
「はぁ、ここまでくれば大丈夫だろう…」
「少し休憩しないか〜?」
「子供が疲れたって言ってるの」
村人の少数は先程、拘束されていたこともあり精神的、肉体的に疲弊が酷いようだ。
しかし。
「まだだこんな所で休息を取っていては帝国の軍へ追いつかれてしまう」
「ヨルさん言っちゃ悪いが軍の奴らがこんなに入り組んでいる森で俺たちを見つけれる訳ないだろ」
一人の男が言う。
「ラング。確かに見つかる可能性は低い」
ラング。
カルネ村で猟師をやっている者だ。
ラングの問いにヨルは肯定した。
「じゃあ休憩してもいいじゃないか?」
「そうしましょうよ…」
「だが、それは敵が少人数の場合。しかし敵は3万の軍だ!この小さな森で私達の捜索を行うのに300人程の兵がいればものの10分で見つかる!そうなれば私達は今度こそ終わりだ!」
ヨルは現実を見れない村人達へ一喝する。
「それでもお前らは!立ち止まるのか!?」
村人達の表情は暗くなる…
…
……
「ああ!くそっ!これも何もかもあんたの息子の呪いのせいだ!!」
ラングがヨルを指さし駄々をこねるように怒鳴る!
「そうよ!きっと呪いだわ!」
「そうだ、そうだ!」
ラングの言葉を口切りに少数の村人は文句を言い出した。
ヨルは黙って村人達を見る。
「ヨナはなにも関係ないじゃない!!」
サラはヨナをかばう。
「何が関係ないだ!アイツが居なくなってからこんな事が起き始めたじゃないか!!」
「そうだ!アイツの呪いだ!」
「そんな事!証拠も無いのに!!」
サラは必死にヨナをかばう。
「アイツがうまれ!グゥッ!」
ラングの声は遮られ胸ぐらを掴まれ地面に叩きつけられる…
「何すん…うっ!」
村長ダランに。
ダランの鬼の様な表情に恐怖でラングは固まってしまう。
「お主がそれ以上、物を言えば私はお主を…」
ダランは本気だった。
本気だったからこそ周りは止められなかった。
「お主は!お主は知っておるのか!?あの子のヨナの事を!!あの子が何をした!?あ!?何かに縋るのも良い加減にしろ!!現実を見るんだ!」
ダランの手は緩む。
すると、ヨルが話し始める。
「あの子は小さな頃から現実を見ていた。愚かな村の者達から迫害され、自分一人で生きる事を覚悟していた。4歳で自給自足の生活を始め、10歳の時には既に一人で生きていた。10歳の息子が私に向かって『もう、僕。一人でも寂しくないよ?10歳になったんだもん!父さんは村の人達を助けてあげて!』と言ってきた…」
村人達は顔を上げられない。
「私は悔しかった。貴様らの様な何かに縋り生きる事しかできない者が楽々のうのうと生きて、何故息子がこんなに苦労するのだろうと!」
「しかしそんな時にヨナにも友達ができた」
ヨルはサラを見る。
サラもヨルを見る。
その表情は悔しく、淋しそうだった。
「ありがとう。君のおかげであの子は明るく育ったよ…」
…
…
「あの子が村を出て行った後、あの子の家には置き手紙があった。その手紙の最後の文にはこう書いてあった…」
『僕の大切な故郷を、村の人達を守っていてください……必ず帰るから!』
「ヨナは5年前に言っていた事と同じ様な事を書いていたよ…俺への別れの挨拶も無しに…」
「……」
「……」
「……」
村の者は言葉を発せなかった。
「すまなかった!」
膝、手、頭を地につけたダランはそう言った。
「私達は取り返しのつかない事をしてしまった!本当にすまない!」
ダランは頭を強く地面へ押し付けた。
「申し訳ない!」
「ごめんなさい…」
「本当に悪かった」
それを見た村人たちは自分達が何をしたかと言うことを考えた。
ありもしない事実に縋った者、見て見ぬをふりをした者、自分の幼少の頃や自分に子供がいる者は自分達がいかに愚かだったかを知った…
皆がヨルへ頭を下げる。
「私に謝ってほしい訳ではない」
「分かっている!しかし私達は君達に頭を下げなければならない!」
「すまなかった!」
ダランの言葉と同時に皆が頭を下げた。
「………もう気にしていないさ」
そう言ってヨルは丸太に座り込んだ。
気にしてない訳は無いが少しは気が楽になった気がした。
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「では、改めて出発しようか」
数分の間休憩をし、また街へ向け出発するはずだった…
「こんにちは、エルフ村の皆さん」
突然、男が森から出てきた。
「何者だ」
ダランは男へ問う。
ヨルはダランを庇うように腕で制し前へ出る。
「何故我々がエルフの村から来たと知っている?」
ヨルは男を見定める様に見る。
「危険だ…」
「ほぉ、私の隠蔽魔法を見破るとは地上の生物も成長しましたね」
男は訳のわからないことを口にする。
「その魔力どこかで…」
ヨルは男を睨みつける。
ガサガサっ
ガサガサっ
ガサガサっ
突然、帝国の紋章を左胸につけた軍服の武装集団がヨル達を逃げ場なく包囲するように木々の隙間から現れる。
「その紋章は!帝国軍!」




