第二十三話 脱出
「コーリヤ卿。王国の村の制圧が完了したようだ」
「おお!流石は私の部下達仕事が早いですね。報告、感謝しますデルタ中将」
この戦でエーギルを落とせば、大将への昇格は確実…何としても成功させねば。
帝国軍、中将ウィンプ・デルタ。
彼は23歳という驚異的な若さで中将という階級まで上り詰めた帝国でも注目され他国にも噂になる程の人物である。
その実力は皇帝がデルタへ直接的にエーギル王国との戦争を任せる程。
「しかし、コーリヤ卿が何故戦場へ?」
ドラコ・コーリヤ男爵。
それが彼の名前、この戦の計画直後に男爵位を皇帝から叙爵された人物。
何を功績に叙爵されたかは知らないがやはり陞爵が目的で戦に出てきたのか?
しかし、彼には謎が多い。
子爵を始めとする彼よりも地位の高い者が彼と話す時、彼の方が地位が低いのにも関わらずどんな相手であろうと遜ってしまう。
あの皇帝でさえ…
何者なのか、彼の素性を調べ上げたが一切の情報は出てこなかった…
歳は五十を超えているだろう。
身分を隠しているという可能性が高いと見るべきか…皇族…?
「デルタ中将、デルタ中将?」
いや、それはないか。
「あ、はい。すみません」
「どうしたのです?そんなに考え込む顔をして?」
どうやら長い間考え込んでしまったようだ。
「あまり、緊張せずとも共和国の戦力は未だ準備段階、即座に出軍させても1万が良いところ。こちらの勝利は確実ですよ。ははは」
コーリヤ卿は私の肩を叩きながら軽口を叩く。
「そうですね」
そう言ってコーリヤ卿は後方へ歩いて行く。
「あ、それと私がこの戦に出た理由は…」
「面白そうだからですよ」
コーリヤはそう悪戯に笑い兵の中へ消えて行った。
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「何んなの!?この豚!!」
カルナは憎まれ口を叩く。
それもそのはず私でも悪態をつきたくなる。
「何度斬ってもすぐに元に戻るし!」
カルナが腕を切り落とす…が即座に腕が元通りに治癒する。
カキーンッ
金属音がする。
「胴体や首、急所は刃が立たない」
ラエルは胴体、急所を狙うが皮膚を硬化させ傷一つつけれない。
「二人とも」
私は二人に視線を送る。
「[爆炎]」
炎魔法の上位魔法。
小さく濃い紅の炎がオークへ素早く向かって行く。
ドゴーンッ!!
オークへ着弾すると消魂しい音を立て炎が燃え上がる。
「「「………」」」
炎の中を凝視する…
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「凄まじいな」
ダランはそんな言葉を自然に漏らす。
「どうやらあの女、相当な魔法使いだな」
「ハイエルフのヨルが魔法に関して褒めるとはな」
元来魔法が得意なエルフ族。
色々な種族の中で魔族の次に魔法技術が長けていると言って良いだろう。
その中でハイエルフの魔力量、魔法適正量は魔族に匹敵、もしくは超える潜在能力を有している。
…
……
…………
「みんな!!」
村の皆が聞き慣れた声その声に村の者全員が視線を送る。
「サラ!」
1番初めに反応したのはやはりダランだった。
「お爺様!無事で良かった!」
サラはダランに抱きつき無事に再会できた事を喜ぶ。
「サラ、アレは君が連れて来たのか?」
ヨルはサラとの再会を喜ぶ間も無く森ノ征服者に視線を送る。
「はい、そうです!そんな事より森ノ征服者様が時間を稼いでくれている間に逃げましょう!」
「やはり、アレは森ノ征服者だったのか…」
「皆、今のうちに逃げるぞ!」
ダランがそう言うと村の住人は安堵の表情を浮かべる。
次々とサラは拘束魔法を解除してゆく。
「サラよいつの間にそんな魔法を…」
ダランは自分の孫娘の成長へ驚いている様子だ。
それに対しサラは笑顔で答える。
「ヨナが教えてくれたの!」
村人達の顔は暗くなるが、ヨルの顔は反対に少し明るくなった。
「ふぅやっと終わった」
「ありがとうね!サラちゃん!」
サラは最後の一人の拘束を解き終わる。
「あれ?ヨルさんいつの間に?」
サラはヨルの拘束を解いた記憶はないがいつの間にか拘束魔法は消えており逃げるルートをダランと話している。
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一刻も早く逃げないとまずいな。
黒づくめの女達の話では帝国軍が到着するのはもうそろそろだ。
そうなると森ノ征服者と言えど三万の敵を相手するのは大変だろう。
サラが言うには森ノ征服者の目的は私達を逃す為の時間稼ぎ。
帝国軍との戦闘は望んでいないらしい、確かに帝国軍を蹴散らしたとなれば村を救ったとはいえエーギルからも危険視されるだろう。
「森を北に迂回し。街へ向かう!」




