第二十二話 勝機
「お主だけ逃げ出すことはできぬか?」
「できない」
ヨルは少ししかめた表情をする。
「すまない。聞いてみただけだ」
予想通りの反応に私は少し落胆する。
技術でいえばヨルがここで一人逃げることは容易だろう、しかしそのヨルの行動でここに捕らえられている村の住人は傷つけられ最悪殺されるだろう。
そんなことは彼にできないと分かっていても私は森に居る孫娘を保護し王国へ帝国が攻め込んできたことを伝えてほしいと思った。
「そんなに心配しなくていい」
「なぜだ?」
「王国はこのことを分かっている。その内に王国の兵が来るだろう」
グオァアーー!!
「な!?」
突然、殺気に満ちた地の底までもが震える咆哮が村中に響き渡る。
しかしその殺気は村の住人に向けられたものではなく……
「ねぇ、これやばくなーい?」
黒づくめの一人が間の抜けた声で言う。
どうやらこの殺気を向けられているのが自分達ということが分かっているみたいだ。
「なに!?」
「なんなんだ!?」
村の人間は状況が分からずに軽くパニック状態になる。
「俺達は帝国に殺されるか魔物に食われて死ぬんだ!!」
魔物の殺気が村に向いている事に気付いた狩人が声を上げる。
それが黒づくめの三人組に向けられたものとは知らずに。
「ぎゃーー!」
「魔物に喰われるなんて嫌だー!!」
「アイツの呪いだ!!」
アイツとはやはりヨナの事だろう。
「来るぞ」
ヨルは目を細め村の入り口付近を見つめる。
グオァアーー!!
「きゃーー!!」
「うわぁあー!」
「もうダメだー!」
村人達は先程より近くなった咆哮に混乱する。
そして咆哮をあげた主がその姿を現わす。
「お、オーク?」
ヨルの声には疑問が混じる。
それもそのはずオークの見た目とは全く違い何より…
「何だあの魔力は!?」
ダランが口にする。
そう、魔力の量が普通のオークとはかけ離れ過ぎておりとてもじゃないがこの生物をオークと同種にする事は出来ない。
「あれは森ノ征服者か?」
ヨルがつぶやく…
「なに!?」
「どうやら帝国に森を潰されると危惧して眠りから覚めたようだな」
ヨルは何かを察したかのような言葉遣いをする。
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「三人で同時に叩く。多少の被害は覚悟して」
私は自分たちに向けられたおびただしい殺気に臨戦態勢に入るように指示を出す。
「そんなのあの豚に[威圧]された時に承知している」
「つよそうだよね~あの豚さん!」
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「どうやら三人で挑むつもりのようだな」
「あの化け物に勝機があるのか?」
もちろん常識的に考えたら三人でどうにかなる相手ではない……が。
「分からない…」
ヨルそう言うしかなかった。
あまりにも異質な存在がいる。
ヨルは指揮を執っている女を見定めるように鋭く見つめる。




