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第ニ話 忌み子

 


 10年前。


「おじいさま。なぜあの子はあそこに住んでるの?」

「あの子とは誰だ?」

「赤い瞳の男の子!村の外にいる」


 サラは村の外を散歩している時に男の子が家の壁を板で補修しているところを見かけ、家に帰ってきて母に「あれは誰?」と聞くと「近づいちゃダメ!」と血相を変え怒鳴られたと言う。


「サラあれ程村の敷地を出てはいけないと言っただろう?」

「…ごめんなさい」


 サラはしゅんと顔を伏せる。


「でも、なんで同じエルフなのにそれも私と同い年ぐらいの子供があんなところに住んでるの?仲間はずれ?」

「それは…」


 ダランは言えなかった、四歳の孫に歳一つしか変わらないの子が悪魔憑き、忌み子と言われ、理不尽に迫害されている事を。


「あの子は一人で生活をしているんだ」

「お父さんとお母さんは?」

「父はこの村の猟師で母はもうすでに亡くなっているらしい」


 サラの顔はだんだんと暗くなっていく。


「なんでお父さんと一緒に住まないの?」

「猟師は大変なんだ」


 サラは考え込むような顔をする。


「そんなんだ、一人で寂しいね……じゃあ私がお友達になってあげる!」


 サラはいい事を思いついた様に顔を上げる。


 ダランは止めれなかった、孫と同じ年程の少年が家を自分で補修して一人で誰と接する事なく過ごす苦痛を寂しさを知っていたから…




 その日から少年と少女の物語が始まる。



「ねぇ、あなたここで暮らしてるの?」


 誰かが突然話しかけてきた。

 僕は作業している手を止め振り返った。

 僕と歳がそう変わらなそうな女の子、髪は白銀、耳は少し尖り僕と父さんと同じエルフだと分かった。


「ど、どうしたの?こんな所きちゃダメだよ?」


 父さん以外の他人と話すことが無かった僕は緊張していた。


「いいの、おじいさまが来ていいって言ったから。で、何してるの?」

「おじいさま?その人が誰かは知らないけど村の外に出たら危ないよ?」

「でも、あなたはここで暮らしてるんでしょ?」

「まぁ、うん」

「ならここも村の中じゃない、同じエルフ族が住んでいるんだから」


 変な子だ。


「そう?村の人達はここは村の外、危ない場所って避けて通るんだけど」

「そーなの?」

「うん」



 そこで会話はおわり、二人とも静かになる。

 一瞬の間をおき。また、サラが話し出す。


「今は何してるの?」

「え、えっと家の壁の修理?」

「手伝うわ、なにをすればいい?」

「いいよそんな悪いし、僕一人でできるから」

「いいの!私が手伝うって言ったら手伝うの!」

「は、はい」


「じゃあ板を取ってくれるかな」

「これね、はい」


 ヨナはサラの迫力に気押しされ、渋々手伝ってもらうことになった。

 一緒に作業をしながら歳が近いと言う共通点から会話が弾み色々な会話をしている。


「あなた、名前は?私はサラ」

「僕はヨナ。よろしくサラ」

「ヨナね、いい名前だわ」

「死んだ母さんが付けてくれたらしい」

「そーなの?お父さんは猟師だっけ?」


 なんで父さんのことを?


「父さんを知ってるの?」

「うん、昨日ダランおじいさまから聞いた」


 ダランさんって。

 たしか…村長さんじゃん。


「え!サラって村長の孫なの!?」

「一応ね」


 こんな自己紹介から始まり、村の状況やヨナが普段なにをしているのかとか色々な話をした。

 そして楽しい時間はすぐに過ぎていった。


「もう夕方だ、サラもそろそろ帰らないといけないんじゃない?」

「そうね、今日は帰るわ」

「ありがとう、おかげでほとんど終わったよ」

「また明日残り手伝いに来るわ」

「いいよ、いいよ、ありがとう。気持ちだけで嬉しいよ」

「いいのよ!私が楽しくてしたいんだから!じゃーねまた明日」


 そう言ってサラは走り背を向けた。


「また明日ね…ありがとう。サラ」



 それからサラは毎日ヨナの所へ行き、色々な事を2人でした。

 一緒に家でご飯を食べたり、森へ山菜採りに行ったり。

 そうやって一年程が経過したある日。



「ねぇねぇ、今日はどこ行くのサラ?」

「前に行くって言ったでしょ?」

「森の奥の綺麗な泉ってとこ?」


 たしか、少し前にサラがヨナを連れて行きたいと話をしていた。


「そうなの!少し前におじいさまと一緒に行った場所、すごく綺麗なんだから!」


 サラは興奮した様子で話す。


「でも森の奥は魔物が出るかもしれないから行ったらダメでしょ?」


 父さんからは森の奥には魔物が出るから近づくなと言いつけられていた。


「いいの、いいの少しだけだから。おじいさまと行った時もなにもなかったし」


 サラはヨナを強引にひっぱり森の奥へと進んで行く。

 森は奥へ進むにつれ木々が集まり薄暗くなりヨナの不安は大きくなってゆく。


「サラ引き返そうよ、危ないよ」

「もうちょっとだから」


 サラの言葉通り薄暗かった道の奥から光が差してきた、この先にひらけている場所がありそうだ。


「ほら、ここを抜けたら」


「綺麗でしょ?」

「……………」


 目の前に広がる光景に感激し、言葉が出てこない。


 水の透明度が高く、池の底に沈んでいる倒木が横たわるのがはっきりと見える。周りの木々が映り込む水面はエメラルドブルーの神秘的な色彩を呈している。


「きれい」

「感想はそれだけ?」

「いや、凄すぎてなにも考えられないだけ」


「うわっ!つめた!」


 サラがいきなり水をかけてきた。


「そうすごく気持ちよくて、ほらこうやって足をつけたらすごく気持ちいいの。ヨナも」

「うん」


 靴を脱ぎ足を水に浸ける。


「はぁ〜きもちいい」


 ここまで歩いてきた疲れが一気に吹き飛んだ。


「じゃあ、お昼食べましょ」

「そうだね、でも僕はお弁当持ってきてないよ?」

「今日は私が作ってきてあげた!」

「サラが僕に?」

「なによ、不満!?」


 不満なんてある訳ない…


「い、いえいえ、ありがとうございます。いただきます」

「はいどうぞ」


 そう言ってサラはサンドイッチや果物が入ったバスケットを[アイテムボックス]から出す。


 [アイテムボックス]


 アイテムを別空間へ収納できるスキル。

 ボックス内は時間の経過がなく生きている生物は収納できない。

 空間魔法の一種と考えられているが空間魔法を使えない者でも所有している事例がある為スキルに分類されている。

 使用者のスキルLv.や魔力の量によって収納できる量が変わる。




 バスケット中から野菜たっぷりのサンドイッチ取り一口。


「ん!」

「どう?」


 サラは自分の作った物サンドイッチをヨナがどう評価するのかを楽しみにしている。


「すごく美味しい!ありがとうサラ」

「そう?まぁ当たり前ね私が作ってあげたんだから」


 サラは満足そうに言う。


 ガサガサ

 森の中の茂みが音を立てて動き、僕達は警戒する。


「なんだ鹿か」


 茂みから出てきたのは鹿だった。

 鹿は池の水を飲み、池の周りに生えている草を食べ始めた。


「動物達もお昼ご飯の時間かな?」

「そうかもね」

「ん?」

「どおしたの?」

「いや、なんでもないよ」

「気になるじゃん、なに?」


「いや、気のせいだと思うけど、鹿が池の水や草を飲んだり食べたりした時に鹿か光ったように見えるんだ」

「ほんと〜?」


 しばらく僕達は鹿を観察した…すると水、草を口にした瞬間、微かに鹿の体が光っているのが分かった。


「光ってるね」

「光ったわ」


「……まさか!?」


 昔、父さんから聞いたことがある。

 森の奥に魔池というか池があると。

 その池の水は地下深くからから湧いて出てくる。水が地上に湧き上がる道中、地下地中に溜まっている魔力を取り込み不純物を魔力がろ過し湧き上がる。

 その為池の水は透き通るように綺麗なのだと言われている。


 魔池の水は回復魔法と同じ効能を持つ。

 魔池の周りに生えている薬草はどれも高位の薬草で乱獲を防ぐ為、薬草の見分けは代々村長が受け継ぐと言う。

 だからサラは村長とここに来たのか。


 そしてもう1つ父さんは言っていた。


 絶対に近づくな。


 魔池に集まる動物は何かしら外傷を受けたもの傷を癒す為そこに集まる。

 そしてその血の匂いにつられ寄ってくるのが肉食動物または魔物…


「サラ!帰るよ!」

「え、なんで?もう少しいても」

「ダメだここは危険だ!」

「なにがよ?」

「いいから、行くよ!」


 僕はサラの腕を掴み強引に帰路に向かおうとした。


 ガサガサザザザ

 目の前の木々が大きく揺れた…


「ひっ」


 サラが小さく悲鳴をあげる。


 茂みから僕らの前に現れたのは緑の巨体に大きな棍棒その顔はゴブリンに似ているがゴブリンではない。

 ゴブリンの上位種オーク。




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