第十六話 謁見
『何を緊張しとるんや』
今から王様と謁見だよ!?
それは緊張するでしょ!
そう、いま僕は謁見室の大きな扉の前でそわそわとしている。
扉の左右端には甲冑を着た騎士が立っている。
『言うたらお前も一応、王族やぞ?人族の王に会うぐらいで緊張してどうすんねん』
経験ない事なんだから緊張するよ…
それに僕に王族って感じは微塵もないし。
僕って魔王の息子なんだっけ?
『そうや』
父さんは見るからにエルフ。
と言うことは母さんが魔王?
でも母さんは僕を産んですぐ死んだんじゃ?
『それは嘘や。魔王は今現在も生きとる』
と言うことは…僕の母さんは生きてると…
『ああ、それと父親に関してはハイエルフやからな』
え!?
父さんってハイエルフだったの!?
まぁ、確かに普通のエルフじゃ出来ないことを平気で出来てたしな…
『いま5万歳ぐらいか?』
えええええ!?
嘘でしょ!!?
『ほんまや』
思ったけどリリムってなんで色々なことに詳しいの?
魔族の歴史とかまるで見てきた様に話すし…
『それは…まだ教えられん』
なんでさ。
『まだ、お前には早い』
なにその理由、納得できないな…
まぁ、でもリリムにも言いたくない事ぐらいあるか。
『すまんな』
いいよ、早いって事はいつかは聞かせてくれるんでしょ?
『その時が来たらな』
「ヨナ様謁見の準備が整いました。中へ」
「ま、まって、心の準備が…」
ヨナはそう言うが騎士は容赦なく扉を開いた。
ど、どうしたらいいんだっけ?
『王座の前まで中央を堂々と歩いて行って。膝をつく。後は流れだ』
僕は謁見室に足を進める。
王座の前にはすでにシルクさんが立って居た。
エーギルの色々な国政に携わる重要官職がヨナに視線を向ける。
「あれが、シルク嬢に勝った少年か」
「ほぉ、なるほど興味深いのぉ」
彼の堂々とした態度に興味を寄せる者。
一方で。
「ふん。平民がどんな小細工を使ったのやら」
「ひ弱なエルフ風情が、図に乗りやがって」
差別的な事を口にする者も。
そんな中、ヨナは王座の前で膝をつき頭を下げる。
「面をあげよ」
王の威厳のある声に僕とシルクさんは頭をあげる。
目の前には大きな王座に鎮座する、王の姿があった。
「今回の件、私の娘を救ってくれて感謝する。二人共大儀であった!」
「僕は当たり前のことをしただけです」
「ありがたき幸せ」
シルクさんとは違い、僕は思った事をそのまま言った…
「やはり、森の中の下民。マナーがなっていないな」
下級官職の男が僕に聞こえるようにぼやく。
「そこの者」
王様がその男を睨み言う。
「は!」
だらしなく立っていた男はビシッと姿勢を正し返事をする。
「それはヨナ殿へ対しての差別か?」
「い、いえ」
「この国は様々な種族が共存し成り立っている。その中でこの国を支える民を差別し見下すのか?」
「そ、そんな訳では」
男は額に大量の汗を流す。
「そうであろう?平民に支えられている私達が平民を見下すなどあってはならんことだな?」
「は、はい!もちろんです」
「分かれば良い」
「あ、ありがたき幸せ」
男は真っ青な表情から血の気が戻り、肩の力が抜ける。
「すまぬなヨナ殿、話の途中で」
「いえ、僕は王様の口から素晴らしい言葉を聞けて、嬉しいです」
そう言って僕は笑顔を向ける。
「そう言ってもらえて私も王として嬉しい」
「では、改め。謁見を再開する」
シルクさんは僕の一歩前出て膝をつき、頭を下げる
「今回の件、褒美としてシルク・ラルナへ女男爵の爵位を授ける」
「ありがたき幸せ。謹んでお受けいたします」
シルクさんはそう言い頭を上げ僕の隣へ一歩戻った。
「ヨナ殿一歩前へ」
王に言われ僕は一歩前に出てシルクさんと同じ様に膝をつき頭を下げる。
「私の娘達を救ってくれて本当に感謝する。ヨナ殿へはシルク・ラルナと同じく男爵を叙爵する!」
「ありがたき幸せ。謹んでお受けいたします」
僕もシルクさんの真似をして言う。
そして元の位置へ戻る。
「では、これで謁見を終了とする」
王座の1番近くに控えていた宰相が言う。




