第十二話 決勝戦一節
「ふぅ、なんとか勝てたなぁ」
『なんとかってお前余裕やったやないか』
いやいや、余裕ではないよ。
負ける気はしなかったけど。
『それよりタイムリミットはせいぜい、あと8時間ってところやぞ?』
タイムリミット?
『お前が死ぬまでのや!』
はいはい、知ってましたよ。
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しばらくして、準決勝のアナウンスが流れる。
「それでは、ただいまより準決勝。タメル・ロン対シルク・ラルナ団長の勝負です!」
「選手の入場です」
お、いよいよだ。
「東側!今年入団にして先輩方を差し置き堂々の大会入り!このスーパールーキーはどこまで成長するのか!!?タメル・ローーーン!!!」
入場通路から会場にロンさんが入ってくる。
青髪に端正な顔立ち、背は僕よりも小さく体はすごく華奢だ。
歳は同じぐらいだろう。
「ロン!がんばれよ〜!」
「ロン君!カッコいい!」
「ロン負けたら許さんからなぁ!!」
ロンさんは色々な人から声援をもらう、みんなが応援しているみたいだ。
人望が厚いのだろう。
「さぁ…待ちに待った我らの誇り。いや!エーギル共和国誇り!我らの若き総括、その名は他国の子どもまで知っている程!彼女の剣舞の美しさには誰も目が離せない!」
「王都騎士団!団長シルク・ラぁぁぁあルーーーナァァァア!!!!」
西側からシルクさんが入場してくる…
しかしその顔色はあまり良くなかった。
そしてなぜか僕の方を見ている。
僕はニコッと笑い返した。
すると、僕から視線を外し場内の歓声へ手を振る。
「それでは両者定位置へ」
「団長大丈夫ですか?」
シルクの顔色が優れないためロンは心配になり声をかける。
「あ、ああ大丈夫だ。ロン、互いに本気でぶつかろう」
「はい!よろしくお願いします!」
そう言って二人は握手をする。
「両者構えて………始め!」
開始のゴングが鳴る…
そして試合が終了する。
「勝者!シルク・ラルナ!!」
勝敗は一瞬だった。
両者のレベルが違いすぎた。
試合開始直後シルクはロンの首側面へ手刀を当て気絶させた。
その間のロンはシルクの姿を捉えることなく試合は終わった。
決勝戦。
僕はアナウンスが入るまで待合室で待つ。
コンコンコン
とノックの音が聞こえる。
「はーい」
僕は扉の方へ扉を開けに行く。
「クレア様にエミル様!?」
扉の向こうには双姫がいた。
「ヨナ様試合前に応援しにきました!」
「応援。」
「そ、そうですか。わざわざ僕の所なんかに」
二人は部屋の中に入ってくる。
「全ての試合凄まじいですわ!ヨナ様!そんなにお強いなんて予想外でした!」
「ヨナ。早すぎて見えない。」
二人は僕の事を褒めてくれる。
「そんなに褒められると照れます。ありがとうございます」
そして、しばらく話した後。
「あら、もうこんな時間。それでは私達は席へ戻ります。ヨナ様決勝戦がんばってください!」
「がんばって」
そう言って二人は部屋を出て行った。
お姫様ってなんか大変そうだなぁ。
「それでは、ただいまより決勝戦を行います」
「さぁ、本大会も遂に最後の試合となりました!」
「東側。準決勝では私達に素晴らしい戦いを見せ、圧倒的な力を見せつける謎の少年。彼は果たしてこの決勝でエーギル王国最強の騎士を倒せるのか!?…」
「はぁ…ふぅ……スッ!」
深呼吸をし、丹田に力を入れる。
『気をつけろよ…」
「ありがと」
「ヨナ!!がんばれ!」
「いい勝負を期待してるぞ!」
「ヨナもシルク団長もがんばれ!!」
「西側!エーギルの最強騎士。その強さは他国にまで知らしめられ、英雄と畏怖される程!…」
シルクさんが入場して来る。
シルクさんの顔色は悪く、僕の方を鋭く睨みつけている。
僕、何か失礼なことを…
いや、思い当たる節はない。
両者は中央まで足を進める。
「シルクさん、顔色が悪いみたいですけど…」
僕は心配になり声をかける。
「問題ない」
シルクさんの返答は短く冷たい対応だった。
「それより…」
シルクさんは冷たい声で重たく話す。
「君は何者だ?」
「は?」
何者って…
『何やこの女』
「では、両者定位置へ」
審判が言う。
シルクさんは試合開始の位置へ向かう。
「あのシルクさん」
シルクさんは無視して行った。
「何者って…なんなんだろう」
『さぁな』
「それではただ今より決勝戦を始める。両者構えて!」
シルクさんはこちらを睨み続けている…
『さっきの試合見たら分かる通り、あの女は強い。お前が本気でやって確実に勝てるとは思わん。アランとか言う奴とはレベルがちゃう、手抜いたら死ぬぞ。全力で行け」
リリムが僕を心配してくれるなんて珍しいね。
『あほか、いっつも心配したっとるやろ。そんなんどうでもええけど。それぐらい危険言うことや』
分かった、ありがと。
「…………始め!!」
開始のゴングが鳴る。
「最初から全力で行きます」
ヨナは地面を強く蹴り、一気にシルクとの距離を詰める。
「グハッ!」
何が起こったか分からない。
息ができない。
動き出し、距離を詰め、剣を振り上げる、この3つ動きの中1番隙ができる動きは剣を振り上げる時。
シルクはその小さく大きな隙を逃さず、ヨナの腹に剣の柄頭を刺した。
シルクさんの動きは僕には見えなかった、見えない。
『儂も見えんとなると…こいつのユニークスキルか』
世界には3種類のスキルがある。
まずはコモンスキル。
例えば体術や剣術といった、戦闘スキル。
他にも生活に便利な洗濯スキルや料理スキルなど、その数は数え切れない。
その中でもヨナが持っている、アイテムボックスや魔法耐性と言った発言する数が極端に少ないスキルをレアスキルと言う。
そして3つ目、ユニークスキル。
ユニークスキルとは世界でたった1つのスキル。
スキルは必ずしも強力である事。
その為ユニークスキルは持っている者が少なく、世界でも数えられる程しかいない。
『離れろ!』
リリムにそう言われて僕はシルクさんから距離を取ろうとする。
しかし、動きが遅くなっているこのチャンスをシルクさんが逃す訳はなく追撃を仕掛ける。
スピードの落ちた僕がシルクの剣撃を回避できるわけもなく、攻撃を受け続ける。
僕の呼吸が落ち着く頃には大方の体力は削られる。
形勢を逆転することは難しいだろう。
それでも何とかシルクさんの剣を流せるぐらいには回復した。
クソ!
このままじゃ負ける。
「ふぅ…」
シルクさんが深く呼吸を整える。
『アホが!ヨナ!避けろ!』
リリムの声が頭の中に大きく響く。
僕はシルクさんの目を見て、悟る。
シルクさんはハッキリとした殺意を僕に向けている。
シルクさんは…
「死ね」
僕の意識はそこまでだった。
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「はぁ、この身体も久々やな」
ヨナの穏やかそうな雰囲気とは打って変わり、その雰囲気は冷たく、鋭い瞳は紅黒い…
「やはり、出てきたか…」
「…悪魔」




