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第十話 トーナメント

「確かにロードウルフの角10本。これでクエスト完了です」


 カウンターに出したロードウルフの角の数を確認した受付嬢はギルドカードに何やら魔力を込める。


「あの」

「はいはい、何でしょうか」

「少し多めに狩っちゃったんですけど、このカウンターで追加の買取ってお願いできますか?」

「大丈夫ですよ」


 僕は追加で角を出す。

 受付嬢さんは僕がアイテムボックスから角を掴み出す毎に顔を引きつらせていく。


 そんな、鬼を見るような顔しなくても。


「え、えーと追加で数を確認しますので少々椅子にかけてお待ちください」


 受付嬢さんは箱に入った角を重たそうにして奥に持って行き他の職員と共に数え始めた。

 僕は近くの椅子に腰を掛けて待つ。



 しばらくして受付嬢さんに呼ばれる。


「えーと全部で158本になります。こちらが追加討伐の報酬金です」


 そう言って窓口にお金を重ねて置く。

 この間は袋に入ってたけど…

 銀貨23枚と銅貨8枚だった。

 金額が少なかったらそのままなのかな?


「今回のクエストでヨナさんの冒険者ランクはEとなります。おめでとうございます」

「え、そんなに簡単に上がる者なんですか?」

「いえいえ、こんなこと初めてですよ。でもEランクの討伐対象をこれだけ狩ってきたのですからEランクに昇格しない方がおかしいです」


 それもそうですね。


 僕はギルドカードに少し魔力を込める。

 おおー、ちゃんとカードが黄色だ。


「じゃあ宿屋に帰りますか…ってなんか忘れているような」


『血を吸え』


 うるさいな…ってそういえばシルクさんどこ行ったんだろ?


 まぁ、とりあえず宿屋に帰るかそのうち帰ってくると思うし。



 ___________________



 その後、宿に帰るとシルクさんは先に帰っていたみたいだった。


「いやぁ、護衛部隊もしっかりしてくれないと困るよ……」


 僕は先程から護衛隊の愚痴を聞かされている。


「なぜ騎士団で護衛しないんですか?」

「ああ。それは二つの組織の始まりに関係してるな。騎士団は国が作った組織で、護衛隊は王族が作った組織なんだ」

「なるほど……護衛隊の戦力は騎士団よりも強力なんですか?」

「正直な所は分からないな。個人で考えるなら私が総合して一番だろう。しかし、護衛部隊はあくまでも護衛を専門とする部隊。騎士団が護衛するよりは適当だと思う」


 なるほど。

 護衛をする為だけに作られたから護衛に関しては一番か。


「ヨナ君、そんな事より明日はどこへいく予定だ?」

「明日は午前にクエストをこなして、午後はまったりしようかと」

「そうか、ではまた同行させてもらうよ」

「はぁ……わかりました」


 その後、二人で夕食をとり部屋に戻り。

 交代で風呂に入った。

 『ヨナ君!!今日こそは一緒に寝るぞ!!』とシルクさんは意気込んでいたが。

 僕はまたソファーで寝るのだった。


『血!!血!!血!!』


 なんて歌のタイトルにありそうな声を無視して僕は眠りについた。



 次の日、僕とシルクさんはギルドに行って。

 Fランクの薬草採取クエストを完遂させて。

 その帰りに出会ったご夫人の頼みで飼い猫探しを手伝った。


 終わる頃には少し陽が傾いていた。


 そして、明日の合同訓練の打ち合わせがあるため。シルクさんは騎士団で借りている宿に泊まる事になると寂しそうな顔で冗談を言っていた。



 シルクさんが居なくなると分かったリリムはすごく怒っていた。


『どうするんや!?ほんまに死ぬで!?』


 だって……

 あんな良い人の寝首を掻くような真似……


『そんな大ごとちゃうやろ!?殺すわけでも犯すわけでも無いんやで!?それも傷も治るって言うてんねん!!』


『明日絶対吸血せーよ!?ほんまに死ぬからな!?』


 ああ、いい人生だった……



 ■■■



 今日は入団の返答する日。

 正直答えはもう出てるんだけど。


 ついでに僕が吸血しなかったら死ぬ日。

『ついでとちゃうわアホ!!』



 とりあえず朝シルクさんに言われていた闘技場に向かう。

 でも何で闘技場なんだ?


「おーいヨナ君こっちだ!!」



 訓練所の前には騎士団と思われる甲冑を着た人達が整列していた。

 そんな中、大声で呼ばれたので少し恥ずかしかったが、シルクさんが居る方に向かう。


「よく来てくれたな!!嬉しいぞ!!」



「おい、あれがシルク団長が直接勧誘中の奴か?」

「そうだろ、でも何であんな子供に」

「どうせシルク団長の気まぐれだろ?」


 シルクさんの隣には椅子に座ったクレア様とエミル様が居た。


「ヨナ様!!昨日ぶりですわね、お元気でしたか?」

「え、ええ…元気でした。クレア様とエミル様もお元気そうで良かったです」

「それは、良かった。今日は楽しみにしてる。」

「今日はがんばってください!!私も楽しみにしています!!」


 『がんばってください』どう言うことだ?

 エミル様とクレア様は何を楽しみにしてるんだ?


「おいおい、仮面の双姫がアイツに笑いかけてるぞ?」

「マジかよ!!初めて真顔以外の表情見たわ」


 仮面の双姫?


「では、これよりエーギル王国騎士団による合同訓練を始める。まぁ、訓練と言ってもトーナメント戦をするだけだがな!!」


「それでは、ここにエーギル王国騎士最強決定戦を行う!!」




 そして…僕は今……騎士団のトーナメント戦の第一回戦に出ている…………


「シルク団長にどう気に入られたか知らないけど、僕達騎士団が子どもに負ける事は許されないからね。悪く思わないでね」


 えーと、何で、どうしたらこうなるんだ?



 時は少し遡り。


 先程シルクさんが壇上に上がり開会式が行われた。

 開会式は慣れた様子で行われていった。

 でも、開会式の直前シルクさんが最後の挨拶で僕を呼ぶから一緒に壇上に上がってくれと言っていた。


 そして僕の名前が呼ばれ壇上に。



「えー。では、最後の挨拶として。今年は私と王女お二人からの推薦として、ここに居るヨナ君をトーナメントに出場させる!!」


 はっ!?


「え、そんなの聞いてないですよ!?」


 僕はシルクさんに耳打ちする。


「尚、今年の大会はヨナ君に勝てば王都第一騎士団長である私が頼みを一つ。何でも聞いてやろう」


「何でも!?」

「おい、シルク団長が何でもだってよ!?」

「俺、絶対アイツに勝つ!!」



 という事がありまして……




「こんなチャンス二度とない!!僕は君に勝ってシルク団長にデートを!!」



 まぁ、僕の実力を図れるせっかくの機会だし……

 全力で行こう!!


『切り替え、ええな……お前』



「よろしくお願いします」

「それでは勝負を始める。相手が気絶もしくは降伏するまで勝負は続く」


「それでは定位置につけ」


 僕は中央から五メートル離れた白線につま先を置く。


「両者構え!!…………はじめっ!!」


 カーンッ!!


 開始のゴングが鳴る。



 開始。騎士さんはとりあえずこちらの様子を伺うみたいだ。

 試合前の言動から突っ込んでくると思ってたのにな……


 両者がしばらく見合う。


 先にしびれを切らせたのは騎士だった。

 騎士は剣を下段から構え距離を詰めて行く。

 僕の脳天を狙う。


『動きが大きすぎて隙が多くなる。ほんまにこいつ騎士様なんか?質が低すぎやで』


 うーん。

 そうだね、動きも遅いし。


 僕は騎士さんのがら空きの脇腹めがけて蹴りを入れる。

 もちろん、隙だらけの騎士は回避できるはずもなく、ヨナの蹴りをもろに受ける。


「ぐはっ!?」


 騎士は五メートル程吹き飛ばされ……

 その先でぐったりとして起き上がってこない……


「そこまで!!勝者ヨナ!!」


 審判の判定が下る。


「えっ!?もう終わり!?」

『みたいやな……』



 闘技場の観客席にいるトーナメント戦に参加しない騎士達は騒ぐのをやめる。


「お、おい……見えたか?あれ」

「な、なんだよ…あのガキ。めちゃくちゃつえーじゃねぇか」


 トーナメント戦には最低でも騎士団に入団してから3年間の修練を積んだ者が参加する。

 その事実を知る騎士達は騎士を一撃で倒したヨナは次の試合から警戒される事となる。


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