第九話
「とりあえず......帰れば?」
とりあえず、元の服である学生服を着たカーラがテーブルの席に座ってきたので文之はカーラの向け、言い放つ。
「ソンナ!?」
「えぇ。じゃあ、他になんか用事あるのか?」
数秒間の沈黙。
「......あるデス!」
「いや、無かっただろ。すごい考えてたぞ、おい」
「ソウ!用事とは............オーダーメイド、デース!!」
「おま、それ今さっき考えたろ」
「ワンピ、水色のワンピ。デース!」
文之は立ち上がり、玄関へと繋ぐ廊下を指を指した。
「そうか、そうか。今材料も資金も無くて当分先になると思うけど、きっといつか、多分いつか妥協して作るから、帰ってくれ......な!」
「ツマリ?......資金が無いデスネ!」
「いや、帰れよ。」
「そこでっ!ネットデス!」
そう、言ってカーラはスマホの画面を文之に見せた。
「ネット......」
「ソーデス。最近はネットでオークションができマース!」
「なん......だと?」
「おお。マイ、グランドファーザーより酷いデス」
「え......?」
するとカーラがスマホを自分側に戻し、ポチポチと操作して、目的の画面になったのか、また文之の方へと見せる。
「まずはアカウント作成デス......が、それはこっちがやりましたデス!」
「お、おお。」
カーラの見せた画面には右上にユーザー名とIDが書かれている。『NINJA』『ID:4828-2951』と明らかに忍者である事を公表されてるが、スマホ初心者である文之はそれに目が入らず、ついつい、オークションに出ている品の例などを見ていた。
「でも何を売るんだ。」
「何を言ってるデス?服デスヨ?」
「なるほど。じゃあ売る服は......」
「あ、これは持ち帰りますデス」
「!?」
と大体の話は進んでいき、四着をオークションに掛けることになった。
「さあ、帰れ帰れ」
「はいデース......」
文之は時間のおかげか直ぐに帰ってくれたカーラを見送り、新しくコーヒーを注ぐ。
「ふぅ......はぁ......」
それを啜り、文之は疲れたのだろうか。大きくため息を吐く。
「って、あれ?ずっと、アイツを頼らざるおえない状況になってね?」
いつもの静かな部屋となり、ポツリとそう呟く。
「いや、深く考えるのやめよう......まずは調査官対策に巻物数本作っとくか......」
文之は巻物数本、筆と墨汁を取り出し、床へと|胡座『あぐら』を組んで作業を移るのだった。
___________
「ふぁあ......」
文之は結構、夜更かししたようで眠そうに教室で欠伸を漏らす。
「(さて今日は調査官に注意しつつ、片っぱしに調べるぞ)」
とホームルーム中に考えていると......
突然のチャイム音がなり、放送が入る。
『 四之宮 文之 君。急いで生徒指導室に来てください。』
「え?は?(不安しかねぇ......)」
「四之宮。さっさと行け。」
「ああ、はい。」
文之は先生に急かされるまま、席から立ち上がって生徒指導室に赴く。
「......っ」
学校の端の生徒指導室の前廊下は静かな様子。文之はドアの前に立ち、唾を飲んだ。
コンコンッコンコンッとノック音が廊下に響いたのち、ドアから声が聞こえてくる。
「どうぞ」
それを合図に引き扉を引く。文之の眼に映った者は理事長、スーツをぴっちりと着た女性、それと十五、六歳の女の子である。
「2年3組の四之宮です。」
文之はそうやる気が無さそうに言う。
「とりあえず座れ」
高圧的な態度でそう言ったのは、スーツをぴっちりと着た女性。
正方形の机で椅子は四つ。奥側左が女性、右が女の子。手前右が理事長が座られているため、必然的に理事長の横の手前の左に座れと言ったのだろう。
「......」
文之は大人しく従い、席へと座った。
「私は 富士原 実音という者だ。それとこっちは、 牛之濱 南。今回の事件の捜査に来た。」
「...うん」
女性が挨拶をし、それに女の子がうなずく。
「......」
「......」
それからしばらく両者の沈黙が続いた。
それを解消したのは女の子、 牛之濱 南。
牛之濱 南が冨士原に耳打ちをした後、冨士原には言った。
「理事長。席を外してくれるか?」
「はい」
理事長が席を外し、生徒指導室から出ていく。それからようやく話が始まる。
「君が、例の件で関わっている事を知っている。」
そう、 冨士原は文之に向けて言う。
「え?いや?人違いじゃないっすか?というか何を根拠に......(どうだ。この一般人ですよ感。さあどうでる......)」
「......僕の『過去視』で全て見えてます。」
「......(そうだった。異能力があれば、人知を超えたことだって出来る。......でもワンチャン、別の異能力、例えばだけど『他心通』でこっちの思想を読み取られている可能性も無い訳では無い。)」
牛之濱 南も文之を追撃する。
文之の無言を肯定と受け取ったのか冨士原は続けてこう言う。
「この件は黙っておくから、私たちの仲間にならないか?」
「結構です。」
文之は脅しと言われてもおかしくない発言をキッパリと断る。